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痛み分けの犯罪

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 と言えるのではないだろうか。
 そんなことを考え、警備員は、何もないというのを、肉眼で見える範囲で探してみたが、そもそも見つかるわけはないと思っていただけに、すぐに諦めたのだった。
 そうこうしているうちに、警察が到着した。
 痴漢的にちょうど、15分くらいであろうか。警察が到着し、警備員から事情を聴こうと思ったその時、救急車がやってきたのだ。
 きっと、救急車は、救急の用意があったことから、警察よりも少し時間が掛かったということと、警察署の方が、消防署よりも、かなり近いという立地条件も重なって、警察が早かったのも当たり前だと、警備員も感じた。
 特に、最初に死体を発見した警備員は、昔救急の仕事を少しだけしていたことがあったので、そのあたりの事情はよく分かるのだった。
 まずは、救急隊の人に、診てもらったが、少し悲しそうな表情で、首を振った。
「絶命しています」
 と静かにいうと、
「じゃあ、後はお任せします」
 ということで、救急隊は帰っていった。
 これは、実に当たり前のことであり、
「救急車に、死人を載せることはない」
 というころだからであった。
「死人を載せて、運んでいる間に、本当に救急の患者に間に合わなかったなどというと、誰が責任を取るか?」
 ということになるのであろう。
 それを思うと、救急車が、死人を載せないというのも分かるのだが、それ以上の理由としては、
「管轄が違う」
 ということである。
 言い方はきついが、絶命し、死体となってしまうと、それはもはや、
「人間ではなく、モノなのだ」
 ということになるのだ。
 警察も、万が一ということもあるとは思ったが、生死が曖昧だったことで、初動としては、刑事二人だけで、やってきていたのだ。
 そして、救急隊から、
「絶命されています」
 と聞かされた時、やっと電話で、鑑識を呼び寄せるということになったのだ。
 鑑識がやってくる前に、
「なぜ、死体発見ということになったのか?」
 といういきさつについて、聞いてみることになった。
 刑事としても、発見者が警備員であるということに、一瞬違和感があったが、すぐに、その違和感は消えていた。
 というのは、時間が時間、深夜の時間帯だということを分かっていたからだった。
 このあたりのオフィス街で、すでに、終電というものが、なくなりかけて、11時半ともなると、終電に間に合うことは不可能だという状態だったので、警備員が第一発見者でも、不思議ではなかったのだ。
 あれは、数年前にあった、
「世界的なパンデミック」
 というものに端を発していた。
 今はすでに、
「解決済み」
 と政府が勝手に言っているだけで、実際には、患者はいまだにかなりいるのだが、政府は、自分たちが私利私欲に塗れるために、金を出したくないということで、その犠牲を国民にしいて、
「自分の命は自分で守れ」
 と国民に自分たちの犠牲になれとばかりにいったという、
「実に政治は、世紀末」
 という様相を呈してきたのだった。
 しかも、腐っているのは、政府だけではなく、鉄道会社もひどいものだ。
 今までは、
「午前一時くらいまで、終電があったのに、今では、午後11時をすぎたあたりで、すでに終電はなくなっている」
 という、
「便乗ともいえるサービス停止活動」
 というものを、あからさまに、そして露骨に行っていたのだった。
 そんな状態において、当然ともいえるこの時間に、
「ビルの中で倒れている人を発見した」
 というのだから、警備員であるということは想像がついた。
 だが、まさか。
「警報が鳴ってから、飛んできた警備員」
 だとは思わなかった。
「そこに何らかの犯人による意図が働いていたということなのか?」
 ということを考えたは、警備員の話で、警報が鳴って、急いでやってきたということが、理屈としては、成り立っているかのようだった。
 だが、すべてが納得のいくものではなかったが、あとになって、管理会社に聴いた理湯を考えれば、無理もないことだったに違いない。
 犯人にとって、
「警備員が来るということは、織り込み済みだったのだろうか?」
 という疑問が警備員にあった。
 自動的に、第一発見者が自分たちえあることの必然性が、そこにあるということは明白だったのだ。
 そんなことを警備員が考えているということは、まだ、刑事には、分かるはずもなかったのだ。
「とにかく、鑑識が到着するまで、状況をお伺いしましょうか?」
 ということで、一連の流れを話したのだ。
 警察の方も、このビルの縦長さというものに、違和感があった。
 その違和感がどこから来るのかということは、すぐに分かるものではなかったが、警察と警備員が、事情聴取の中心だというのも、実におかしな話だといえるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、警備員は、一通りのことを刑事二人に話した。
 刑事は半分分かったような分からないようなというところであるが、その理由というのが、
「このビルは警備員が考えているよりも、もっと不可思議なことの多い構造になっている」
 ということだったのだ。

                 外人嫌悪

 死体が発見されたということで、警備員も、当然自分の会社に連絡を入れ、そこから、おそらく、ビルの管理会社の方に連絡があることだろう。さすがに、時間が、もうすぐ日付が変わろうとしている時間、都心部は、人通りも少なく、ヤジ梅もほとんどいなかった。
 そもそも、殺人事件が起こったとしても、日ごろから人の多いところなので、別に誰も気にするということもないだろう。
 それを思えば、警察の方としても、
「まず、目撃者は期待できないだろう」
 ということであった。
 ただ、一番近いとすれば、隣の、
「ほか弁屋」
 なのだろうから、聞き込みを行うことは、必然だったのだ。
 まずは、警備員からの話を聴くべきで、話を聴いているうちに、刑事の方としても、何やらおかしな感覚になってきた。
 聞き込み内容を一通り聞いて、最初に口を開いたのは、迫田刑事だった。
「今のお話で、一つ気になったのですが、あなたは、最初から、この非常口に向かった扉を開けようと思ったんですか?」
 ということであった。
 警備員も、最初はよくわからずに、
「どういうことですか?」
 と聞くと、
「いえね。非常口を開ける必要が、どこにあったのかと思ってですね」
 と迫田刑事がいう。
「ええ、あの時は何とも思わなかったんですが、そういえば、確か、ここの扉が半分相手いたと思うんです。エントランスの明かりはついていて、暖かい感じがしたのに、すーすー風が吹いてくる感じがしたので、見てみると、非常口のところが、黒くなっていて、そこから風が入ってきたんですね」
 という。
「そこがおかしいということなんですよ」
 と、迫田刑事がいうと、
「何がですか?」
 と、警備員は、まだ分からないという様子だった。
 迫田刑事の隣にいる田村刑事は、さすがに分かったみたいで、迫田刑事を見つめていた。
作品名:痛み分けの犯罪 作家名:森本晃次