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探偵小説マニアの二人

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「よく解けたものだな」
 と感じるほどで、
「一度ニアミスをすれば、却って、自分の中での思い込みが、空回りをしてしまい、事件解決にまで、行きそうでいかないという、袋小路が待っているのだろう」
 と、ひろ子は感じた。
 ひろ子は、今回の事件を考えた時、今度は違った意味での袋小路に入ったような気がした。
 以前女将が話してくれたストーリーと、その謎解きは自分の中でシュールすぎて、感覚が思い込みになっていることで、アイデアが、今度は浮かんでこないような気がした。
「密室トリック」
 というものが、いかにうまくいくものかということを考えるのだった。
 似たようなトリックはいくらでもあるのだが、
「どうせなら、不可能と思うような犯罪にしたいと、思うようになってきた。
 実際にどんなトリックがいいのかということを考えてみると、
 頭に浮かんできたことが一つあったのだ。
 確かに不可能と思える犯罪ではあるが、だったら、それをどのように描けばいいのかということを考えると、それを形づくるのは難しい気がした。
 だが、今回の犯罪のトリックを考えた時、やはり、女将の話した事件内容に結びついてくることが分かった気がした。
 それにしても、女将から聞いた事件を、もう一度思い返してみることから考えてみた。
「私に私は、この事件に対して閃いたのは、自分でも、ビックリしている」
 と感じたのだ。
 女将は、ひろ子が、
「小説家のタマゴだ」
 ということを分かってか、ヒントをくれたのかも知れないと思った。
 確かに、
「私は、小説家になりたいと思っているけど、編集長も、そのことが分かっているから、ここで話を聴かせてくれるのを分かって、取材させてくれたのだろう」
 それを思うと、編集長が、ひろ子を意識していることは、よくわかったのだ。
「女将の話を思い出していると、あの話が、昔のトリックを使ってのことだったことで、自分が好きだった探偵小説を結びついてくることが分かったのだ。
 しかし、それ以上に、女将の聴いたというトリックであったり、事件の真相が、どこまでが本当なのかと疑問に感じるほどだが、
 だからといって、事件が解決できるのかどうか、自分でも分からなかった。
 もちろん、女将は、最後には、分からなければ、謎解きはしてくれたのだろうが、女将も、編集長も、
「この謎が解ける人は、まずいないだろう」
 と思っていた。
 ひろ子は、事件のことをいろいろと考えてみたようだが、すぐに浮かんでこない新たな小説に、頭を悩ませていた。
 発想としては、
「女将の話とは、逆から見て見えてくるものではないのだろうか?」
 と考えた。
 私って、閃く時は閃くんだけど、ダメな時はからきしダメだ。
 と思っていた。
 しかし、これは、自分だけにいえることではなく、他の人にも言える。
 むしろ、たくさんの人が、うまく発想できないことであり、女将さんも、ひろ子の謎解きに、彼女の中で理論が繋がってきているということを分かっているようだった。
 いや、
「ああいう形で繋がらないと、ずっと繋がらないのかも知れないな」
 と女将は思っただろうし、
「ひろ子さんも、同じことを考えているのかも知れない」
 と感じるのであった。
 うまく発想ができないというよりも、ある程度のところまでくると、頭が痛くなってしまうかのようで、まるで記憶喪失の人が、意識を取り戻そうとしているかのような雰囲気に感じるのであった。
「私、何か体調が悪いのかしら?」
 とも感じられたが、温泉にも入れるし、食事もおいしいし、自分の発想がまったくうまくいかないことを、
「体調のせいにしていいのだろうか?」
 と考えるのだった。
 ホロ湖は、一つのことを考えるのに、どちらかというと、全体を見るというよりも、一つ一つのことに自分なりに疑問を持って、それを解決していく方であった。
 だから、女将の話を聴きながら、メモを取っていた、箇条書きのようにしながら、決して時系列ではない話をいったんメモに書きながら、最後に、それをまた時系列で並び替えるというやり方をしていた。
 すると、その中で起こってくるであろう疑問を、書き出していくと、そこから見えてくる疑問はいくつかあり、それをまた書き出していく。そしてさらに、その疑問に対して、ひろ子は、自分の発想をぶつけていくのだった。
 ひろ子は、その時に、
「絶対にありえない」
 という話になっているものを、
「いや、あり得ないと思うのは、物理的に無理だということを自分で思い込んでしまっているからだ」
 と考えるのであった。
 物事を逆に感じることで、不可能も、可能になるということであった。
 これが、探偵小説などであれば、
「なんだ、こんなくだらないことか」
 ということで、使わないトリックも、
「いやいや、現実であれば、これだって、十分なトリックになる」
 というものだってあるだろう。
 つまり、頭が硬くなっていると、分かるかも知れないと思うようなトリックを見逃してしまい、真相に辿り着かないということがあるのだ。
 と考えたことがあった。
 それが、探偵小説を書きたいと感じたひろ子が、昔の明らかに時代の違う今の時代に感じるという、
「ギャップ」
 というものだったのだ。
 その事件が起こったという時代背景と、ひろ子が読み漁っていた探偵小説の時代が、実に同じ時代であった。
 女将は、その時代の小説を、ひろ子が熟読していたということを、分かっていたわけではないので、
「まさか、彼女が、こんなにすぐに事件を看破できる」
 と思ってもいなかったであろう、
「時代背景は、昭和30年代くらいで、警察の科学捜査がどこまでできていたのかということが分からない時代では、犯罪に関しては、今の時代のような、ほとんどの犯罪は不可能ではないか?」
 というくらいになっていることで、
「犯罪を犯しても、すぐに捕まるだろう」
 ということであった。
 探偵小説の頃にいわれていたトリックというと、
「密室トリック」
「死体損壊トリック(顔のない死体のトリック)」
 あるいは、
「一人二役トリック」
「アリバイトリック」
 などがあるだろう。
 それらのトリックには、それぞれに今の時代では不可能とされるものが、ほとんどである。
 いたるところに置いてある防犯カメラなどの映像から、密室トリックであったり、アリバイトリックなるものは、ほとんど不可能に近い。
 さらに、科学捜査の発展によって、
「死体損壊トリック」
 というのも、指紋や首を切り取ったとしても、親族によるDNA鑑定により、被害者の特定もできなくはないだろう。
 となると、一人二役トリックというのも、基本的には無理であり、この犯罪は、
「トリックが一人二役であるということがバレてしまうと、犯罪としては成立しない」
 ということになる。
 捜査が進むと、科学捜査や防犯カメラの映像などから、
「この犯行も、実は無理なんだ」
 ということも分かってくるだろう。
 そんないろいろな犯罪があったが、それを見えている範囲で、どの犯罪が、今回の、
「宿題」には含まれているかということを考えさせられるのである。
 宿題の中で、特に今回は、
作品名:探偵小説マニアの二人 作家名:森本晃次