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探偵小説マニアの二人

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「穴山を殺そうというようなほど恨んでいるという人はいない」
 ということであった。
 だが、いろいろっ調べてみると、
「穴山が殺したいほど憎んでいる」
 と思われる人物はいるということだった。
「殺される前に殺したのだろうか?」
 ということが問題だったのだ。
 もちろん、その男は警察から、事情聴取を受けた。
「参考人」
 という形ではあるが、あの時、警察は、
「重要参考人」
 ということで、
「他に殺人を犯すほどの人はいない」
 というのが、その理由だった、
 その時の重要参考人というのは、
「馬場崎」
 という男だったという。
 馬場崎は、詐欺グループに騙されていたというのだ。
 死んだ穴山は、馬場崎に騙されて、穴山にあった著作権のようなものを奪われてしまった。
 馬場崎も、まさか自分がそんな片棒を担がされているとは思っていなかったようで、詐欺師がよく使う、自分たちの間に一人を噛ませるというような、一種の噛ませ犬のようなものだといっておいいだろう。
 しかし、穴山には、馬場崎しか見えていない。
「お前のせいで、俺がどんな目に遭ったのか分かってるのか?」
 と穴山の怒りは馬場崎にしか向いていない。
 これも、犯行グループのやり方で、被害者には一切自分たちの正体を明かすことはなく、馬場崎のような噛ませ犬を使って、人を騙すということをしていた。
 しかも、やり方としては、
「一人一殺」
 とでもいえばいいのか、噛ませ犬を使うのは一人に対して、一人だけ。だから、
「穴山に対しては、馬場崎」
 だったのだ。
 これには理由がある。
 もちろん、人を変える方が、自分たちの正体がバレないということもあるのだろうが、被害に遭った人は、噛ませ犬にしか恨みをぶつけない。しかも、噛ませ犬の方は、自分がなせ恨まれているのかもわかっていない。
 実際に、組織と繋がっているわけではない。ちょっとした情報を流すだけで、たくさんの金が手に入るということだったのだ。
 噛ませ犬としても、
「軽いバイト感覚」
 でホイホイ調子に乗って、
「まさか、こんなにひどいことになるなんて」
 というほどのことが起こるなんて思ってもいないだろう。
 それを思うと、
「馬場崎としては、自分はそんなことになるなんて思ってもいなかったので、完全に寝耳に水で、最初は、まさか組織が、詐欺に使うために。自分に近づいたなどということを知りもしないので、急に組織と連絡が取れなくなったことで、自分も騙されていたということに、その時初めて気づく」
 ということだったのだ。
 そこまでは、警察の捜査で分かっていたようだった。
「そういう組織が存在する」
 ということは、警察の方でも、把握はしていたようだけど、実際には、雲を掴むような話で、信憑性という意味で、なかなかハッキリとしないところが多かったのだ。
 その組織は、そうやって、協力者を、次々に見捨てていく。そのことによって、被害者の恨みはその男に向く。
 恨まれる方としても、いなくなった組織を探すよりも、自分の身を守ることが大切ということになり、どこかに雲隠れするという人もいたようだ。
 要するに、組織は、奪うものを奪ってしまうと、後は、
「自分たちで、勝手にやってくれ」
 という状態だという。
 警察も、
「そんな組織が存在する」
 ということは分かっても、だからといって、それらの被害をどうすればいいのか?
 などということは、分かるはずもない。
 警察は、殺人事件が起こるまで、穴山という男と、馬場崎という男を気にすることはなかった。
 二人には前科などもない。二人とも、今回のトラブルがある前は、真面目なサラリーマンであったり、学生だったのだ。
 穴山の著作権というのは、ある商品の登録商標化であり、そこで、
「いい話がある」
 と、言って近づいてきたのが、馬場崎だったのだ、
 その商品というのは、戦時中に穴山の父親が開発した薬だったのだが、それを組織はどこで知ったのか、狙いを穴山に絞った。
 組織は、馬場崎に、話の持っていき方のレクチャーと、その、
「虎の巻き」
 を渡すことで、馬場崎を、穴山は全面的に信用していた。
 そもそも、穴山には、そんな知識もなく、
「俺が開発したものでもないしな、何か後ろめたさがあるんだよな」
 といっていたという・
 要するに、戦時中に、
「親父が開発したものを、俺のもののようにいうことが後ろめたい」
 ということであった。
 だが、この時代は、
「背に腹は代えられない」
 ということで、穴山とすれば、
「金になるならお願いしたい」
 ということだったのだ。
 しかし、実際に、詐欺だと分かると、穴山は、最初こそ、
「しょうがないか。俺が頼ったから悪かったんだよな」
 と人に頼ってしまったことをしょうがないと思ったのだが、誰かに何かを言われたのか、今度は逆上して、
「馬場崎を許せない」
 と言い出したのだという。
 おそらく組織の方で、馬場崎を通り越して、組織の誰かが、穴山に接近し、馬場崎を恨むように仕向けたのだろう。
「なぜ、そんなことをしたのか?」
 ということは分からなかったが、穴山は、急に激怒し始めたのだ。
 つまり、
「組織としては、穴山に怒ってもらい、その矛先を馬場崎に結び付けてくれあいと困る」
 ということだったのだ。
 そこに、どんな含みがあるのか分からないが、馬場崎にとっては、実に困るということであった。
 そんな馬場崎は、穴山が殺されてから、どこかに逃亡してしまった。警察も最初は、馬場崎という人間の存在を知らなかった。
 当然、穴山が、
「著作権の問題で詐欺に遭っている」
 ということも分かっていないのだった。
 それも、警察の捜査の中で、すぐに判明することではなかった。警察の方でも、
「こういう詐欺のようなことがあれば、すぐに分かりそうなことなのに、なかなか捜査線上に浮かんでこなかったというのは、どういうことだろう?」
 ということで、
「この詐欺というのは、通常の詐欺ではなく、何かの組織が裏で暗躍しているのではないか?」
 ということで、動くようになったというのが、本当のところだということなのであったのだ。
 そして、もう一つ問題になったこととして、
「部屋の中から、余計な指紋は何も発見されなかった」
 ということであった。
 というのは、
「被害者以外の指紋が発見されなかったというだけではなく、被害者の指紋も発見されなかった」
 ということだったのだ。
 確かに、
「犯人が、指紋を吹き消した」
 というのなら分かるが、被害者が触った場所まですべてきれいに消したというのだろうか?
 ということなのだ。
「まるで、二人して、指紋をお互いの触った場所の指紋を消したということのように見える」
 ということであった、
 それを考えると、
「そんなバカなことは考えられないよな」
 といって、一度は捜査員も考えるのだろうが、すぐに、秒で打ち消されるのが、関の山だった。
 実際に、捜査会議でも、指紋の話が出た時、
「お互いに自分の触ったところを消したかのようだな」
 という話が出て、
作品名:探偵小説マニアの二人 作家名:森本晃次