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悪党選手権

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 その男は胸を抉られているようだった。見た目の年齢は30歳から40歳くらいではないかということであったが、後の詳しいことは、鑑識で調べてもらうしかなかった。
 実際の身元を隠そうという意思はないようで、その証拠に衣類の中から財布などが見つかり、死体の身元はすぐに割れた。
 名前は、谷口陽介、30歳、免許証から住所も分かり、実際の身元の確認が行われた。
 一人暮らしのようで、実際に住んでいるアパートに行ってみると、確かに本人はいなかった。
 近所の人に話を聴いたが、ほとんど近所づきあいなどなかったようだ。
 まぁ、もっとも昔から、マンションなどで、
「隣は誰が住んでいるかなど、知る由もない」
 などということが普通だったのだ。
 実際に聴いてみると、
「さあ、いつからいなかったのかって聞かれても、実際にどんな人がいたのかなんて気づくわけもないし、ただ、ほとんど見たことがなかったというのが、本当のところだといっていいんですね」
 といっていた。
「お仕事は何をしている人か分かりますか?」
 と聞かれ、
「さあね、本当に仕事してたのかどうかも怪しいものですよ」
 というではないか?
 なるほど、30歳の男性が、働いていたとして住むには、少しみすぼらしいような気がした。
 実際に貯金とかがあったようにも見えないし、貯金があるとすれば、結婚でも考えていたのかとも思えたので、そこから交友関係を当たることができるかと思ったが、それも難しかった。
 鑑識の話では、
「死後、3日くらい経っていると思います。ハッキリとした死亡推定時刻を検出することは無理で、大体3日前というくらいですか?」
 ということであった、
「ということは、死亡推定時刻から、犯人が分かったとして、アリバイを確認するというのは難しいということになるのだろうか?」
 と聞くと、
「そういうことになるでしょうね?」
 と言われた。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
 と一人の若い刑事が言ったが、
「とりあえず、状況証拠を掴んで、容疑者の割り出しを図る。そんなのは、いつもやっていることだろう」
 と、若い刑事に、迫田刑事が言ったのだ。
「どうして、最近の若い連中は、目の前のことにだけしかこだわらないんだ」
 と迫田刑事は思ったが、
「逆に一つのことにこだわりを持つことで、我々のような、ある程度場数を踏んだ刑事には思いも及ばなかったことが出てくる」
 ということを考えると、そんな彼らを、
「単純にバカにすることもできない」
 と思うのだった。
 とりあえず、身元が分かっただけでも、大きなことだ。そして、もう一つ言えるのは、
「犯人にとって、身元が割れることは、どうでもいいことで、むしろ、バレることで、犯人にとって都合のいいことだったのかも知れない」
 と思うくらいだった。
 ただ、死体発見場所は、明らかに隠そうと下ふしが伺える。
「なぜ、そんな状況判断に困るようなことをしたのか?」
 犯人が、捜査を混乱させようとして、わざとしたのだとすると、その心はどこにあるというのか、迫田刑事は、今のところの状況だけでは、何とも言えなかった。
「とにかく、今は数多くの情報を仕入れることだ。現場の状況、被害者の身辺、目撃者の捜査。もろもろ頼む」
 と捜査本部から振り分けられた刑事が、それぞれに捜査を行うことにした。
 やはり身元が分かっているだけに、被害者の身辺に関しては、ある程度調べは早くいつぃていくようだった。
 そして、身元が分かったこともあって、住まいの近くで聞き込みをすると、これは今に始まったことではないが、やはり、一人暮らしの人間が注目されることはないようだ。どうしても、近所づきあいというと、
「子供の学校が同じ」
 であったり、
「例えば、旦那の会社の寮だ」
 などということでもなければ、なかなかないだろう。
 同年代の母親であっても、同年代の子供であっても、その実際は、どちらか片方では難しいくらいのものがあるかも知れない。
 なぜなら、いわゆる、
「ママ友」
 と言われるものは、ある程度、組織化されてしまっていて、その組織に入りきらなければ、話がうまくつながることはない。
 下手をすると、自分が、
「ハブられてしまう」
 ということを感じると、子供がいても、
「公園デビューに失敗した」
 ということになるだろう。
「相手が受け入れてくれるところでなければ馴染めない」
 という人であれば、正直難しいといえるだろう。
 そういうことで、
「谷口陽介という男は、近所づきあいから何かを得られるということはなさそうだ」
 ということで、捜査としては、
「会社関係」
 ということになったのだった。
 谷口という男は、以前は、スーパーに勤めていたということであったが、今は無職ということであった。
 もちろん、職探しをしているようだが、なかなかこのご時世ということもあるのか、なかなか職が決まらないようだった。
 年齢は三十歳ということで、地元では、まぁまぁ店舗を持っているスーパーに入社したのが、2年前、それまでの1年間は、アルバイトのようなことをしていたのだが、
「一年間、真面目に勤め上げたということで、社員転用ということになった」
 ということであった。
 最初の半年ほどは、店長候補、あるいはスタッフ候補ということで、研修を受けながらも、同時に、その道の専門分野のエキスパートを目指すという方針に舵を取るという会社体制だったのである。
 社会という中において、これらの社員教育をしっかりしているとことがどれだけあるか、刑事にはピンとこないところであったが、
「中は分からにあが、表から見ている限りでは、立派な考え」
 と言えるのではないだろうか?
 実際に、被害者の谷口は、そこから、
「店長候補」
 ということになり、配属が殺害現場から近い、大型商業施設近くになったのだった。
 これも刑事から見れば、欲わからないが、
「大型操業スーパーがあることで、売り上げをあちらに取られ、売り上げが、なかなか上がらない」
 と見るべきなのか、それとも、
「大型ショッピングデンターがあるおかげで、人通りが多いということで、こちらも、そのおこぼれがいただけると見るべきものなのか?」
 ということであった、
 ハッキリとは分からないということであったが、
「場所が数軒違っただけで、まったく想像もつかないくらいに、売り上げが上下する」
 ということが、可能性としては、十分のありえる。
 そんな話を聴いたことがあったのだが、
「どこまで信じていいものか?」
 ということになるであろう。
 それは、他の事件で、スーパー関係の事件を調べた人から、世間話として聞いた話だったのだ。
 Kが丘店というところの勤務だったのだが、その店に行くと、昼間の活気は、思ったよりもあった。
 店は広々としていて、それは、店の広さもさることながら、店長のセンスもうかがえるのではないかと思うのは、素人目に見ても、そう見えるのだから、お客が増えるというのも分からないでもないといえるだろう。
 店の店長は、今は羽黒店長という名前で、40歳だという、実際には他の店で店長をしていたが、こちらに回されたということで、
作品名:悪党選手権 作家名:森本晃次