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痛み分けの犯罪

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 というと、
「母親が日本人だということなので、ハーフということになりますね」
 ともう一人の店員がそういったのだ。
 ハーフといっても、外人は外人。特に、このあたりでは、どうしても、特に警察組織の問題ともなると、かなり、敏感になってくるということで、問題としては、デリケートだといえるだろう、
 そんなことを考えていると、
「この事件において、外人問題が絡んでくるというのは、実に厄介なことになるのではないだろうか?」
 と、密かに、迫田刑事は考えるのであった。
 その日の内容を迫田刑事と、田村刑事は、それぞれいろいろ感じるところを持ちながら、初動捜査としての聞き込みなどが終わり、署に戻ってきた。
 さすがに殺人事件ということで、捜査本部が置かれ、本部長に、門倉警部、そして、副本部長ということで、桜井警部補という体制で、捜査が行われることになった。
 迫田刑事も、桜井警部補の刑事時代から、いろいろと鍛えられたので、桜井刑事が、副本部長ということで、
「相手にとって、不足なし」
 というところであろうか。
 捜査会議の初回が行われたが、そこでは、ほとんどが、迫田刑事と、田村刑事の話が主だった。
 なかなか、複雑なビルの構造上の問題や、それを運用する側の事情などもあり、結構ややこしい内容のものになっているのであったが、話を聴いている人たちが、二人の説明で、どこまで分かったのかということは、結構難しいことであった。
「ということは、とにかく、いろいろ問題があったり、疑問点があるということが、今回の事件の特徴であり、さらに、ハーフとはいえ、被害者が外人というもの、微妙なところだね」
 と、本部長の門倉警部がそういうと、捜査員のほとんどが、最後の方の、
「被害者が外人」
 というあたりで、苦み走った顔になった。
 きっと心の中で、
「なんだよ。俺たちは、また外人のために働かなきゃいけないのか?」
 ということであった。
 というのは、実は、最近では、
「外人のための捜査」
 というのは、決して珍しいことではなかった。
 特に、凶悪犯になればなるほど、日本人のように理性があったりするわけではないので、リアルな凶悪犯が、限界を知ることなく、いくらでも、はっちゃけるという、そんな状態になっているのだった。

                 動かぬ証拠

「それにしても、ビルの構造が問題になっているというのは、厄介なことだね」
 と、門倉警部がいうと、
「いいえ、そうではなく、ビルに入っているそれぞれの会社の事情であったり、元々は、エントランスに関係のなかった非常口を使って、そこから帰ろうなどとする弁当屋の、頭の回らない外人どものために、時々呼びだされる警備員も、溜まったものではないといっているんですよ」
 と、桜井警部補が、そう補足したのだった。
「そうか、どうやら、このビルは、リアルなところで、厄介なことがあるので関係というものが、ややこしいのか、面倒臭いのか、あまり、いい感じではないということなのでしょうね:
 と、現場の代表ともいう、迫田警部が、そういうのだ。
「話だけを聴いていると、そもそも、弁当屋が、玄関のカギを持っていて、セキュリティに絡んでいれば、なんてことなかったのではないだろうか?」
 その言葉を聞いて、きっと誰もが思っているだろうが、言葉にならなかったことを、
「自分から暴いてくれた」
 という感じに聞こえたことで、事件の核心部分も分かってくるのではないかと、楽天的に考えるのだった。
「確かにその通りなんですよね。このビルにおいて、私は、あまり管理人の人と話をしたという感じではなかったので、管理会社の方がどのように考えているかということが分からなかったんですよ。聞き込みをしている中で、管理会社が、かなりいい加減だということを聞きこんだんですよ」
 と迫田刑事が言った。
「というのは?」
 もちろん、弁当屋がかなり前からここの一階店舗として運営をしていたということもあって、最初からトイレを作っていなかったというのも、相当な手抜きというか、
「ビル管理会社としては、致命的なほどの落ち度」
 だといえるだろう。
 ここのビルでは、それだけいい加減なところがある。
 本当であれば、最初に発覚した時、トイレについて、もう少し突っ込んだことをしていれば、後から問題が再燃したりはしなかったことだろう。
 そのあたりを、桜井警部補に話をしたのだが、
「まず、ほか弁屋が、最初にできた時、トイレがないことですぐに問題になったはずなのですよ。当然、立ち仕事で、しかも、新鮮さを大切にするために、ある程度低温にする必要がある場所なので、トイレが近くなるのは、他の場所よりも、当然頻繁だったはずですからね」
 と、迫田刑事がいうと、
「それは、当然のことだと思う、普通なら、建築上、構造上の問題だということで、やり方を根本から考えると思う」
 という桜井刑事の意見は、
「10人が10人、答えることだろう」
 と言えるに違いない。
「それで、管理会社の方として考えたのが、上の階が、何かの教室を営んでいたということなんですが、その階のトイレを使わせてもらうということだったんですよ。何か英会話教室のようなところで、生徒数も、時間単位では、数人ほどしかいないというこじんまりとしたものだったということで、トイレを借りるにはちょうどよかったのだということを聞きました」
 と、迫田刑事はいう。
「何か、おかしいよね?」
 と、桜井警部補がいうと、
「確かにその通りなんですよ。と、いうのも、話を聴いただけで、その状況を頭に思い浮かべると、何が悪いのか? ということになるのだけど、それはあくまでも、感覚的なものなんですよね。明らかにおかしいとは思うんだけど、どこがおかしいのかと突っ込まれると、答えに窮するという感覚でしょうか?」
 と、迫田刑事は言った。
「つまりは、そういう曖昧な感覚に陥らせるというのが、ここの管理会社の特徴だというのか、曖昧にすることで、意識的になのか、無意識なのか、まわりを混乱させたり、煙に巻くというような結論になることで、結局、何も解決していない。それだけ、いい加減だということになるんじゃないかな?」
 と、桜井警部補が言った。
 それを聞いて、迫田刑事も、何かしらの思い入れがあり、自分の中で、租借できていない部分がモヤモヤしてしまった思いを作っていることを、理論立てて考えられるような気がしたのだ。
「その時は、とりあえずとはいえ、何とかなっていたらしいんですよね。そのうちに、その教室が退居していくと、しばらくの入居のない時期には、ほか弁屋がトイレを独占しているようだったんですよ」
 と迫田刑事は言った。
 それを聞いていて、頭をかしげながら聴いていた桜井警部補は、何もそれに対してリアクションをしなかったのは、
「この段階では、何を言っても同じだ」
 と思ったからではないかと、迫田刑事は解釈していた。
 そのおかげで、迫田刑事は、
「話を進められる」
 と思い、話を先に進めたのだ。
作品名:痛み分けの犯罪 作家名:森本晃次