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無限ループ

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 そのため、意識が無理を引き起こし、精神的にパニックになってしまうことで、喧嘩になったり、相手に呆れられ、最後には別れることになるのだろう。
 しかし、それくらいのことで別れを切り出す相手であれば、もっと切羽詰まった時、あてにならないといってもいい。
 そういう意味で、
「別れて正解」
 という人もいたに違いない。
 あいりの難しいところは、
「規則正しい生活をしないと、精神的に崩れてしまう」
 ということであった。
 もちろん、田代はそのあたりのことはわかっているのだが、まわりの知り合いや友達は、なかなかそこまで分かっていない人が多い。
 つまりは、
「それだけ付き合いが中途半端だ」
 ということではないだろうか?
 そんなことを考えていると、あいりは、彼氏だけではなく、
「友達もしっかり選ばないといけない」
 ということに気が付いた。
 そのことは、田代もよく分かっているので、
「無理のない程度に、徐々に友達を整理していくといい」
 と、いうアドバイスをしてくれた。
 確かに友達の中には、完全に、あいりに依存しているかのような人もいるくらいで、相談事があれば、
「いつでもどこでも関係ない」
 というくらいの人だっているようだ。
 それを考えると、
「そんな人こそ、斬らなければいけない人で、気が付けば、電話で話している割合も、かなりのものだったのではないだろうか?」
 と言えるのだった。
 あいりが、どのような相手と関わるかというのは、田代にしても、気になるところであった。
「下手な人と関わってくれると、せっかく俺が気を付けているのに、元も子もなくなる」
 ということで、
「本末転倒ではないか?」
 と感じさせることだろう。
 あいりは、それから友達の、
「断捨離」
 を始めたのだった。
 断捨離というのは、言葉でいうほど簡単ではなかった。ある程度の人とは簡単に切れたのだが、人によっては、自分と同じような、
「危なっかしい人」
 で、こちらが相手の気持ちを分かるのと同じで、相手もこっちの気持ちを分かるという関係だったのだ。
 だから、
「こっちが相談することもある」
 と思うと、どうしても、簡単に切ることができなかった。
 だから、田代のいう、
「無理なく、ゆっくりと」
 という言葉は当たり前のことなのであり、あいりも分かっていることだったのだ。
 だから、あいりは、徐々に電話の時間を短くしていくように、
「タイミングを見計らって切っている」
 という態度に出てくると、相手も、あいりの気持ちが分かるのか、
「あまり相談してはいけない」
 ということに気付き、次第に時間を減らしていってくれるようだった。
 それでも、あいりは、今までに蝕まれた精神は、いかんともしがたく、結構辛い状態だった。
 病院の先生からも、いろいろ言われているが、どこまでできるか、自分でも考えてしまうところがあるようだ。
 時々通院がつらい時は、田代が一緒に付き添ってくれていたようだ。
 医者も、
「まわりの人に、知っていてもらうのは大切なことだから」
 ということで、田代がついてきてくれた時の診察を、一緒に受けることもあったりしたのだ。
 田代も、分かっていることもあったが、医者に聴いて、初めて、
「なるほど」
 と思うこともある。
 いつも一人の目で見ている時は、どうしても、贔屓目に見てしまったり、
「自分が嫌われたくない」
 という気持ちから、できなかったこともあったことだろう。
 だから、
「世の中の構造」
 というと大げさであるが、見方を少しでも広げることが大切だということは、先生の話から、納得のいくことであった。
 こういう説教的な話は、よほどの説得力のある人でなければ、理屈が分からないので、話を聴いても、右から左に流れてしまうことだってあったに違いない。
 だが、田代は違っていた。
 先生の話を真摯に受け止め、その内容を理解しようとすることで、いかに、自分が何をしなければいけないのかということが分かってくる。
 だから、田代にも、
「どのような断捨離が必要なのか?」
 ということも考えたりしていた。
 ただ、一つ気になっているのは、
「あいりに対して、あまりかまいすぎると、億劫になってしまうことで、自分まで断捨離の対称にされてしまう」
 ということだったのだ。
 だが、それは考えすぎだったようで、何といっても、一緒に病院についてきてくれて、医者の話も一緒に聴いてくれる人を、さすがに断捨離などできるわけもない。
「俺を切ったりすれば、それこそ、まわりに誰もいなくなってしまう」
 ということだからだった。
 あいりの症状は、
「一進一退」
 を繰り返していて、双極性障害の躁状態と鬱状態が、交互にやってくる。
 その時々で、対応が違うのだ。
 しかも、外的に変な影響を受けてしまうと、対応する方も大変だ。
 うまくいっているつもりでも、話がうまく通じなかったりすると、そこから少しずつ狂いが生じて、修復には、さらに時間と労力を必要とする。
 それも、回復というよりも、
「現状維持」
 というところまでしかいかないのだ。
 だから、
「努力が報われない」
 ということもえてしてあるもので、それを考えると、うまくいかないということも普通にあるのだった。
 ただ、
「あいりだって絶えず努力をしているんだ」
 と思うと、
「俺がへこたれたりするのは、いけないことだ」
 と自分に言い聞かせてみたりする。
 それをあいりには悟られてはいけない。さりげなく、サポートするくらいのつもりがいいということは医者から聞かされていた。
 それは、あいりが検査のために、治療室に入っている時、診察室に残った田代が、
「あいりのいないところで、聞かされた話」
 だったのだ。
「あいりさんの病状は、結構大変なところがありますが、根気よく見守っていけば、大丈夫です」
 と医者から言われたことは、ひとまず安心できることだった。
 いくら、一緒に医者に付き添っているといっても、診察内容は本人しか聞かないのだから、いつも寄り添っている田代としては、
「俺だって知りたいんだけどな」
 と思っていたところへ、
「ご一緒にお話を聴いていただきたい」
 と医者に言われた時、嬉しさと同時に不安もあった。
「まわりにつきそう人も聞かないといけないほど、ひどいものなのか?」
 という気持ちがあったのだ。
 しかし、冷静になって聴いていると、症状は、自分が思っていたのと、さほど変わりはないようだった。
 ただ、
「その場合にどのように対応すればいいのか?」
 という具体的な話も聞かれたのはありがたかったし、
作品名:無限ループ 作家名:森本晃次