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矛盾による循環

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「霊感商法に、詐欺、政治家との繋がりなどが絡んでくると、ロクなことはないのだ」
 ただ、それ以外でも、中には個人の詐欺師が、
「バーナム効果」
 を使って、二束三文のものを、高額で売りつけるというのは、普通に起こっている。
 そうなると、問題は、騙される側にもあるということになるが、それはあくまでも、
「被害者が悪い」
 というわけではない。
 被害者をそこまで追い込んだ社会というものに責任がないのだろうか?
 ということであるが、もっといえば、やはり被害者が弱いからと言えなくもない。
 しかし、そうなると、被害者を追い詰めたのが……、
 という話になり、結局、堂々巡りを繰り返してしまうというのだ。
 この場合は、同じところを繰り返しているというわけではない。真上から見ると、
「同じところを繰り返している」
 かのように見えるのだが、実際には、
「螺旋階段を滑り下りている」
 という感じに見えているのだった。
 これを、
「負のスパイラル」
 というのだろう。
 まるで、アリジゴクの砂の中に吸い込まれているかのようではないか。それを考えると、
「バーナム効果というのは、まるで、底なし沼に嵌りこんでしまっているように見える」
 といってもいいのではないだろうか?
 そもそも、バーナム効果というのは、
「その人が自覚しているところをついて、それを言い当てたことで、相手に、占いの信憑性と、自分の信頼を与えることから始まる」
 ということであった。
 相手は不安に思っているのだから、普通であれば、自分のことを言い当てられれば、
「気持ち悪い」
 と思い、不安に感じるのだろうが、そもそも、不安に感じているのだから、これ以上の不安はない。
 さらに深く抉ろうとすると、今度は、反発するところを押し込んでいるかのようで、その反発が逆の効果を生む。
 つまり、ズバリ言い当てることで、相手に自分のそばに寄り添ってくれるかのような錯覚を与え、それが安心感につながる、そうなると、普通の精神状態であれば、怪しんだりするものを一切、疑うことがなくなる。
 それだけ、最初のインパクトの強さが、
「バーナム効果のすべてだ」
 といってもいいのではないだろうか?
 つまりは、
「相手に不安を与えるか、それとも信頼関係を与えるかというのは、紙一重」
 というもので、それこそまるで、前述の、
「長所と短所」
 という、
「まったく正反対のもの」
 という理屈に照らし合わせて考えることが、
「バーナム効果というものを、最大限に生かせる」
 というものではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「人を洗脳するということから、すべては始まる」
 といってもいい。
 それは、政治であっても、戦争であっても、同じこと、だからこそ、最初に、
「諜報部隊」
 なるものが暗躍し、彼らが仕事を終えてから、表に出てきて、実際の戦をしたりするのではないだろうか?
 だから、実際に戦いを始めた時、
「すでに雌雄は決している」
 といってもいいだろう。
 大学時代に、そんな占い師のようなことをサークルでやっていると、最初はよかったのだが、鬱状態の時に、
「本当は他の人に掛けなければいけない、
「バーナム効果」
 と自分に掛けるような状態になってしまい、鬱状態がさらに悪化する形になった。
 それは、人に掛けているつもりのバーナム効果を、あたまも自分の性格で話をしてしまっていたのだ。
 だから、占いをしている相手にそれが伝わるわけでもなく、
「全然当たっていないじゃないか」
 といって、
「ウソつき占い師」
 とまでうわさされるようになった。
 もちろん、サークル内部でやっていることなので、お金を取っているわけではないので、大事になることはなかったのだが、精神的なショックは、本人だけではなく、部員にまで及んだ。
 さすがに部長もまずいと思ったのか、退部勧告が行われ、本人も、
「このままではいけない」
 と思い、素直にしたがった。
 それによって、順平は初めて、精神科医の扉を叩くことになったのだ。
 その時初めて、
「君は躁鬱症なだけではなく、自己暗示にかかりやすいので、鬱状態の時には、気を付けた方がいい。バーナム効果を使うなんて、もってのほか、まずは、落ち着いて、あまり余計なことを考えないようにしないといけないね」 
 と言われたのだった。
 順平の躁鬱症は、実は高校時代から自覚があったので、
「俺は、高校時代からおかしかったんだ」
 と思っていたが、それは、大学に入ってから高校時代を思い出した時に感じたことであって、実際には、錯覚だった。
 それを医者は話をし、
「躁鬱症には、後から、過去の自分を都合よく考えてしまうこともある場合が稀にあるあらね」
 というのだった。
 だから余計に、バーナム効果のような、人を洗脳するような行為をすると、人に掛けているつもりで、いつの間にか自分に掛けようとしてしまい、自己暗示にかかることで、余計に鬱状態がひどくなるというものだったのだ。
 つまり、
「君の躁鬱状態というのは、まわりに与える影響よりも、自分の中で消化できずに、それが、自己暗示にかかってしまうんだよ」
 と医者はいう。
「じゃあ、僕の躁鬱症は、閉鎖的という感じなんですか?」
 と聞くと、
「ええ、そうですね。普通の躁鬱症自体も閉鎖的なんですが、それが強い人は、表に吐き出せない分、余計な暗示を自分n掛けてしまう。それが危ないところに来てしまうんじゃないかということなんですね」
 と医者はいうのだった。
 そこで医者の治療として、睡眠治療というものを施してくれていた。
 そこには、まるで、手品師が行うような、一種の、
「ブービートラップ」
 のようなものが施されていた。
「君の場合は、自分から進んでかけてしまったバーナム効果を取り除くには、まわりから、都合のいい方法で、その自己暗示を解いてやる必要があります」
 ということで、医師は、さらに、
「いいですか? 私に委ねるんですよ」
 と、医者による洗脳が始まったのだ、
 医者にとっての、
「バーナム効果」
 のようなものが存在したのだろう。
 順平は、それ以上の鬱状態がひどくなるということもなかった。
 医者の話では、
「これ以上、バーナム効果であったり、自己暗示が強ければ、あなたの中の躁鬱のバランスが崩れて、ずっと鬱状態になり、あなたの精神を体力が支えることが困難になり、さらに、負のスパイラルが強くなっていく可能性があるので、何とか抑えなければいけない」
 ということだったのだ。
 何とか、医者がうまく抑えてくれたようで、今のところ、これ以上ひどくはならなかった。
「そもそも、躁鬱症は、抑えることはできるが、なかなか完治というのは、難しい場合がある。うまく付き合っていくということも考えていた方がいいかも知れない」
 と医者は言った。
 その時、医者が少し気になることを言ったのだが、順平自身が、
「それどころではなかった」
 ということと、医者の方も、必要以上に強く言わなかったのは、わざとであった。
作品名:矛盾による循環 作家名:森本晃次