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再会へのパスポート

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 ということであり、それを考えると、最初はそうでもなかった、つかさという女の子が、いとおしく見えてくるのだった。
 その時の自分に、
「独占欲」
 というものがあったのかどうか、正直分からないのだった。
 だが、今までの恋愛経験から、
「独占欲」
 というものが存在し、その思いが、
「ついたり離れたりする」
 という感覚に、大きな影響を与えているということを分かっていた。
 やはり気になるのは、彼女の中にある、
「精神疾患」
 であった。
 しっかりと、寄り添っていきたいという気持ちがあるのは間違いないのだが、それ以上に、
「自分には、精神疾患の人の相手をしたことがないので、どう寄り添っていけばいいのか分からない」
 という気持ちがあることだった。
 それは当たり前のことで、本人にしか分からないことがあるのは、誰であっても同じだが、
「寄り添ってくれている人が、自分の気持ちを分かってくれるのかどうか分からない」
 ということであれば、どうすればいいのだろうか?」
 いや、晃弘には、それ以上に気を病んでいるものがあった。
 それが、前述の、
「独占欲」
 であり、特に相手から、
「お慕いしております」
 であったり、
「大好きだ」
 などと言われて、自分の気持ちが盛り上がってしまった時など、
「どうしていいのか分からない」
 という気持ちになるというものだ。
 確かに、
「相手に精神疾患がある」
 と言われると、自分がなったことがなかったら、
「相手にはかなわない」
 という思いから、ほとんどの人は、
「君子危うきに近寄らず」
 と考えることだろう。
 しかし、
「放ってはおけない」
 という、晃弘のような人間には、結構寄ってくるというもので、それを考えると、
「同じシチュエーションになっても、また同じことをするかも知れない」
 と思うのだ。
 さらにもう一つあるのは、
「晃弘という男は、嫉妬心が強い」
 ということであった。
「独占欲」
 であったり、
「嫉妬心」
 が強いということであったりすれば、どういうことになるのかということも目に見えてきそうな気がする。
 精神疾患に対応するように、なるべく怒らせることがないようにするのは、何とか自分を自制することでできると思うのだが、相手が、誰かの話を聴いたり、先に進もうとして、誰かを頼ったりするのを見るのは、耐えられるものではないということである、
 それだけ嫉妬心が強いということで、しかも、他の人に頼っているということは、
「何も俺じゃなくてもいいんじゃないか?」
 と思うことで、実際に耐えられなくなるのではないか?
 と考えることだった。
 彼女が元々、自分に惹かれたのは、
「同じ趣味を持っている」
 ということが彼女には見えたからであった。
 晃弘は、あまり自分から趣味のことを人に話したりする方ではなく、年齢ということからも、
「プロになるのは、諦める」
 と思っていたのだ。
 晃弘の趣味は、学生時代から変わっておらず、小説を書くことだった。
 だから、つかさには、晃弘が、
「趣味で小説を書いている」
 というのが分かったのだろう。
 つまり、趣味で書いている小説であるのだったが、晃弘の場合は、
「俺は、もうこの年だから、別にプロになりたいという感じはないのだ」
 ということであった。
 しかし、つかさは違っているようだった。
 まだまだ若いということもあって、
「これから、自分の作品を書いて、そして、ブランディングをすることで、プロとしてやっていく」
 という目標があった。
 それはそれでいいのだが、晃弘には複雑な気持ちだったのだ。
 晃弘が一番ネックだったことに、
「自分が、彼女の病気を分からないのではないか?」
 ということであった。
 確かに、いろいろネットで検索して、いろいろ見たりしたが、言葉が難しくて、何がいいたいのかが分からない。
 一生懸命に勉強しようという意思はあるのだが、それが空回りすることが、本人としては、苛立ちに繋がるのだった。
 しかし、そうは言っても、彼女と付き合っていく以上、
「こちらが腹を立ててはダメなんだ」
 という気持ちから、なるべく、
「相手が怒らないように考えよう」
 と思っているのだった。
 そして、彼女の言っていることで、気になることがあっても、
「決して逆らわない」
 ということに終始するしかなかったのだ。
 大鬱に入った時などは、
「前の日と、今日とで、まったく違うことを言っている」
 ということもあったり、下手をすれば、
「同じ日でも、辻褄の合わない話をしている」
 ということもあったりする。
 だから捉えどころがないので、こちらも、戸惑うしかないのだ。
 一つビックリしたのは、
「私は、お前って言われるのが嫌なの」
 という。
 最初は、
「病気だからかな?」
 と感じたが、どうもそうではないような気がする」
 というのは、
「さげすまれているように聞こえるから」
 ということで、これは彼女の疾患によるものではなく、単に、
「人から下に見られることを嫌っているということであり、確かに元々の原因は、病気にあるのかも知れないが、そういうことではなく、どちらかというと、プライドが許さないのではないか?」
 ということだと思えてならなかった。
 その気持ちも分からなくもないが、それを精神疾患と同じだと思って見ていると、痛い目に遭いそうな気がする。
 言動や性格を、疾患と切り離して考えなければいけないところは、しっかり見て行かないといけないのだと思うのだった。
 そういう意味で、
「耐えなければいけないところは耐えて、しっかり見なければいけないところは見ないといけないので、その切り分けが難しい」
 ということであった。
 さらに、もう一つの懸念であったが、実はこっちの方が難しいといえるのではないだろうか?
 というのは、こっちの問題は、つかさ側の問題ではなく、
「晃弘本人の問題」
 ということなので、
「自分のことであれば、これほどややこしいものはない」
 ということになるだろう。
 ということは、どういうことが言えるのかというと、
「自分の生活を、相手に合わせなければいけない」
 ということであり、これは結構厄介なことであった。
 相手は、こちらが合わせてやっていることを分からない。下手をすれば、
「合わせてもらうのが、当然」
 とでも思っているのではないだろうか?
 晃弘は、つかさと同棲まではしていなかった。
 彼女が一人暮らしであるということは知っていたが、そのほとんどは、
「つかさの言っていることを、すべて信用して」
 ということだったのだ。
 晃弘は以前、マインドコントロールを受けたこともあったので、その時の気持ちも分かってのことか、
「なるべく疑ってはいけない」
 と思うようにもなっていた。
「全然反省していないではないか」
 と言われるかも知れないが、どうしても、そっちの道に入り込むのは、
「また同じことを繰り返す」
 という心境を物語っているのかも知れない。
 晃弘にとって、つかさと一緒にいる時は、
「俺が何とかしてやる」
 という気概を持って接していた。
作品名:再会へのパスポート 作家名:森本晃次