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再会へのパスポート

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 ということが、次第にのしかかってくるのが、課長以上で、会社でいうところの、いわゆる、
「管理職」
 というところであろうか?
 たとえが悪いかも知れないが、相撲などの番付でいえば、
「三役以上」
 というところになるのかも知れない。
 そこから、部長以上が、
「大関クラス」
 であり、取締役ともなると、
「横綱クラス」
 と言ってもいいかも知れない。
 ただ、番付という意味での発想なので、それがどのように影響してくるかということは、それぞれの立場からしか分からないところなので、下手をすれば、
「交わることのない平行線」
 を描いていくだけのことになるのであろう。
 そんなことを考えてみると、
「俺にとって、出世って何なのだろう?」
 と思える、
「慣れ」
 というものだけで、役職をこなしていけるほどではないだろう?
 もちろん、相撲界だって、弱肉強食の世界。
 ケガもあれば、スランプもある。
 さらには、
「運」
 というものも影響してくることだろう。
 それを思うと、
「いかに頑張ればいいのか?」
 ということになるに違いない。
 さて、そんなことを思い出していると、目の前のつかさが、
「ストーカーに怯えている」
 と聞くと、自分も、まだ今のように、
「ストーカー」
 なる言葉が流行ってくる前の状況を知らなかったことを思えば、
「結構、それに近いことをしていたかも知れないな」
 と思った。
 相手が、急に連絡を取ってくれなくなると、不安になって、彼女の大学や働いているところの影に隠れて、出てくるのを待ち伏せしていたものだった。
 今では一発でアウトなのだろうが、その頃は、まだストーカーなる言葉が、世間一般になっていなかったことだっただけに、
「果たして、どう考えればいいのか?」
 ということだったのだ。
 そういう意味で、相手の女の子は、当然、
「気持ち悪い」
「怖い」
 と、今の女の子のようなことを感じていたのだろうが、男の方とすれば、
「相手が連絡を取ってくれないのだから、どうやってでも、会って話をするしかない」
 と思うことのどこが悪いというのだった。
 だから、
「話ができるまで、いつまでも待つ」
 と思うのだし、相手が、
「そんなに私のことを思ってくれているんだわ」
 と感じてくれれば、このような行動も報われるのだろうと勝手な思い込みをしているに違いなかった。
 それを思うと、
「男と女の感じ方はまちまちだった」
 ということになるのだろうが、それ以上に、
「今から思えば、明らかなストーキングをしていた自分が、怖く感じてしまう」
 というのが、怖かったのだ。
 だが、それを思うと、つかさが、
「私、ストーカーされているみたいなの」
 という言葉に、いかに反応していいのか分からない。
 昔の自分を棚に上げて、
「そうだ。ストーカーというのは、犯罪なんだ」
 と言ってもいいのだろうか?
 そんな風に考えてしまうと、何も言えなくなりそうで、怖かったのだ。
 だが、
「何とか話ができるようになった」
 と言ってもいいのだが、彼女の話を聴いていると、
「前に付き合っていた彼氏」
 だということなので、
「自分に似ているけど、モノが違う」
 と思うのだった。
 自分の場合は、今から思うと、
「彼氏と呼ばれるところまでは行っていなかった」
 と思うのだった。
 だから、相手は、
「自然消滅」
 を狙ったかのように、
「フェイドアウト」
 を考えたのだろう。
 もし、
「元カレ」
 という状態であれば、フェイドアウトというわけにはいかない。
「相手を納得させる」
 ということが重要だということになるのだろう。
 それを考えると、
「俺とは違う」
 ということになる。
 元カレということは、付き合っていたという意識が彼女にあるわけで、当然、キチンと別れたという気持ちがあるにも関わらず、追いかけられるから怖いのだろう。
 そう思って、
「その元彼とは、ちゃんと別れたんだよね?」
 と聞くと、
「ええ、そうです。話し合って別れました」
 というではないか。
「それなのに、しつこく付きまとってくると?」
 と聞くと、
「ええ、そういうことになります。私怖くて怖くて」
 と言いながら、二サイズくらい小さくなったように見える彼女の震えているその姿が、少し気の毒に見えるくらいだった。
「大丈夫なのだろうか?」
 と、まるで、雨に濡れ放題で、震えている子猫のように見えて、その目がうつろに見えることから、
「俺が何とかしてやりたいな」
 と、晃弘は感じるのだった。
 そして、実際に、
「何とかしてやろう」
 という言葉が出かかったのも事実だった。
 それでも、声にできなかったのは、勇気がなかったからで、勇気を出すには、何か、背中を押してくれるものがなければ難しいように思えたのだ。
「相談できる友達とかはいるの?」
 と聞くと、
「親友がいるんですけど、なかなか、相手も忙しくて。それに……」
 と少し言葉を濁したので、
「それにとは?」
 と聞くと、少し恥ずかしそうに、モジモジしながら、
「私、精神疾患の病気を持っているんです」
 という。
「どういう病気なの?」
 と聞くと、
「双極性障害であったり、パニック障害。それに、自律神経失調症の気もあると言われたの」
 というではないか。
 一つ一つの病名は聴いたことはあったが、それらが、一つの身体に存在しているということを考えると、怖くなるのだった。
 一つであれば、まだ何とか大丈夫なのだと思うけど、いくつもあるとなると話は変わってくる。
 少しショックというよりも、思ったよりも病気が多いことで、余計に、
「自分に何かできることはないのか?」
 と感じたのも事実だった。
 と言ってお、晃弘は、別に
「勧善懲悪」
 というわけではない。
「昔好きだった人に似ているから」
 というのが大きな理由で、
「あの時に、できたかも知れないことを、彼女にしてあげられればいいな」
 という思いもあった。
 さらに、
「俺は彼女のことが好きなのかも知れない」
 と思って接していると、
「お慕いしています」
 というようなことを、こちらが、
「助けてあげたい」
 という態度に出ると、口にして言い出したことで、有頂天になってきたのも、悪かったのかも知れない。
 そして、それから二人は急速に、接近していって、付き合っているような気分になっていた。
 それは、晃弘の側には言えることであったが、果たして、つかさの方が、どう感じていたというのか、正直分かっていなかった。
 一つ気になったのが、
「自分がマインドコントロールされているのではないか?」
 と感じたことだった。
 しかし、以前に、マインドコントロールされて、
「これはまずい」
 と思った時のことだが、
「また同じようなシチュエーションになった時、同じことを繰り返すのではないか?」
 と思うと、
「繰り返すんだろうな」
 と感じたことだった。
 それは、自分では、
「悪いことだ」
 とは思わないので、
「やっぱり、同じことを繰り返すことを悪いとは思わない」
 のだった。
「それはそれで仕方がない」
作品名:再会へのパスポート 作家名:森本晃次