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無限ループ

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「分かりやすいということは、人から勘違いされることは少ないだろうが、安心できるところなんだわ」
 と感じるのだ。
 だから、
「都合のいい女」
 となりやすいのだろうし、逆に、
「都合がいい女でも、相手がしっかりしていれば、安心感につながる」
 というものだ。
「都合のいい女にしたてるやつに、しっかりなどしているわけはないだろう」
 と思えるのだが、あいり自身が、安心感を抱いているのだから、これは、もうどうしようもない。
 あいりが付き合った男性は、正直、イケメンばかりだった。それが悪いというのは、語弊があるが、疑いを掛けるくらいに感じてもよさそうなものなのに、なんら、疑いを掛けることもない。
 それだけ、頭の中が、
「お花畑」
 と言えばいいのだろうか?
 気にしているまわりが、バカバカしくなるくらいだった。
 そんなあいりのことを絶えず気にしている、幼馴染がいた。名前を、田代清隆という。
 田代は、あいりの性格を正直怖がっていた。
 相手をバカ正直に信じてしまい、いつもひどい目に遭っているあいりのことを、真剣心配しているのだ。
「何で、お前はいつもそうなんだ」
 と言って、呆れている様子ではあるが、心底心配しているのだ。
 人から、自分の行動を諫められることを非常に嫌がるあいりだったが、田代から何かを言われると、まるで、
「借りてきた猫」
 のようにおとなしくなるのだ。
 大丈夫か?」
 といつも心配してくれる田代のことを、心の中で慕っているのだろう。
 しかし、あいりには、田代という人間を、
「彼氏として見ることはできない」
 と思っていた。
 あいりは、確かにイケメンであるが、田代もそれなりに、
「イケている顔立ち」
 であった。
 実際に、田代は人気がある。そんな田代のことを気にしないふりはしているが、ほとんどの人が、
「あいりは、田代のことが好きなのではないか?」
 と感じるレベルであった。
 田代は、あいりのことを言われると、
「ああ、ただの幼馴染だからな」
 というだけで、鼻にも掛けていない様子だが、あいりの方は、
「田代君とは、幼馴染なだけよ。私のタイプじゃないわ」
 と言いながら、実は意識しているのであった。
 とは言っても、その意識している様子を意外と分かっている人は少ない。
 それだけ、
「幼馴染」
 という言葉は、その力が強いのだろうか?
 確かに幼馴染と言われると説得力がある。
 特に、女の子に、男の子のファンがいれば、幼馴染の女の子から、
「ただの幼馴染で、彼とは何でもないわ」
 と言われると、それだけで信じてしまうだけのことはありそうだった。
「だったら、私が狙っちゃおうかな?」
 と言われたとすれば、
「ええ、いいわよ」
 と言いながら、内心では、ビビっているかも知れない。
 それまで、他の女性には興味もないというような幼馴染が、ひょっとして、他の女の子に靡いたとすれば、どうなるかということを考えるであろう。
「今までは、私が一人で独占していたのに」
 という気持ちが、こみあげてくる。
 子供の頃から、
「彼は私のものだ」
 と思っていたとすれば、恋愛感情がそれまでなかったとしても、急に何かが不安になることだろう。
 その時初めて、
「私は彼のことが好きだったんだ」
 と思うかも知れない。
 それを思うと、
「幼馴染という言葉は、誰にも犯すことのできない二人だけの世界なのかも知れない」
 と感じるのではないだろうか?
 田代とは、中学時代に、
「付き合ってみようか?」
 という、一種の、
「お試し感覚」
 で付き合ってみたことがあった。
 二人とも、その時まで、誰とも付き合ったことがなく、ある意味、まわりから見ても、
「なるべくしてなったカップル」
 という感じたった。
 アニメなどでも、幼馴染が中学時代に付き合い始めるどという話は、ベタ中のベタなくらいに、まるでお約束のように描かれている。
 しかし、そんな二人がハッピーエンドになるのを見ると、
「このマンガ家には、幼馴染と付き合って経験なんかないんだろうな」
 と思った。
 幼馴染との付き合いというのは、実は難しいのではないだろうか?
 普通であれば、
「お互いに酸いも甘いも分かっている仲なので、うまくいくんじゃないか?」
 と思うだろうが、実際はその逆もあるわけで、特に思春期という複雑な時期であり、お互いのことを分かりすぎているだけに、
「気の遣い方を間違えると、どうなるか?」
 ということが分かっているのだった。
 だから、お互いにどこか、ぎこちなく、付き合い始めてからの二人はどこか、よそよそしい。
 それを思うと、付き合うということが苦痛だと思えてきた。
「別れようか?」
 言い出したのは、どっちだったのか、覚えていないが、相手も二つ返事で、その言葉を待っていたかのように、
「うんうん」
 と答えたのだ。
 お互いに別れることで、足枷が外れたように軽くなるのだった。
 なぜなら、
「別れというものは、離別というわけではなく、ただの幼馴染に戻るだけだ」
 ということだからである。
 しかし、しばらくの間二人はきつかった。お互いに、嫉妬というものを感じるようになった。
 それは、一度でも付き合った相手だからではないだろうか?
「だったら、付き合うことなど、しなければよかったんだ」
 と後悔してしまったのだ。
 付き合うということが、どのようなものなのかを味わってみたいということでの、
「お試しだった」
 のだ。
 しかし、お試しを行ったツケは、大きかった。好きだと最後まで思うことのできなかった相手と付き合うことは、なぜか、嫉妬という意識だけを残すことになったのだ。
「好きでもない相手なのに、嫉妬心だけは湧いてくるんだ」
 という感覚が、実におかしなものだった。
 それは、田代の方でも同じようで、大学生になった頃、二人で昔を懐かしがって話をした時に分かったのだが、
「えっ、何? お互いに嫉妬してたんだ?」
 と言って、二人で笑ったものだった。
 交際が終ったといっても、元の幼馴染に戻っただけで、
「やっぱり、この関係がしっくりくる」
 と感じていたのだった。
 確かに二人は付き合ったということは確かであろう。
 しかし、その意識は、別れると同時くらいに、なくなっていった。
「遠い過去の記憶」
 のように、意識に留まることはなく、記憶へと移行していったのだ。
 田代は、あいりにとって、最高の、
「相談相手」
 だったのだ。
 二人の交際はうまくいかなかったが、誰かと付き合うことになりそうな時、必ず、お互いに、報告し合って、相手の意見を聞くのが恒例となった。
「そんなことしてるから、嫉妬心が湧いてくるんじゃないか?」
 と言われるかも知れないが、それはそれで悪くないと思うのだった。
 嫉妬心は、なるほど湧いては来るが、それ以上に的確なアドバイスを与えてくれることで、嫉妬に苛まれるよりも、アドバイスを与えてくれる方が、ありがたかったのだ。
 アニメなどの、
「ベタな付き合い」
 が、実際にリアルな関係であるかどうかは、その人たちや環境にもよるのだろうが、アニメとしては、結構人気があり、
作品名:無限ループ 作家名:森本晃次