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悪党選手権

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 という感覚になっているように思えたが、刑事が、人間関係に深入りしてきたことで、てっきり、訝しがるかと思ったが、逆に、興味津々という感じで、前のめりの様子で聞きに来ていたのであった。
「あの奥さん、どこか変わっているんですよ」
 と、いきなり、毒を始めた。
 普通、毒を吐き始めたといっても、いきなり、毒を吐くことからするとは思えなかった。ただ、
「この組長だったら、ありえるか?」
 と思ったのは、最初に、露骨な態度に見えたからで、ある意味、
「分かりやすい人だ」
 と言えるということが分かっていたからだろう。
「奥さんが変わっているというのは?」
 と聞くと、
「皆が一緒に何かを考えようとするときも、いつも端の方にいて、自分はまったく関係ないという顔をしているんですが、たまに、いきなり前のめりになって自分が中心でないと我慢できないというような態度に出ることがあるんですよ。それを見ていると、実に興味深く感じられて、いつも、何かを必死に隠そうとしているんじゃないかと思えてくるんですよね」
 という、
「組長さんは、それが何だか分かりますか?」
 と聞かれた組長は、
「いいえ、見当もつきません」
 と言いながらも、ほくそえんでいるように見えるので、
「本当に、見当がつかないのか、ウソにもほどがある」
 と言いたげであった。
 ただ、組長にもすべてが分かるわけではない。
 どこかが分かっていて、それが、そのうちに繋がってきそうなことが、楽しくて仕方がないのだろう。
 しかし、今回、彼女が死んだことで、それが叶わなくなり、そのことが寂しくなったのではないだろうか?
 だが、今度はそれを警察がつきとめようとしている。
 それを思うと、
「私が、本当は突き止めたかったけど、それも仕方がない」
 とばかりに、警察が謎を解き明かすという立場を譲ることになったが、
「警察なら、自分たちにない権力を持っていることで、解明は、時間の問題なのだろう」
 と思うのだった。
 そんな中において、
「あの奥さんですね。どうも、不倫のウワサがあったんですよ」
 というではないか。
 ただ、警察であれば、そんな話が事件の中であることくらいは、普通にあることなのでビックリはしないが、さらにその後の言葉に、さらにビックリさせられたのだが、
「それにですね、盗癖のくせもあったんですよ」
 というではないか?
「盗癖?」
 と聞くと、
「ええ、万引きの常習ではないか? ということを聞いたことがあったんですが、もちろん、デマだということは分かりました。ただ、一度、あの奥さんが、お店の店長に怒られているのを見たことがあったという人がいたので、まんざら嘘ではないのではないか? と思うようになったんです」
 と組長はいう。
「万引きに不倫? どこかで聞いた話だ」
 と、坂崎刑事は思ったのだ。
 坂崎刑事は、当初、谷口店長の殺害事件の方にも絡んでいた。しかし、今回ひき逃げ事件が発生したことで、こちらの捜査に回されたのだ。
 といっても、坂崎刑事が、無能だからというわけではない。
「ひき逃げ事件の方は、坂崎君に任せよう」
 ということだったのだ。
 谷口店長が殺されてから、三日が立っていたが、さすがに三日では、まだまだ、殺人事件の方は、何も繋がっていない状態だった。
「まさか、今回のひき逃げ事件が、その前の殺人事件に、絡んでくるとは思いもしなかった」
 というのが、坂崎刑事の考えであったが、そのことを、
「外された」
 と心の隅で思っていて、少し腐りかけていた坂崎刑事だったが、
「ひょっとすれば、出し抜けるかも知れない」
 と思っただけで。完全に舞い上がったとことがあった。
 本当は黙っているのは、刑事としては、してはいけないことだが、
「外されたんだから、あとで何か言われても、殺人事件のあらましを、何も聞いていなかったんだから、分からなかった」
 といって、ごまかせると思ったのだ。
 しかも、一緒に捜査している刑事は誰も、向こうの殺人事件の内容を知る由もない、そういう意味で、
「出し抜ける」
 と思ったのだった。
 坂崎刑事は、自分の中でいろいろな推理を立ててみた。
 それも、今までは、
「ピースが一枚足りない」
 と思っていたが、その一枚が見つかり、しかも、
「分かっているのは、自分だけだ」
 と思うと、他の刑事を出し抜けた気がしたのだ。
 だから、推理の方も自分ではさえわたっていると思えてくるのだが、それは、自惚れというものであろうか。
 今度の事件において、一番の問題は、
「動機だ」
 と思った。
 この事件の動機は、今見えているところでは、ハッキリとしないではないか。
 殺された元店長には、殺される動機が見つからない。
 そこで、身辺調査をしてみると、
「以前、店長を辞職した理由に、不倫をしたという理由があり、さらに、その不倫相手というのが、万引き犯だ」
 ということだったのだが、どうしても、ウワサの息を出ない。
「そんな情報だけで、捜査を続けていても、必ず、どこかで引っかかる」
 と言われていたが、まさにその通りであった。
 一緒に捜査をしたのは、今回のこの事件で飛ばされることになる前の二日間だったので、
「その間には、まったく捜査らしいものが進展しなかった」
 ということであった。
 しかし、
「刑事捜査というのは、あるきっかけがあれば、一気に捜査は進むもので、そのことを、坂崎刑事は分かっているのだろうか?」
 というものであった。
「坂崎刑事というのが、もう少し頭が柔軟であったら、あることに気づいたのかも知れない」
 と言えるだろう。
 何といっても、この事件での強みは、
「二つの事件を知っていることだ」
 と言えるだろう。
 まさか犯人も、この二つの事件を両方知っている刑事がいるなど、思ってもみないだろう。
 犯人にとっても、
「警察が、この二つの事件を同時に見ることができると、意外と簡単に事件を解決できるかも知れない
 と思っていることだろう。
 とりあえず、坂崎刑事は、この二つの事件のつながりを一切話すつもりはなかった。
ただ、どちらかの事件を追いかけているうちに、その関係性に気づくのも、日本の警察であれば、
「それくらいのことは、当たり前だ」
 と思うことだろう。

                 脅迫

 これは、殺された羽黒店長が勤めていたスーパーで聞きこんだ話だったが、
「あの人、ある時くらいか、やたら羽振りがよくなったんですよ。それまでは、お金を使うなどあの人には、倹約というよりも、ケチと言った方がよかったかも知れないです。お金があって使わないのは、ケチも倹約も同じなんですが、どうも、お金を使うのが、怖かったようなんですよね。そういう意味で、ケチなんだと思っていました」
 と、その人は言った。
 その人は社員の中でも年下であったが、店ではベテランだった。
 別に、羽黒が追い越したわけではない。
「別に出世なんかしなくてもいいんだ」
 と思っていて、最初はパートか何かではないか? と思ったのだが、実際には、下っ端の正社員だということであった。
 出世をしようと思えばできるのだろうが、彼には、
作品名:悪党選手権 作家名:森本晃次