小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

矛盾による循環

INDEX|18ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 アリバイを完璧にするために、起こる現象が、リアルには、
「ありえないこと」
 ということになってしまい、それが、シンプルな事件を、さらにシンプルにすることで、事件の形から逃げられなくなるといってもいい。
 この犯罪は、
「成功すれば完全犯罪であるが、リアルでは、ありえない構成になっている」
 といってもいいだろう。
 ということは、
「この犯罪は、犯罪という一種のトリックが見破られた時点で、終わりなのだ」
 と言えることである。
 さらに、もう一ついえば、必ず、複数の犯罪を必要とするもので、最初の犯罪を行った時点で、リアルでは、その時点から、
「あり得ない事件」
 となってしまうのだった。
 物理的にあり得ないということでもあるが、もっといえば、
「心理的にありえない」
 と言った方がいいだろう。
 だが、完全犯罪という意味でいけば、
「アリバイは完璧である」
 ということと、犯人にとって、
「自分が犯人であるということを見抜かれるということはない」
 というものだ。
 つまり、犯人として、容疑者自体に上がってこないのだから、警察から容疑者リスとに入ることはない。
 だから当然、アリバイも完璧ということだから、
「警察の捜査線上に浮かんでくることはない」
 という意味で、
「完全犯罪成立」
 ということである。
 しかし、これはあくまでも、
「完全犯罪の相手に対して、完全犯罪だ」
 と言っているわけで、犯人側からすれば、こちらの方が諸刃の剣だということになる。
 この場合の完全犯罪を成立させるためには、
「一人ではできない」
 ということになる。
 ここまで言えば、賢明な読者であれば、何が言いたいのかということが分かるというものではないだろうか?
 そう、この犯罪というのは、
「共犯者を必要とする」
 ということなのだが、この共犯者というのが、
「共犯者であって、共犯者ではない」
 ということになる。
 何が言いたいのかというと、
「二人で協力して犯行を行うという意味での共犯者ではない」
 ということになるのだった。
「ということは、どういうことになるというのだろう?」
 と、いろいろ考えられるが、このあたりの犯罪は、面白くて読んでいた、戦前戦後の探偵小説にあまり出てくるものではなかった。
 実際に出てきたのが、いつ頃からなのか分からないが、元々概念はあったのかも知れない。
 しかし、実際にリアルな殺時としては、あまり
「実用性がない」
 ということからか、避けられていたのかも知れない。
 そういう意味でも、
「小説ではありえても、現実にはなかなかありえない」
 ということのゆえんなのかも知れない。
 ここまでくれば、どういう殺人なのかということも分かってくることだろう。
 そう、いわゆる、
「交換殺人」
 である。
「お互いに、縁もゆかりもない人間を殺し合う。だから、相手に殺害させておいて、実際に恨みを持っている人間に、アリバイを作る」
 ということを交互にするわけで、主犯と実行犯が、交互に入れ替わるという意味で、特殊ではあった。
 だから、この事件は、一見、
「連続殺人」
 でなければ成立しない。
 だから、考え方によれば、最初の主犯の方が絶対に有利なのだ。
 なぜかというと、最初の実行犯は、主犯に完璧なアリバイを作っておいて、確実に殺しさえすれば、主犯にとっては、その時点で、
「完全犯罪」
 ということになるのだ。
 だから、何も、その後に、いくら約束だからといって、自分が危険を犯して、次の殺人の実行犯になる必要はないのだ。
 圧倒的に有利なのは、最初の主犯であり、
「自分は手を下していない。しかも、アリバイは完璧、実行犯は、動機がないといっても、実際に殺人を犯したことに違いはない」
「実行犯が犯人だ」
 と警察にいえばどうなるか?
 といって、実行犯を脅迫すれば、何も言えなくなるのは目に見えているわけだ。
 しかも、アリバイを作る関係から、絶対に、同時に殺人を犯すわけにはいかない。つまり、犯行の順位がつく時点で、この犯行は、完全犯罪ではなくなるということだ。
 しいていえば、最初の主犯にとって、完全犯罪ということなだけであって、全体的に見た、
「交換殺人」
 という意味では、まったくの無意味になるのだ。
 それを考えると、実行犯には、まったくのメリットはなく、すべては、主犯にあるということだ。
 殺したい相手を殺してもらえずに、自分だけが犯人ということで警察に追われることになる。主犯には動機はあるが、その分、完璧なアリバイがあるので、それを動かすことはできない。
 そもそも、そのアリバイ作りに自分も加担しているのだ。
 何とも、
「お花畑にいたような気がして、苛立たしい」
 ということになるだろう。
 そう、
「完全犯罪などというものは、絵に描いた餅のようではないか」
 と言える。
 しかも、それを最初から分かっているからこそ、昔の人は発想はあったかも知れないが、小説として書かなかったのかも知れない。
「いや、本当に最初から、交換殺人というアイデアが出なかったのかも知れない」
 どちらにしても、犯行を犯すということは、それだけのリスクがあるということで、
「完全犯罪など、あり得るわけがない」
 ということになるのだ。
「やはり、犯罪というのは、心理的な部分が大きくかかわってくる」
ということの証拠となるのではないだろうか?
 そんな、
「交換殺人」
 であるが、
「完全犯罪」
 としては実に不十分であった。

                 大団円

 順平の頭の中を、
「長所と短所」
 という発想から見てきたわけだが、これらの関係というのは、結局、最初に考えた、長所と短所の考え方からの派生だったことで、
「紙一重」
 あるいは、
「裏返し」
 という関係に近しいものではないかと思うのだった。
 それにより、
「長所と短所」
 の関係というもの以外は、言い方は悪いが、
「毒にも薬にもならない」
 ということになるのではないだろうか?
 ということを考えると、
「必死に生きている人には、なくてはならないこと」
 という発想になり、今まで考えてきた流れとして、
「躁鬱症の関係」
 であったり、
「ウイルスと菌」
 の関係。
 ここでは、自殺菌という発想もあったではないか。
 さらには、
「SFの発想」
 としての、
「タイムパラドックス関係であったり、ロボット工学の関係」
 または、
「アリバイトリックと完全犯罪から、交換殺人を考えた諸刃の剣の問題」
 などと考えてきた。
 そこで、今度は、そんな完全犯罪となるかどうかわからないが、昔の犯罪における、これは一種の王道のトリックとして、昔から存在しているものとしての、
「密室トリック」
 というものがある。
 密室トリックというと、これこそ、
「絶対にありえないもの」
 ということで、そこで考えられるのが、まずは、
「機械的なトリック」
 というものだ。
 基本的に、密室殺人というのは、
作品名:矛盾による循環 作家名:森本晃次