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探偵小説マニアの二人

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「おいおい、それじゃあ、まるでこれから、毒薬のロシアンルーレットでもして、死んだ人間だけが、そこに取り残されるというような、悪魔のゲームのようじゃないか」
 ということで、
「そんなバカなことがあるわけはない」
 といって、すぐに打ち消された。
 しかし、考え方としては、そう考える方がある意味自然であった、だから、刑事の中には、この意見をまんざらでもないと思いながら、打ち消すことをせずに、考えている人もいるのであった。
 ただ、問題は、それよりも、やはり、密室であった。
「連れ込みホテルは、オートロックにはなっていないが、一度出ると、表からは、開かないようにする仕掛けはある」
 というものだった。
 しかも、今のホテルのように、
「中からも開かない」
 という仕掛けになっているようだ。
 ということは、死体が発見された状況としては、自然な発見であったという。
 なぜなら、ちゃんとお金は支払われていて、それを確認して、部屋のロックをフロントから解除するという最新式のやり方だったようだ。
 その時、お金を払うのは、扉の横に小さな扉があり、そこで、清算をすることで、フロントの人が、表から開錠するということになっているのだ。
 今のようなオートロックではなく、人の手によるものではあるが、それでも、ちゃんとうまくいっているというのは、よく考えられているといえるだろう。
「ということは、お金を清算したのは、誰かは分からないが、その時には、生きている人が必ずそこにいた」
 ということであった。
 カギが開いた状態で、被害者が刺殺されたのか、それとも、最初から殺されていたのか、当時としては、どっちとも言えなかったという。
 気になるのは、指紋であり、まったく吹き消されていたことに、警察は気を遣っていたということであった。
 死体を発見したのは、掃除婦の人であった。
 掃除婦は、部屋に入る前にmすぐに可笑しいと感じた。
 というのは、
「カギがかかっていた」
 ということからである。
 ここは、客が出れば、当然カギは開け羽なしになっていて、掃除婦はカギがなくとも普通に入れるというわけだ。
 フロントから、会計が終わってから、約20分くらい経ってから、
「○○号室の掃除をお願い」
 ということで、出向いていくのだが、その時、中からカギがかかっているので、おかしいと思い、フロントまで戻ってくると、フロントも、
「お金が受け取っている」
 ということで、開いているはずの部屋だった。
 しかし、部屋に行ってみると、確かに中からカギがかかっていて、中に入ると、
「男が胸を抉られていて、殺されていた」
 というわけだ。
 さすがに、皆仰天してしまい、震えが止まらないまま、警察n通報されたのだ。
「どういうことだ?」
 ということで、掃除の人に対しても、
「余計なものに触ってはいけない」
 といっておいて、警察を呼ぶことになった。
 警察が指紋を調べると、
「後から入ったであろう、掃除の人と、フロントの人の指紋以外は出てきませんね」
 と言われ、フロントの人がおかしいと思っていると、刑事が、
「一緒に入った女性の指紋が出てこないというのもおかしいよな」
 というと、フロント係が、少し言いにくそうにしながら、
「いえ、この人にお連れの人はいなかったと思うんですよ」
 というと、
「えっ? そんなことがあるのかい?」
 と聞かれ、
「ええ、たまにそういうお客さんもおられます。後から女性が来るとおうパターンは少ないですがありますので、こちらも気にしていないんですよ」
 というのだった。
「じゃあ、女性一人というのは?」
 と刑事は睨みつけるように言ったが、フロント係はわかっているのか。
「それはありません、こちらでも注意をしているんですよ。だから、一緒に入らないお客様でも、最初に男性が入って、後から女性ということは結構ありますね」
 といったという。
「それはそうだろう、自殺が多い昨今では、女性の一人というのは、自殺を考えている女性が多いということで、
「女性一人は入れない」
 というのが、今のこういう業界での、
「当たり前ということになっている」
 のであった。
「じゃあ。後から女性が来る予定だったのかな?」
 ということであったが、
「でも、これも正直分からないですよ、監視カメラのようなものがついているわけではないので、女が先に部屋の前まで行って待っているということも普通にありますからね。フロントさえ超えれば、あとはお互いにいくらでも、何でもききますからね」
 ということであった。
「男と女というのは、ややこしいところもあるので、しかも、女が不倫だったりすると、顔を見られるのを極端に嫌がる女性もいますからね。それはしょうがないことではないでしょうか?」
 と、フロント係は言った。
「じゃあ、こう考えればいいのかな?」
 と一人の刑事が言った。
「どういうことですか?」
「この部屋に最初に入ったのは、示し合わせて、二人で入った。それは、男同士なのか、男か女かは分からないけど、何がどうなったのか、殺してしまった。そして何食わぬ顔をして、清算し、出ていったということは考えられないのか?」
 というと
「でも、だったら、どうして中からカギがかかっているんだい? 被害者が閉めたとでもいうのかい?」
 と言われると、黙り込んでしまった。
「そっか、入ることはできても、出ることができないのか?」
 ということであった。
「とにかく、犯人が誰なのか?」
 ということを考えることが先決ではないか?
 ということをまたしても考えるのだった。
 そんな時に、浮かび上がってきたのが、馬場崎だったのだ。
「犯人は馬場崎で、本当は穴山が馬場崎を殺そうとして、あの場所におびき出したのだけど、逆に殺されてしまったとは考えられないか?」
 と一人がいうと、
「でも、室内が荒れているという様子はないですよ。完全に、被害者は意表を突かれたということだったように思えてならないんだよな」
 というのだった。
「何も、穴山の方だけに動機があったわけではないだろう、馬場崎の方にも穴山を殺すだけの事情があったのでは?」
 と聞かれて、
「それはその通りなんでしょうが、どうもそうでもないのかも?」
 という。
「どういうことだい?」
「馬場崎はあくまでも、組織に利用されただけで、穴山を殺すという理由は見当たらないんですよね」
 ということであった。
「だけど何があるか分からないのが人間だからな」
 というと、
「でも、それだったら、二人共の指紋が仲良く消えているということの説明がつかない気がするんだよな」
 と、一人がいうと、
「とにかく、馬場崎という男の行方を追うしかないですね。そのあたりはどうなっているんだい?」
 と聞かれて、
「馬場崎は見つかりませんでした」
 ということのようだ。
「じゃあ、行方不明ということか?」
 というと、
「じゃあ、殺人で、全国に指名手配ができるじゃないか?」
 と言われたが、
「裁判所が逮捕状を出しますかね?」
 と言われて、
作品名:探偵小説マニアの二人 作家名:森本晃次