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悪党選手権

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 そもそも、主婦がその時間にそんなところを歩いているというのも怪しいもので、最初はその奥さんが何者なのか分からなかった。
 だが、いろいろ調べて見ると、この場所で殺された谷口元店長とかかわりがあるというのを、谷口元店長を調べていて分かったことであった。
 今回の事故で亡くなった主婦というのは、名前を衣笠清子といい、年齢は36歳ということだった。
 旦那は、大企業に勤めていて、課長をしているという。年齢も少し離れていて、旦那は、40代後半だというが、ただ、別に年齢的には離れているという感じではなかった。そう感じるのは、奥さんが、派手好きの若く見えるわりに、旦那は年齢相応というよりも、もっと上に感じられるほどであった。
 いかにも、
「大企業の課長」
 というに、ふさわしい感じである。
 大企業の課長というと、二つに分かれる気がするのは、気のせいであろうか?
 一つは、
「いずれは社長を目指すような、脂ぎった感じの課長」
 と、逆に、
「まるで公務員のような、雰囲気で、年功序列で上がってきた」
 という人である。
 あくまでも、勝手な想像だが、前者は、営業畑で、後者は管理部畑という雰囲気である。
「いつかは、必ず大きな勝負に出るか?」
 それとも、
「現状維持を基本にして、いかに、業務の効率だけを考えて無難に行くか?」
 ということの、どちらかというところであろうか?
 今回の被害者である衣笠清子の旦那というのは、後者であった。
 何でも無難にこなせるかも知れないが、いつもおどおどしてはいるが、実は何を考えているか分からないという雰囲気もある。あまりいい見え方ではないが、この男は、とにかく、おどおどしていた。
 確かに、奥さんが亡くなったのだから、おどおどしても、無理もないだろうが、それは、どちらかというと、おどおどというよりに、
「何かに怯えているかのように見えるのだった」
 さっそく旦那が、遺体と、
「面通し」
 を行ったが、
「ええ、妻に間違いありません」
 と答えても、身体がブルブル震えているのは、変わりはなかった。
 確かに、気持ち悪い霊安室に入るのだから、震えが止まらないというのも分からなくもない。
 しかし、旦那の震えは、霊安室を出ても止まらない。むしろ、激しくなっているようだ。
 見方によっては、
「奥さんの死というものも直視して、それが確信に変わった瞬間、本当の恐ろしさがこみあげてきた」
 ということなのだろう。
 つまり、
「この旦那というのは、奥さんが死んだことで、何か自分の身にも恐ろしいことが起こるのではないか?」
 と考えているとすれば、このひき逃げは、単純なひき逃げではなく、
「殺人事件」
 ということになるのだろう。
 もちろん、考えすぎだとは思うが、刑事としても、万が一にも可能性があるなら、それを確認しないわけにはいかない。
「妻は、どうして、あんなことになったんですか?」
 と、団が力なく聞いた。
「ハッキリとは何とも言えませんが、今のところ、ひき逃げということで、犯人を追っているところです。ところで、主婦の方が時間も時間、この時間にあのあたりを歩いていたというのが、警察としても、気になったんですが、奥さんは、何か習い事であったりされているんでしょうか?」
 と、担当刑事が聴いた。
「いえ、習い事はしていませんが、たまに、奥さん連中から飲み会に誘われるということでしたので、たまにはいいよと、いつも言ってはいたんですが」
 という。
「じゃあ、奥さんは、今日飲み会の日だったんですか?」
 と聞くと、
「私には分かりません。女房がいない時は、飲み会だと思うようにしていたので、気にもしていませんでした。バスも最終になることもたまにあったので、時間的にもまだいい時間だったんですよ。本当に一年に一度くらいは、タクシーを乗り合いで帰ってくることもあるので、別に気にもしていませんね」
 というではないか。
「じゃあ、今日も奥さんが遅いことを気にしていなかった?」
 と言われて、旦那が一瞬、
「ぎょっ」
 となったのを見逃さなかった。
「そうですね。ただ、今日は何か虫の知らせのようなものがあったのも事実なんですよ。というのも、遅くなる時は、結構な頻度で、LINEうをくれるのですが、今回はなかったので、気にならない方がおかしいですよね」
 という。
 刑事の方は、
「日常の中で、たまに変わったことがあると、旦那に虫の知らせのようなものがある:
 ということは、何となく分かった気がしたのだ。
 この刑事も、時々奥さんに対して、虫の知らせのようなものがあったという。ただ、その時は何もなかったので、いつも、
「気のせいだったか」
 と感じるが、当たらないまでも、確か普段と違うことが気になるのも事実だった。
「奥さんは、そんなに飲み会に誘われるほど、近所づきあいがよかったんですか?」
 と聞かれた旦那は、
「そうでもなかったようです。飲み会といっても、定例会の延長のようなもので、近所づきあいの一環だということでしたが、女房が喜んでいる様子はありませんでした。むしろ次第に億劫そうになっていて、最近では、明らかに嫌気が差しているという顔をしていたんですね」
 というではないか。
「じゃあ、完全に、お付き合いをさせられていたというのか、それとも、人数合わせの一人いされていたといってもいいという感じですね?」
 ということであった。
「まあ、そうですね」
 と旦那は答えた。
「その飲み会というのは、どういう団体なんですか? 仕事場仲間だったり、自治体の集まりのような感じなのか、それと男女比率ですね」
 と刑事が聴くと、
「街には、区があって、組というものがあるんですが、区の中のさらに組単位で、たとえば、うちのマンション単位での集まりというか。だから、本当は全員くれば、40人近くにはなると思うんですよ。夫婦で参加されるところもありますからね。でも大体は、一人の参加が普通なので、その一人というのは、必然的に、奥さんということが多いでしょうね」
 というので、
「じゃあ、基本的には、いつも女性が多いといってもいいのでしょうか?」
 と刑事の質問に、
「ええ、そうです、その通りだと思います」
 と旦那は答えた。
 旦那は、まだ震えが止まらない。普通であれば、話をしているうちに落ち着いてくるものなのだろうが、今日の状態と、彼が話している状態とが、何か違っているのではないか?」
 といってもいいのではないだろうか?
「一つ気になったのですが、組の集まりって、街まで出ないとないんですか? それに皆同じマンションなんですよね? だとすれば、奥さん一人というのは、どうにも解せない気がするんですが」
 というと、旦那は、
「痛いところを突かれた」
 という感じで、顔をしかめるのを、今度はハッキリと捉えることができたのだった。
 確かに話としては、明らかに
「辻褄があっておらず、矛盾しているところが多い気がする」
 というものである。
 確かに、このあたりであれば、近くにできている、
「大型ショッピングセンター」
 があるではないか。
 飲食店街は、一番遅くまで開いていて、
「大体23時くらいまでやっている」
作品名:悪党選手権 作家名:森本晃次