小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

痛み分けの犯罪

INDEX|3ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

 賞味期限が短いのだから、急いで納入しないといけないということもあり、それぞれの問屋がたくさん納入しに来るというのも、難しいことだ。
 しかも、小売りによっては、
「デイリー配送センターのようなものを持っているだろうが、それこそ、メーカーによって、バラバラに納入されて、仕分け作業を行うとすれば、時間的な制約などもあり難しい」
 と言えるだろう。
 こういう場合に、効率的な問題以外にメリットを考えると、もちろん、
「物流センターの管理をしないでいい」
 という問題から、人件費、家賃の問題などと、問屋にその機能を持たせて、問屋で仕分けをして持ってきてもらう方が、経費、効率ともにありがたいといってもいいだろう。
 ただ、センターを作った場合というと、納入業者に、
「センターフィー」
 という、使用料のようなものを、
「数パーセント、仕入金額の中から払う」
 ということが、当たり前のようになっているのだ。
 特に、郊外型のスーパーが増えてくるようになると、郊外にその機能を持つようになり、問屋であったり、小売りが、郊外に、
「物流センター」
 というものを持つようになる。
 そうなると、今まで都心部の雑居ビルの中に、本部機能を持った、
「地域の本社」
 とでもいえばいいのか、
「支店」
 であったり、
「支社」
 というものの機能も、センターと別々に持っているのが、もったいないということにもなるだろう、

 ただ、問題は、
「今まで都心部の交通の便のいいところに事務所を構えていた人たちにとってはありがたいところに通勤をしていたのだが、事務所が移転するとなると、通えないという人も出てくるではないか?」
 という問題がある。
 それとは別に、
「物流拠点と、本部機能が別の場所にあるということになると、今度は、何かと不便なことになりかねない」
 ということで、
「都心部のままがいいのか?」
 あるいは、
「物流センターとの一元化」
 というのがいいのか、難しいところである。
 それは、扱う商品いよっても、業態によっても変わってくるというもので、そのあたりは、それぞれの会社の事情ということがあるだろう。
 それでも、主流派、やはり
「物流センターを、郊外に作ったのだから、本部機能を移すということにしないと、せっかくの物流センターを作った意味がない」
 と考えているところが多いであろう。
 そういう意味で、都心部の、
「家賃の高い事務所」
 というのは、どんどん減っていって、営業所として、小さなオフィスを借りるというところ、つまりは、
「在庫などのない、流通センターを必要としないところが、都市部の事務所を借りるの」
 ということになるのだろう。
 そういう意味でも、都会のオフィスというところは、
「こじんまりとした、狭いオフィス」
 というところが主流となり、昼間など、営業が飛び回っている。たとえば、保険会社であったり、金融関係のところが多かったりするのではないだろうか?
 そんな都心部の事務所の中に、少し縦長の、実に狭い事務所を抱えるようなオフィスビルがあった。一階には、
「ほか弁屋」
 があり、その隣が小さな事務所に繋がるエントランスになっていた。奥の方にエレベータの入り口があり、そお手前と、月当たりには扉があったのだ。
 突き当りの扉から向こうは、ボイラーのようなものがあり、そこから、非常階段が続いていた。そして、手前の方の扉には、
「人が出入りします。荷物などは前に置かないで」
 という貼り紙があるので、
「倉庫か何かかな?」
 ということであった。
 さらに、今度はエレベーターの前にも何か扉のようなものがある。
 実に変な構造をした1階のエントランスであったが、これが、実はとんでもなく歪であることから、今度の事件が起こったといってもいいかも知れない。
 そんな歪なビルを、里見ビルと言った。
 入り口の扉には、カギがかかっているが、入ってすぐのところに、警備の機会があった。
 液晶のモニターには、階を五メス数字と、下には、
「警備」
「解除」
 などとう-いうボタンがある。
 階の数字を押して、帰る時に警備を掛けるのであれば、警備ボタンを押し、セキュリティカードをかざすことで、警備が掛かるという仕掛けになっていた。そして、すべての階の警備が完了してしまうと、エントランスから数十秒で出なければ、警報が警備会社に行くという仕掛けになっていた。
 しいていえば、
「ごく一派的な警備体制だ」
 ということになるのだった。
 そんな歪といってもいいかと思うマンションは、地上6階、地下一階という構造であった。
 地階には、歯科医が入っていて、話を聴くと、
「その場所には、6年くらいはいる」
 ということであった。
 ビルに入っている事務所の人たちの中には、その歯医者さんにお世話になっている人も数人はいるだろう。その歯医者の診察日と診察時間は、さすが、都心部のビルクリニックという感じのところであった。
「休診日は、水曜日と、祝日。土日は、午前中のみの診療」
 ということであった。
 土日も診療をしているということで、このビル以外の患者も当然多かっただろう。
 このビルが縦長になっているということもあり、ビルは、
「ワンフロア、ワンオフィス」
 というのが、基本だった。
 だから、各階の事務所の入り口は一つしかなく、エレベーターを降りてからというのは、左側にトイレ(男女専用)があり、右側には、非常階段に繋がる扉がある。そして、エレベータの正面には、事務所の入り口があるというのが、各々の階のエントランスになっていた。
 各階は、エントランスというには、実に寂しいほどの広さで、ちょっとしたものを置いただけで、すぐに、いっぱいになるほどの狭さであった。
 特に、傘立てであったり、消毒液や、入室ノートなどを置いた机を設けるだけで、本当に狭くなるほどであった。一気に、半分の広さというくらいに思えるほどであった。
 ただ、
「ワンフロア、ワンオフィス」
 というのは、ある意味、
「都合がいい」
 といってもいいかも知れない。
 つまり、
「自分の階は、自分の事務所だけで、責任を持てばいい」
 ということだからである。
 他に事務所があれば、そこが警備を掛け忘れてしまうと、
「最後にそのフロアを出る会社が警備を掛けようとしても掛けられない」
 という事態に陥るからだ。
 そういう時は、しょうがないから、警備を掛けずに帰るしかないのだろうが、そうなると、警備の意味がまったくないということを示しているのだ。
 一つの階に一つの事務所であれば、問題は、
「ビルからの最終退出者」
 ということになり、
「最終警備を掛けられない」
 ということだ。
 そうなった時は警備を掛けずに、扉の鍵だけを掛けて帰るという、警備が中途半端な状態になるのだった。
 そんな、
「歪な里見ビル」
 において、これまた、不可思議ともいえる事件が発生したのは、ある日の金曜日のことだった。
 里見ビルの警備を請け負っている、
「MK警備会社」
作品名:痛み分けの犯罪 作家名:森本晃次