再会へのパスポート
報復があるかと思ったが、それはなかったので、よかったのだが、そのことを父親が知って、
「うちの娘と結婚してくれるんじゃないのか? そう思って君に期待していたのに」
ということで、当然会社の話もなしになり、結局残ったのは、
「借金だけだ」
ということになってしまったのだ。
晃弘は、
「もうどうしようもない」
ということで、借金を返し続けて、とりあえず、3年のローンだったので、何とか返すことができた。
「本当に、どういうことなんだ?」
と言ってもいいだろう。
結局、
「俺は、マインドコントロールを受けて、借金を背負わされ、お金を騙し取られたということになるのか?」
ということであったが、証拠もないし、すべて自分からしたことだったので、どこにも何もできなかった。
ただ、
「マインドコントロールというのは、怖いな」
ということになるのであった、
確かに、こんな話は稀かも知れないが、一定数はあることだろう。
晃弘のような男はきっと騙されやすく、
「もう一度似たようなシチュエーションとなっても、同じことをするかも知れない」
と、自分自身でも感じるのだった。
そういえば、最近の事件でも、似たような話があったではないか。
と言っても、シチュエーションはまったく違う、似ているというのは、
「マインドコントロール」
というキーワードだけだった。
その事件というのは、
「ママ友」
と言われる集団の中で起こったことだった。
全国的なニュースにもなったので、知っている人もたくさんいるだろう。
「ああ、あの事件」
ということで、ピンとくる人も多いはずだ。
何と言っても、一人のオンナが、ママ友の一人を完全にマインドコントロールして、生活までも、管理し、金をだまし取っていたというのだから、悪質極まりないというものだ。
これが警察沙汰になり、世間をどうして騒がせることになったのかというと、
「この母親が、子供に食事を与えず、餓死させた」
ということから、この状況が明るみに出たのだ。
その時、ママ友と言われる女は、完全に家族の生活管理もしていた。
晃弘の時と同じように、
「バックには、怖いお兄さんたちが控えている」
ということを臭わせて、相手に恐怖を与え、その思考能力をマヒさせるというやり方だったのだ。
晃弘も完全に、その手口に引っかかっていた。
知らない人間に見張られていると思うと、何もできなくなり、すべてが疑心暗鬼となってしまうと、本当に何を信じていいのか分からなくなり、
「信じられるものは、まったくなく、
「一番信用できないのは、自分なんだ」
ということを思い知らされるかのようだった。
この母親も、同じような恐怖に見舞われ、コントロールされる中で、凶悪な女が、たくさん金を搾り取るために、ギリギリの食費しか持てるようにはしていなかったのだ。
警察も、その女が、金をだまし取っているという証拠を持っているから、検察として、起訴することになったのだろうし、裁判ともなったのだ。
そして、裁判となったが、最初は母親の裁判だった。
もちろん、有罪ではある、
「実行犯」
であることに間違いはないし、情状酌量はあったとしても、食事を与えないというのは、罪以外の何者でもない。
問題は、ママ友の方だった。
「マインドコントロールとの因果関係があるかどうか?」
ということが問題となった。
審議が進む中で、判決が出たのだが、実行犯である母親よりも重い罪という、
「正当な判決だった」
さすがに、世間のほとんどの人は、この判決を大いに評価したようだったが、マインドコントロールをしたこの女だけは、
「無罪を主張して、控訴した」
のだった。
その後は、まだこれからなのだが、何とも、
「憎まれっ子、世に憚る」
ということになるのではないか?
ということを言っている人もいるようだった。
とにかく、
「マインドコントロール」
いわゆる、
「洗脳」
というものは、これ以上、ひどいものはないと言ってもいいだろう。
晃弘は、そんな裁判を見ていると、
「昔の自分」
を思い出す。
昔と言っても、15年くらい前なので、自分としては、そんなに前だという意識はない。
なぜかというと、その時の恋愛で、
「俺はこれが最後だ」
と思っていたので、かなり執着してしまった。
もっと若い頃だと、そこまで執着することはなかっただろう。
「別に、タイプな女というわけでもなかったしな」
と、実は、マインドコントロールの前に、すでに、この女とは、このまま結婚しなくてもいい。
いや、しない方がマシだ。
とすら思っていたのだった。
そのことを、最近になって、思い出すようになった。
というのも、
「俺のタイプのオンナってどんな女なのだろう?」
と考えるようになったのだ。
だから、最後には、ボロボロにされてしまったが、それはそれでよかった。
「あのまま洗脳され続ければ、気が狂っていたかも知れないな」
と感じたからだ。
それにしても、本当にマインドコントロールというのは恐ろしい。
自分では、人に操られているという感覚はなかったのに、実際にやってみると、このような形になってしまうなんて、何とも恐ろしい結末だといえるだろうか。
結局、うまくいかなかったことで、
「俺は、もう女にうつつを抜かすのは、こりごりだ」
と思うようになって。借金を返しきるまでは、ある程度は我慢していたが、返し終れば、その分のお金が浮くわけで、身体だけであれば、
「風俗で十分ではないか?」
と思うようになった。
そもそも、心まで求めてしまうから、あんな危ない目に遭うことになるんだ。
だったら、お金さえ払えばあと腐れなく、しかも、喜んで、
「ご奉仕」
してくれる風俗であれば、それに越したことはないわけだ。
特に風俗ともなると、こちらの欲望に適うシチュエーションをしてくれる。
「コスプレ」
「ソフトSM」
「アダルトビデオの企画もの」
と言ったシチュエーションも、女の子が可であれば、やってくれるというものだ。
しかも、女の子には喜ばれ、こちらも楽しめる。これほど楽しいことはないだろう。
下手に恋愛を求めると、お互いに腹の探り合いになったり、お互いのわがままがぶつかりあったり、さらに、願望が叶わないと喧嘩になったりなど、日常茶飯事である。
それを考えると、
「俺のような、年寄りが、若い子と仲良くなるには、お金が絡まなければならないのだが、逆にいえば、お金さえ出せば、たいていのことはしてもらえるというものだ」
特に、最近の風俗は昔のように、
「嬢になったのは、親の借金とかいうみじめなものではなく。女の子が進んでくるものだということから、本当にお互いの気持ちが、その時間だけ盛り上がる」
というものだ。
「一般的な恋愛の方が、打算的になったり、ただ、素人ということだけに惹かれてしまって、ロクなことにならないだろう」
と言えるのだった。
中には、同じお金を払うとしても、素人感覚がいいということで、
「チョンの間」
などと言われるものを所望する人もいるだろう、