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悪党選手権

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「私は、これらの一連の話を総合して考えると、結論は一つだと思っているんですよ。それは、脅迫のようなものじゃないかと思うんです。脅迫することによって、相手に対して、圧倒的なマウントをとることができ、まるで奴隷のような立場を取れるし、何よりも、金銭的に潤うことができる。これほど、楽にお金が入ったり、人を操るというような快感を得ることができることはないはずです」
 と、パートさんは言った。
 なるほど、さすが、鋭い目で見ている。逆にこれだけまわりから見られているというのは、今の世の中のように、コンプライアンスというものが、カチットしているかということから来る、
「反動のようなものだ」
 といってもいいのではないだろうか?
 それを考えると、世の中というものは、何を中心に回っているのか、その場合によって、さまざまな可能性や、考え方ができるものだといえるのではないだろうか?
 ただ、この考え方は、ある意味、辻褄は合っているが、
「本当に、精神的な辻褄が合っているのだろうか?」
 とも思えなくもない。
 というのも、
「人を脅迫するということは、ある意味リスクがあると考えられる。というのも、脅迫された方は、確かにその材料のせいで、完全に相手のいいなりにならなければいけないわけだが、そこにお金が絡んでくると、脅迫を受けている側は、どう感じるだろうか?」
 ということであった。
「一生、骨までしゃぶられる」
 というような、
「最悪のケース」
 を考えるのではないだろうか?
「これは、殺意というものに、直接結びついてくる」
 ということを、刑事の立場からは、容易に感じるのであるが、果たして、脅迫する側は考えているかということである。
 これも、賛否両論と言えばいいのか、両極端な考えになるというもので、
「ネガティブに考えることしかできない人は、絶えず不安を抱えながらも、ここまでくると辞めるわけにはいかないという考えが芽生えてくる」
 という考えと、逆に、
「うまくいっていることで、ここまでうまくいけば、感覚がマヒしてしまって、不安すら、なくなっている」
 という考えもあるだろう。
 そのあたりを、パートさんに聴いてみることにした。
「脅迫というと、いろいろ考えられますが、そんなに、本人にとって、危険のないことだったんですか?」
 ということを、直接的な表現で聞いてみた。
「そうですね、私個人ではそこまでは分かりませんね。こういう時こそ、パートさんの中での井戸端会議というのは、結構話になるもので、三人寄れば文殊の知恵ともいうもので、結構いいアイデアというか、考えが膨らんでくると思えるですよね」
 というのだった。
 ということは、
「彼女たちの間で、井戸端会議として、店長のウワサはあまりしていなかったということなのか? もし、そうであれば、一種のタブーということを言われているのではないだろうか?」
 と思えてならないということだった。
 だから、
「これ以上は、パートさんに聴いて分かるものだろうか?」
 と考えたのだが、
「奥さんたちが、ウワサを自分だけの胸に収めて、我慢できるものだろうか?」
 ということも考えられた。
 ということは、
「おばさんたちの中で、それなりの結論めいたものを、それぞれに持っていて。その内容に違いらしきものは、ほとんどない。つまりは、暗黙の了解的なものが、潜んでいるのではないだろうか?」
 ということではないかと、坂崎刑事は感じたのだ。
 坂崎刑事というのは、まだ若くて、いろいろな迷走をすることがあるが、それでも、迫田刑事などは、期待している。
 というのも、時々、
「彼は、いきなり核心に近いようなことを思いついて、皆をビックリさせることがある。ある意味、一番、事件の解決に期待できる人間なのかも知れない」
 と、考えるほどであった。
 坂崎刑事は、
「理論を組み立てて、推理をするのが好き」
 であった。
 しかし、それには、
「今のところ、致命的に経験が少ない」
 というのも、
「坂崎刑事は、最近まで交番勤務の若手であり、ここ半年くらいで刑事課に赴任してきた人だった」
 ということだ。
 だから、誰かとペアを組んで捜査をするのが当たり前の警察で、まだ中心になったことはなく、相手のペア役ということで、今は経験値を育んでいるというのが、坂崎刑事の立場だったのだ。
 坂崎刑事は、交番勤務の間でも、実は、刑事のサポート役のようなことをして、事件を解決に導いたということもあった。
 だからといって、出しゃばったようなことは決してしない。それをやってしまうと、
「捜査妨害」
 ということになり、迷惑を掛けることで、自分の立場が悪くなることも分かっているからだ。
 特に
「警察というところが、縦割り社会だ」
 ということを、前から知っていたが、交番勤務の際に、実際、嫌というほどに味わってくれば、なかなか、前に出ることも躊躇してしまうのだ。
 特に、昔から、刑事ドラマも結構見てきたことで、
「出しゃばった刑事は、基本嫌われる」
 ということも分かっていた。
 しかも、坂崎刑事というのが、
「勧善懲悪」
 な性格であるということからも分かることで、
「そもそも、警察に入ってくる人は、大なり小なり、勧善懲悪な性格の持ち主だ」
 と言えるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「凶悪犯人というのも許せないけど、誰かを脅迫するということ、さらに、それによって、脅迫された人が殺意を持つことが、どれほど理不尽な捜査をしなければいけないということになるのか?」
 ということを考えると、
「やってられない」
 と思うこともあるのだった。
 坂崎刑事は、
「脅迫などということは、これほど汚くて、卑怯なことはない」
 と思っている。
 何かの事件が起こるというのは、
「やむにやまれぬ動機」
 というものがあって、それに基づいて行われるのが、犯罪だと思っている。
 脅迫というもの自体が犯罪なわけで、この犯罪には、
「やむにやまれぬ」
 という要素は考えられない。
 というのは、
「脅迫するということは、自分の私利私欲のために行うことで、たまたま握った人の弱みに対して、自分が優位性を保つことで、それを、付け込むという言い方をすると、これ以上のひどいことはないわけであり、付け込まれた方だけが、大いに不安に感じることで、それがそのまま優位性となる」
 と言えるのではないだろうか?
 それを考えると、
「脅迫ほど、陰湿で、卑怯な犯罪はない」
 と、坂崎刑事は考えていたのだ。
 今までの捜査の中で、
「脅迫事件」
 というのもあった。
 脅迫が高じ、お金がなくなった脅迫を受けていた人が、強盗事件を起こしたなどということだって、毎日のように、どこかで起こっているといってもいいだろう。
 いや、実際にやらないだけで、衝動に駆られるという人は少なくないだろう。
 さすがに、そこまでの犯罪を犯す人は少ないだろうが、それをやってしまうと、
「人生終わりだ」
 と思うからで、逆にそこまでやらないといけないほどに、今の時点でも、すでに、
「人生が終わっている」
 と思っている人もいるということになるのである、
作品名:悪党選手権 作家名:森本晃次