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矛盾による循環

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「易者」
 のような占いだった。
 そもそも、順平は、
「外国のものよりも、日本古来のものの方が、興味が湧くのだった」
 順平は、外国人が嫌いえ、日本人であるがゆえに、
「なぜ、もっと、日本の美しいものを見ようとしないんだ」
 と、今でこそ、日本文化に陶酔しているが、そのきっかけになったのが、大学時代に少しのめり込んだ、この、
「易者のような占い」
 だったのだ。
 ただ、先輩が行った占いというのは、正直、そんなにいいものではなかった。
 というのも、
「占いというものを当てることは、実は簡単だ」
 と言われている。
 それは、いわゆる、
「バーナム効果」
 と呼ばれるもので、心理的に、相手にそうだと思い込ませることさえできれば、それだけで、占いとしては、
「成功だ」
 と言えるだろう。
 このバーナム効果に有効なものは、
「星座占い」
 などのような。
「決まった種類しかない」
 というものを集団として捉えることでできるものだと言われている。
 どういうことなのかというと、
「誰にでも当てはまるような話を相手に投げかけて、その場合に、起こりやすいと思われることを、あたかもその人に適用するかのような暗示を与えることで信じ込ませる」
 という心理的な現象のことである。
 それだけ下準備を必要とするものであり、しかも、その人が実際に考えられるパターンのどこに属しているかということを、正直、初対面の相手に当てはめるということは、相当難しいことだろう。
 下手をすると、
「占いとして当てることよりも、バーナム効果を相手に信じさせる方が難しいのかも知れない」
 と言えるのではないだろうか。
 実際に、先輩から占ってもらった時は、
「やけに質問が多いな」
 ということを感じた。
 質問の多さというのは、以前、大学で流行った、
「ウミガメのソープ」
 というクイズに由来していたような感じだった。
「ウミガメのスープ」
 というものは、
「はい」
「いいえ」
「関係ありません」
 の三つでしか答えることのできない質問を、回答者が、質問を聴いた後で、質問者に投げかけるという、
「水平思考のクイズ」
 のことをいうのだという。
 まるで、帰納法的な答え方であるが、考え方によっては、
「減算法が基本であるが、質問によって、加算法で、問題を簡単にしていくということになるのではないか?」
 と、順平は考えていた。
 というのも、
「そもそも、問題は、それほど難しくはないが、出題者の出す問題が、難しく聞こえるようなトラップを掛けていることで、回答を導き出す」
 という考え方だ。
 要するに、
「本当であれば、占い師というよりも、手品師や魔術師に近い考え方だ」
 と言えるであろう。
 手品師というのは、言い方は悪いが、
「相手に錯覚を見せて、あたかも、記述を使ったかのように思わせる」
 というものではないだろうk?
 いわゆる、
「右手を見るように、観衆に指示しておいて、実際には左手で、細工をする」
 というようなものであり、
「実際には、右手で細工をしながら、左手を見せるのだから、これほど厄介なことはない。右手と左手は近いのだし、怪しい動きをしていれば、すぐに分かるというものだ」
 と言えるだろう。
 しかも、
「右手を見ろ」
 と言われると、
「左手を見る」
 という、天邪鬼立っているだろう。
 しかも、手品師の常套手段を分かっていれば、
「俺がネタを解いてやるとばかりに意気込んでいる人を相手に立ちまわることになるのだから、相手の目を盗むだけの技量がなければいけない」
 つまり、
「手品師は、インチキではダメだ」
 ということだ。
 お金を取って、客を喜ばせるのが仕事なのだから、それなりに、
「術を身に着けておく」
 というのが大切だ。
 そんな手品師と同じで、いわゆる、
「ブービートラップ」
 と呼ばれるものを駆使しなければいけないのだ。
「相手を騙す力」
 というのが、手品師であれば、占い師においての、
「ブービートラップ」
 に当たるものとして、
「バーナム効果」
 を利用した、一種の、マインドコントロール、
「洗脳」
 と呼ばれるものが、必要になってくるのだった。
 バーナム効果を使った占いというのは、結構あったりする。特に、それが、高価なものを売りつけるというような、一種の、
「霊感商法」
 なるものに使われるということも、聞いたことがあった。
 人間の弱い部分に付け込むというのが、
「詐欺集団のやり口だ」
 といってもいいだろう。
 特に霊感商法というものが、今に始まったものではなく、昔からあるものだけに、
「何をいまさら騙されるのか?」
 ということになるのだろうが、実際に騙される人というのは、
「誰でもいいからmすがりたい」
「自分を助けてもらえるものであれば、何であっても、関係ない」
 ということで手を出してみると、実は詐欺だったということになりかねないのだ。
 それだけ、
「藁にも縋る」
 という気分に陥るのだろう。
 そんな人間に対して、バーナム効果というのは聴くのだろうか?
 中途半端に、そして漠然と、
「金持ちになりたい」
 という人間が嵌ってしまうのではないだろうか。
 というのも、中途半端に、
「自分が何に苦しんでいるのか分からない」
 という人間ほど、苦しいものはないだろう。
 それだけ、自分が、この世の中に存在していることへの疑問のようなものは湧いてきて、わけもなく、不安に感じる。
 その感じた不安が、どこに通じているのか、それを考えると、
「ふと、ここなら、自分を迷いから救ってくれるかも知れない」
 と感じるのかも知れない。
 そんな時に、
「バーナム効果」
 というものが、有効となるのではないだろうか?
「何が有効か?」
 というと、まず、迷っている相手が何が問題なのか? というと、それは、
「不安」
 というものであった。
 それも、
「理由のない不安」
 である。
 まず、その不安を知りたいと思うことだろう。
 その理由を求めるために、どうしても、考えることは、
「自分に当て嵌まるものが何かということを知りたい」
 というものである。
 自分のことが分かっていないから不安なのであって、分かっていない人間には、まず自分が、
「どこに当て嵌まるか?」
 ということが、重要なのである。
 それを考えると、騙す方にとっても、実に都合のいい症状であり、相手が求めているものが、
「飛んで火に入る夏の虫」
 ということであれば、簡単に、
「バーナム効果」
 に引っかかるというものである。
 だからこそ、詐欺師にとって、
「自分に不安を感じている人」
 というのは、大好物であり、そんな感情を持っているからこそ、騙される人も後を絶えない。
 だからこそ、いくらでもターゲットは、生まれてくる。まるで、どこを切っても同じ顔しか出てこない、
「どこを切っても金太郎」
 ということにしかならないのだろう。
 バーナム効果というと、どうしても、詐欺のイメージが切り離せない。最近でも有名になった、
「政治家との繋がり」
 という問題が浮上した宗教団体が、そんな霊感商法であった。
作品名:矛盾による循環 作家名:森本晃次