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中二病の犯罪

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 だから、いくら、人間がロボットに命令をしたとしても、その命令が、人間を傷つけるようなものであれば、従う必要はない。いや、
「従ってはいけない」
 ということになる。
 さらに、ロボットは自分の身を守ることが規定されているとしても、人間が命の危機にさらされていると予見されれば、
「身を犠牲にしてでも助けなければいけない」
 ということになるのだ。
 それが、ロボット工学三原則という考えである。
 しかし、この三原則には、大きな問題が潜んでいて、前述の優先順位が問題なのだ。
 この優先順位にも、可能性が無限にある以上、優先順位を考える可能性も無限にあるということである。
 それを考えると、
「フレーム問題」
 と同様に、この、
「ロボット工学三原則」
 にも、不可能ではないか?
 という考え方が潜んでいるということだ。
 この二つの問題が解決しない限り、ロボット工学は先に進まない。だから、ロボット開発というのは、進むものではないということなのだ。

                 中二病

 秋山隆は、今年で35歳になるが、高校時代から、大学時代までにかけて、結構、
「中二病的な発想」
 を持っていた。
「背伸びしたがる」
 というところがあり、本来であれば、中二という思春期くらいに通る道である性格が、少々遅れてきているのであった。
 その影響は、アニメにあったようだ。
 ロボットアニメなどを見ていると、ついつい主人公に思い入れを強めるところがあるのか、主人公のセリフを何度も繰り返して、覚えるくらいに言ってみたりして、自分の性格が、さらに強くなるのを感じるのだった。
 本人は、
「背伸びしたがっている」
 という印象があるわけではない。
 どちらかというと、
「目立ちたいとは思っているわけではないのに、目立とうとしているところが、まわりの人に疎まれる」
 というところがあるようだ。
「出る杭は打たれる」
 と言えばいいのか、そのあたりの発想が面白いと言えば面白いのであった。
 あれは、高校生の頃、友達が、発作を起こして倒れたことがあった。皆、友達の母親から友達の病気のことを聞いていて、何かあればという対処法を聴いていた。
 もちろん、隆も聞いていたのだが、その時のとっさなことに、頭の中が空っぽになってしまったのか、母親から話を聴いた時、
「俺には関係ない」
 とでもいう感覚で、
「まともに記憶していなかった」
 と言えばいいのか、まったく、そうなった時に機能しなかったのだ。
 一緒にいた他の友達が、その対応をしっかりできたことで、事なきを得ることができたのだが、
 さすがに、高校生だけで何とかできる状態ではなかったことで、救急車を呼んだのだった。
 それまで、オタオタしていて、軽いパニック状態に陥っていた隆を、まわりは、気にすることもなかっただろう。
 実際に、気になどしていられるわけでもなかったからだ。
 だが、救急車に救急隊員が運びこんで、後は任せればいい状態になったところで、子供たちは安心して、救急車が走り去るのを見つめていた。
 その時、隆は、急に思い立ったように、救急車に向かって、
「おーい、ちゃんと医者に診てもらえよ」
 といって叫び出したのであった。
 友達二人は最初は、
「何が起こったんだ?」
 と思って見ていたのだが、すぐに冷めた目になり、
「何だこいつ。何をいまさらっているんだ?」
 とばかりに考え、次第に、虚脱感が襲ってくるのを感じたことだろう。
 そして、
「こいつのそばにいたくない」
 と思ってか、二人は無視して、帰宅を急ごうとする。
 隆一人が見えなくなった救急車に向かって叫んでいるのだ。
 友達二人は、すぐにそこから離れていくのを感じた。
 だが、隆にしてみれば、ここでやめてしまうという選択肢はなかった。
 救急車が見えなくなっても、後ろの二人が自分の視界から消えても、叫び続けるしかなかった。
 自分でも、叫び続けることの、虚空の極みは分かっていたのだ。
 実際に叫んでいると、途中でやめることができない闇に嵌ってしまったことに気が付いた。
 それは、無意識に、
「いってはいけないことを言ってしまった」
 というのが分かったからで、その前には、
「周りから、冷めて見られるようなことを言ってしまった」
 ということで、顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしていることは分ったのだ。
 だが、それをどうすればいいのかということが自分で分からない。
 まるでロボット工学における、
「フレーム問題」
 で、目の前に広がった無限の可能性をどうすることもできないと感じたからだ。
 だから、まるでその時は自分がまるでロボットになったかのように感じたのか、本当に何をどうしていいのか分からなくなって、軽いパニック状態に陥ったのか、そこで出てきた行動が、あの謎の叫びだったというわけである。
 一人残されたのは、
「自分で自分を呆れる」
 という状態に追い込まれた隆だった。
 その時になって、自分が、
「なぜ、そんな行動を取ってしまったのか?」
 ということを考えてしまった。
 そこに、自分がヒーロー気どりとなり、叫んでしまったということ。
 そして、それが、元々、皆一緒に聴いたはずの、対処方法を、自分がパニックになってしまって、後の二人に任せたことで、そこで終ればいいのに、何か、
「手柄」
 のようなものが欲しかったのか、
「このままでは、爪痕を残すことはできない」
 と感じたからなのか、気が付けば、そういう行動をしていた。
 目立ちたいというよりも、応急処置のできなかった自分のいいわけを、そういう行動でしてしまったということを考えてしまったということが問題だったに違いない。
 そして、それが、完全にすべってしまったという行動となってしまったことで、さらに、自分を追い詰めてしまったのだ。
「おかしい。テレビアニメのヒーローは、こんなに浮いてしまうことはなかったはずなのに、どうして俺がやると、こうなるんだろう?」
 と思うのだった。
 アニメがあくまでも、
「まわりに目立たせるもの」
 だということは分っているつもりだった。
 だが、なぜかそんな大人げない行動に出たのは、あくまでも、
「何とか自分の行動に、正当性を持たせたい」
 という思いであった。
 まず、最初に分かるはずのこと、いや、
「分からなければいけなかったことが分からなかった」
 という後ろめたさをいきなり感じた。
 それにより、それ以降はすべてが、
「後手後手にまわる」
 ということであった。
 それにより、まったく何もできなくなってしまったことで、結局思い出したのが、アニメの主人公のように、最後に、アドバイスを送るということだった。
「最後であれば、少々の遅れは取り戻すことができる」
 という感覚を持った。
 それが、そもそも、
「中二病」
 のようなものではないだろうか?
 自分では、夢にも思わなかった。
「背伸びをしたがる」
 という性格であり、友達二人は、そんな隆に対して、
「道の真ん中から、いきなり叫んでいるというのは恥ずかしい」
 という思いと、
作品名:中二病の犯罪 作家名:森本晃次