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遅れてきたオンナ

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 しかし、ここで、一人の男が現れるのだが、その男だけは、このオンナ二人と、ちゃんと交流ができているのだ。
 ただ、この二人というか、元は一人なのかも知れないが、主人公のオンナの存在を知っているのは、この男だけであった。
 もし、
「2人いる」
 ということが分からなくても、5分未満で急にどこかに行ってしまう女がいれば、
「それはおかしい」
 ということで、皆が怪しんで、ウワサになってしかるべきだ。
 実際に逢うことはなくとも、ウワサくらいは聞こえてくると、変なウワサが立っていることで、気持ち悪く感じるに違いない。
 そのウワサを聴くことはないということは、そんな女がいることを知っているのは、もう一人の主人公である、その男性だけであった。
 この小説は実に面白い形式を取っていて、
「全員が主人公なのだ」
 つまりは、登場人物は3人で、二人の主人公のオンナと、彼女たちを知っているこの男ということになる。(ただ、本当に登場人物が3人だけかということになると、そこは分からない。ラストのネタバレのところで、実際には違うのかも知れない)
 そういう意味で、最初から、一種異様な雰囲気を醸し出しているのだった。
 さらに、この小説の特徴は、
「男の方が、女性がもう一人いて、それぞれに自分に対して好意を持ってくれて、しかも、数分だけしか一緒にいないということであっても、文句ひとつも言わないことだった」
 と言える。
 5分前のオンナが、どういう行動をしたのかということを、彼女は男に聴くのだが、男は何も言わない。女は苛立ちが次第に大きくなり、男と別れなければいけない時間になると、その苛立ちは最高潮になるのだが、その時やっと我に返り、いつものように、
「ああ、あの女を意識してしまったことで、彼の気持ちを限られた時間で、征服することもできないんだ」
 と思い、自分でも、どうすることもできないことに、また苛立つのであった。
 しかし、オンナも運命からは逃れられないようで、結局、何も言えずに、その場から立ち去るしかない。
 だが、身体には、
「男の痕跡」
 というものをしっかりと感じている。
 たった5分未満なのに、男を感じることができるというのはどういうことであろうか?
 いくら、何でも、5分では何もできるはずもない。
 それを思うと、五分後のオンナは、不可思議な気分になるのだった。
 こう書けば、5分後のオンナだけが、激しい憤りを感じているように思えるのだが、実際には、どうなのだろうか?
 男にとって、確かに5分前のオンナと、5分後のオンナは、同じオンナなのだが、それは容姿が似ているだけの、
「別のオンナ」
 という意識があった。
 もちろん、頭の中では、同じオンナだという意識があるし、
「それ以外には考えられない」
 という思いもある。
 しかし、そう考えると、頭がおかしくなってしまうと思うのだ。男にだって、
「同一次元、同一時間に、同じ人間が存在しえるわけはない」
 というのを分かっている。
 そして、
「だから、同じ視界に入ってくることはない」
 と思うのだった。
 相手がお互いに意識し合って、会わないようにしているのか、それとも、自然の摂理のようなものが、会わないように、辻褄を合せているのか、どちらにしても、出会わないことで、世の中が壊れないとすれば、
「事なきを得ている」
 と言ってもいいだろう。
 男の方も、次第に、二人のオンナが、ちょうど、5分の違いで現れているということに気づいたようだ。
 だから、前のオンナは必然的に、5分未満しか、自分の前に姿を現すことはできない。
 男は、そう考え、二人のオンナが同一人物だと理解すると、
「同じ行動をするのではないか?」
 と最初は思っていた。
 実際に、最初の頃は、まるで、
「デジャブ」
 でも見ているかのように、実に同じ時間が繰り返されることに、気持ち悪さを感じたが、それも慣れてくると、
「次は、どんな感じに感じるだろうか?」
 と思うようになってきた。
 それを思うと、
「やはり、5分後のオンナも俺の前にいるのは、5分未満なんだろうか?」
 と思えてならなかったが、
「いや、そんなこともないか」
 と感じるようになった。
 その理由は、
「次第に、それぞれのオンナが自分を主張するようになると、その雰囲気に次第に、ギャップが生じるようになってきた」
 という感覚からであった。
 最初に違和感を持ったのは、
「5分前のオンナだった」
 彼女は、自分の前に5分しかいられないことを、ことのほかつらい思いとして感じていた。
 だから、
「あなたが、私を選んでくれるわけはないわね」
 と諦めの境地でそういうと、男の方も、
「ああ、彼女の言う通りなんだ」
 と、その言葉に暗示にかかったかのように、逆らえない気分になっていた。
 もちろん、暗示にかかっているということも分かっていた。それは、男が自分のことをよくわかっていたからである。
 だから、5分前のオンナに、そういわれると、
「信じられないようなことでも、何でも信じさせられる気がしたのだ」
 そうなると、オンナというものなのに、
「同性と相対しているような気がする」
 と思うと、
「もし、リアルで会っていたら、親友になれたかも知れない」
 と感じた。
 そもそも、この男は、
「男女間の親友」
 などという考えは、あり得るわけはないと思っているのだ。
 今でも、その思いは変わっていないが、それなのに、5分前のオンナにそう感じたということは、その女を、
「同性だ」
 と思っているということだろうか?
 いや、見た目にオンナであれば、オンナなのだ。もし、何かの力が働いていて、
「中の人が男だ」
 ということが分かったとしても、それでも、見た目が女だったら、オンナとしか思えないと感じることだろう。
 だからと言って、結婚や、セックスなどは考えられない。
「もし、結婚やセックスをしろ」
 と言われれば、秒で断るに違いない。
「心と身体は別なんだ」
 と思っているが、実際には、そんなことはないだろう。
 ということは、もし、相手が彼女でなければ、存在すら認めたくはなく、相手をするようなことはしないだろう。
 だが、毎日のように、
「5分前のオンナ」
 として現れ、自分に影響を与えるオンナ、紛れもなく、感情移入はしているのであった。

                 五分後のオンナ

 五分後のオンナというのが、現れた時、最初は、
「あれ? また戻ってきたのかい?」
 と気軽に声をかけた。
 気軽に声を掛けられるくらいに、すでに彼女と、昵懇になっていたということである。
 元々、人見知りのこの男は、ここまでになるまでに、少なくとも数回は、会っていたはずである。
 その時は、もちろん、
「五分前のオンナ」
 などという意識はなかった。
 だから、
「五分後のオンナ」
 に対しても、そんな意識があったわけえもないだろう。
 それなのに、なぜ、最初のオンナに、
「五分前のオンナ」
 という意識がなかったのか?
 それはもちろん、最初から、
「五分後のオンナ」
 がいたわけではないからであろう。
 そう思うと、今では、
作品名:遅れてきたオンナ 作家名:森本晃次