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無限ループ

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 結局最後まで相手の顔を見ることもなく、離婚成立。あれだけ仲が良かった女房と、
「最後の別れ」
 もできずに、
「さよなら」
 ということになるのだった。
「まさか、最後、顔を見ることもないだなんて」
 ということがショックだったが、おかげで、そこまで引きずることはなかった。
 だから、離婚が成立すると、却ってスッキリした気分だった。
「どうしてあんなに、何に対して執着をしたのだろう?」
 と考えた。
 やはり、子供の話題を出されて、その子供のことを考えた時、
「調停委員に仲介してもらおう」
 と思っていたのに、それどころか、
「奥さんの意思は固い、元に戻るということは不可能に近いですね」
 と言われてしまう。
 さらに、
「子供の将来を考えると、早くハッキリさせて、あなたの方もまだこれからなんですから、第二の人生を歩むことをお勧めします」
 と言われた。
「第二の人生」
 という言葉を聞いて、正直、全身の力が抜けていくのを感じた。
 というのも、
「確かに、まだまだ自分も若い。再婚というのもいいかも知れない」
 と、それまで考えもしなかったことを言われて、急に目の前が開けたような気がしたのだった。
「そういえば、俺だって、まだまだ捨てたものではない」
 と正直に思った。
「女房と出会った時だって、前の失恋のショックから抜けていない時ではなかったか? ひょっとして、俺ってモテるのかも知れない」
 とばかりに感じたのが、不謹慎と思えるのだが、そもそも、
「まわりが、そうやって、こっちを説得しようとしているのだから、そう考えたとしても、悪いことではない」
 と思うのだった。
 そう考えてくると、それまでの気持ちが楽になってくるのだった。
「なんだ、そういうことか、何も難しく考えることはないんだ」
 ということであった。
 理由を聞いても、女房がわから、何かを言われることはない。
「俺の方では、離婚を言い渡されるような離婚理由となる何かがあるわけじゃないんだ。だからこそ、調停であろうが、こっちがうんと言わなければ、相手に拘束力はないのだから、調停委員も、こっちの味方をしてくれる」
 と思ったのだ。
 しかし、実際に、調停委員としては、
「依頼主の利益を守る」
 という、弁護士と同じようなものではないだろうか?
 弁護士というのは、
「依頼人がいくら悪いと分かっていても、最優先順位は、依頼人の利益を守る」
 ということである。
 つまり、依頼人が犯罪者であっても、無罪放免を勝ち取ろうと、平気でするのだ。
 そのためには、少々の悪いこと、もちろん、法律の範囲内での抜け道を使い、依頼人の利益を守ろうとする。
 それが、弁護士というものだった。
 弁護士というものが、そんな仕事だということが分かっていたので、
「調停委員もそうなのだろう」
 と思っていても、
「夫婦円満ということを前提として考えるんじゃないか?」
 という一縷の望みがあったのだが、それがかなり甘かったということであろう。
「夫婦円満というのは、まるで絵に描いた餅のようなものだったに違いない」
 と言えるだろう。
 実際に、離婚が成立すると、三津木の方は、
「完全に肩の荷が下りた」
 という気がした。
 女房への未練などは、別居生活をしていた1年間くらいの間に、すでに失せていたのだろう。
 離婚が成立してしまうと、
「寂しい」
 というよりも、どちらかというと、
「清々した」
 と言った方が正解だったのかも知れない。
 あくまでも、勝手な思いであるが、
「本当にそうなのか?」
 と一度は自分に問うてみたが、
「女房のあの目を見ることがなくなった」
 と思うことが、清々した理由である。
 別居前に話しかけた時、無言で、こっちをにらんでいるあの顔が、この世のモノとは思えないほどに、気持ち悪さがあったのだ。
 それを思い出すと、
「子供に遭うのも怖い気がする」
 と思うようになってきた。
 子供には悪いと思ったが、
「もうあの家には関わりたくない」
 と思ったとしても無理もないだろう。
 何しろ、理由も言わずに、一方的な離婚なのだ。だからこそ、
「慰謝料もなし、養育費も、最低ラインの金額で落ち着いた」
 ということだったのだ。
 そんなことに巻き込まれた子供は気の毒だが、
「あの女に金輪際、関わりたくない」
 という気持ちは本心だし、間違いではない。
「なんて父親だ」
  とは思うが、無理もないことだと思うしかなかったのだ。

                 幼馴染

 あいりは、幼馴染の田代に、最近は、ずっと自分を委ねていた。
 どうしても、自分のことが不安で、どうしていいのか分からない状態になっていることに、自分で苛立っていたのだ。
 それがどうして、
「そんなに苛立つのか?」
 ということが、自分でもよく分からないでいた。
 だが、考えてみると、よくわかってきたのは、
「自分がこれからしようとしていることを指摘されることに腹を立てている」
 ということであった。
 今まで、彼氏になったり、彼氏になりそうでも、それ以上になれなかった人は、そのほとんどが、この。
「やろうとしたことを指摘してきた人たち」
 だったのだ。
 さらに、あいりに精神疾患があるということを知ってか、悪気があるのかないのか、
「あいりには分からないだろう」
 という意識があって、あいりが分かっていることでも、さも、分かっていないだろうことを指摘して、それに対して、悦に入っているやつもいたりする。
 それが、普段はあまり関わっていない人であれば、そこまではないのだが、自分が、
「委ねたい」
 であったり、
「好きになった人」
 と思えるような人であったら、許せないのだ。
「私のことをもっと知ってほしい」
 あるいは、
「彼氏だったら、分かってくれているはずだ」
 という気持ちになることで、思いは通じるものだと思うことだった。
 それなのに、
「何も分かっていない」
 と思うと、
「私が、ダメだから、まわりも分かってくれない」
 という思いと、まわりについていけない自分に対して、劣等感が激しくなり、パニックを起こしてしまうことで、
「信じたいはずの人が信じられない」
 と思うのだろう。
 そう思うと、パニック障害を引き起こし、ずっと泣いていたり、ひどい時には、引き付けを起こしてしまったりすることだろう。
 そうなると、もう自分ではどうすることもできない。どうしても誰かに頼らなければいけなくなり、誰かに委ねたり、助けてもらうしかない自分の立場を、感じさせられるのだろう。
 だから、パニックを起こしても、
「誰なら自分を助けてくれるのか?」
 ということを見極めるしかないということになる。
 だから、余計に、自分が信じたいと思う相手であったり、信じているはずの相手が普段と違った態度を取ると、不安で仕方がなくなるのだろう。
 そのうちに、今度は、
「自分のことを分かってもらいたい」
 という意識からか、
「彼が言っていることを、注意深く観察する」
 ということが自然と身についてくるのだろう。
 しかし、それにも限界がある。
作品名:無限ループ 作家名:森本晃次