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痛み分けの犯罪

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「トイレを作るなどという、抜本的な計画を打ち出せばよかった」
 ということである。
 二階にある教室が、
「トイレを貸してくれる」
 ということでの、安直な道を選んだため、教室が退居した後のことまで考えていなかったという、
「あまりにも策のなさ」
 ということが、さらに、話をややこしくさせた。
 そこへもってきて、
「やっとトイレを作らなければいけない」
 ということになった時、他のテナントとの差を、エントランスで取っていたため、
「エントランスにトイレを作らなければいけない」
 となった時、大いなる問題となって、戻ってきたのだ。
 いわゆる、
「ブーメラン」
 とでもいえばいいのか、
「因果応報」
 ということである。
 トイレを作ったはいいが、それがエントランスであるがゆえ、他の会社が警備を掛けたとしても、他の会社は、ほとんどのところが、夕方6時までの営業で、たまに残業するところがあるくらいで、それ以外とすれば、地下の歯医者であるが、ここも、週の半分だけ、夜の9時までやっているわけで、一曜日などは、午前だけで、昼からは警備が掛かった状態ということになる、
 それを考えれば、
「新しくトイレを作ったことで、どれほど歪な警備体制になったか?」
 ということである。
「非常口から、トイレまでは警備を掛けられず、それ以外のところは、警備が掛かっている」
 ということ。さらには、
「警備が掛かっていても、弁当屋は、23時まで営業しているので、非常口は閉められない」
 ということが問題になる。
 つまり、
「非常口側には、まったく警備も掛かっておらず、しかも、扉も開けっ放しということである」
 それを考えると、一番の解決方法として、
「すべての扉は施錠し、エントランスの玄関の警備まで、弁当屋にやらせる」
 という、
「一階の店舗だから」
 という差別的な発想を最初から撤廃していれば、問題は起こらなかったわけだし、
「ひょっとすると、殺人事件だって起きなかったかも知れない」
 と言えるのではないだろうか?
 後からでは何とでもいえることだが、管理会社としては、それくらいのことを分かっていて当たり前だと思うのは、厳しいのだろうか?

                 大団円

 この事件における、被害者に対しての動機が分からなかった。
 実際には、
「犯人が誰であるか?」
 ということも、
「動かぬ証拠だ」
 と思っていた防犯カメラにも写っていない。
 これこそ、本来であれば、
「一番キチンとしておかなければならない場所である、非常口をおろそかにした」
 ということの報いであろう。
 そもそも、後からトイレを作るなどということさえしなければ、あの場所は、本当は一番厳重な場所だったのだ。
 ただ、一つ言えることとして、あの場所は、
「閉め切っていてはいけない場所」
 という問題があったのだ。
 たぶん、最初に設計した時は、あの場所に防犯カメラも設置しなければいけなかったのだろう、
 最初にあの非常口を作った時、ビルの設計上、いわゆる、
「消防法によって、あの場所を閉め切ってしまうと、もし、火事などが発生した時、逃げられない」
 ということで、あの場所は少なくとも、誰かがいる間は閉め切ってはいけないということになるのだった。
 だから、あの非常口も、警備の対象にし、施錠されていなければ、警備が掛からないという風にしておかなければいけなかったはずなのに、トイレを中に作り、警備の一部を、弁当屋のために、外さなければならなくなった時、本来であれば、問題になったはずなのだ。
 それがならなかったということは、管理会社のずさんさが、ここでも出てきた。
「いや、最初からまったくのザルだった」
 ということで、この情けなさはひどいということを通り越しているのかも知れない。
 そんなことを考えていると、
「犯人は、ここに最初から防犯カメラが設置していないということを分かっていた」
 ということにならないだろうか?
 それを考えると、
「意外と犯人は、このビルの構造を熟知していて、しかも、弁当屋や、他のテナントの関係から、何とも言えないほどのひどく、ずさんなビルを作った会社の人間ではないのだろうか?」
 とも考えられる。
 ただ、ここまで考えてくると、あまりにもずさんなことがここまで通用するということになると、そもそもこのビル自体が、
「何かの別の目的をもって建てられたのではないだろうか?」
 というようなことも考えられなくもない。
「まるで、何かの試験的な建物?」
 ということであろうか?
 そのためには、管理会社が、
「ただ、ずさんだった」
 ということをあらゆるところで示しておいて、すべてを管理会社に押し付けるようにして犯行を行う。
 というようなことも考えられないだろうか?
 この街自体が、
「何かの組織が暗躍している」
 という怪しい街なのだ。
 それをいかに考えるかということが、大きな問題となるのだろう。
 組織の暗躍と、それを裏付けるかのような殺人事件であるが、そこに、動機であったり、犯人像がまったく浮かび上がってこない。つまり、
「被害者は何のために殺されたのか?」
 そもそも、
「殺されなければいけないほどの価値がある人間なのだろうか?」
 ということが問題だったのだ。
 そんなことをしていると、事件が起こって約一週間が経った頃だった。事件はある意味暗礁に乗り上げていた、少しだけ先に進むかと思っていた時、また少しの後戻り、昔の流行歌の中に、
「三歩進んで二歩下がる」
 という歌詞があったが、まさにその通りだったのだ。
 そんな状態なので、捜査は難航し、暗礁に乗り上げるのも、無理もないことだった。
 捜査員たちの頭の中に、少しずつ、
「お宮入り」
 という言葉が浮かんでくるのを隠すことはできなかった。
 最近の警察は、検挙率は悪いは、凶悪な事件が出てきていることで、その威厳や地位は次第に落ちてきていた。今回の事件を解決できなければ、被害者が混血とはいえ、外人が絡んでいるということから、
「またしても、警察は事件を解決できなかった」
 と言われかねないのだ、
 例の外人に絡む事件を専門に扱っている部署は、今回の犯罪を捜査するということはない。
 彼らはあくまでも、潜入捜査のようなものを必要とした場合の、いわゆる、
「組織相手専用」
 の部隊だった。
 だから、今回のような普通の殺人事件とは畑違いであり、専門ではないということで、
「出番なし」
 だったのだ。
 そういう意味で、門倉警部を中心とした桜井チームの事件解決がどうしても必須だったということだ。
 それが、まだ事件が一週間しか経っていないというのに、すでに、暗雲が立ち込めているというのは、一体どういうことだというのだろうか?
 そんなある日のことである、急に事件が急転直下の様相を呈してきた。思いもよらないところから、思いもよらない形であったのだ。
 というのも、犯人を逮捕するどころか、警察としては、犯人像すら分かっていない。
「どうして被害者が殺されなければいけなかったのか?」
「被害者をあの現状で、いかにして殺したか?」
作品名:痛み分けの犯罪 作家名:森本晃次