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血の臭いの女

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 この瞬間には、まだ、夜中起こされた。しかも、2回もであることは意識できているわけではなく、身体が正常に戻りつつある中で、意識も次第に働くようになってきた。
 そこで、
「何かが違っている」
 と初めて感じた。
 そして、
「ああ、そういえば、電話が鳴ったんだっけ?」
 ということを思い出すと、
「目が覚めた瞬間が、今である」
 と気が付いたのだ。
 夢の世界から現実に引き戻されているその間は、
「夢の世界からは離脱しているが、まだ、現実世界に完全に引き戻されてはいない」
 ということで、
「目が覚めた」
 といってはいけない時間なのだろうと思うのだった。
 つまりは、
「目が覚める」
 という瞬間は、
「それまでの瞬間を、すべて夢の世界だと感じた時からである」
 ということになるだろう。
 ただ、その瞬間は、意識として、夢から完全に離脱したとは思っていないので、この間に思い出せた夢を、
「覚えている」
 というに違いないと感じるのだ。
「見た夢で、覚えている夢と忘れている夢がある」
 という理屈は、
「この目が覚める時のメカニズムにあるのではないか?」
 と感じるのも当たり前のことではないだろうか?
 目が覚めたことで、まずは、電話が夢だったのかどうかを確認したくなった。電話のアイコンをタップし、履歴を見て見ると、
「なるほど、夜中に2回着信があったことを示している」
 ということを感じた。
 1度目の着信は、非通知になっていて、時間的に、2時10分くらいであろうか。まさに、
「草木も眠る丑三つ時」
 だったのだ。
 しかし、もう一度の電話は、4時前くらいであった。
 明らかに、一度目の電話で我に返ったはずだったが、すぐに寝てしまい、確かその電話は、すぐにかかってきたものだと思っていたのだが、まさか、2時間近くも経っていただなんてと考えると、
「2度目に目を覚ましたと思ったのは、それこそが夢だったのではないだろうか?」
 と思って、電話を見ると、今度は電話番号が出ていた。
 しかし、この電話は自分が登録しているわけではなかったので、少なくとも、スマホ同士での、赤外線による登録ではなかったということであろう。
 それを思うと、
「普段から連絡を取っている」
 あるいは、
「連絡を取るつもり:
 という相手ではないということになるのであろう。
 電話の内容が気になったのだが、無意識のうちにか、自分で録音していたようだ。普段から録音などするくせがついているわけではないのに、それでも録音していたというのは、少なくともその間、
「目は覚めてはいなかったのかも知れないが、意識はハッキリとしていた」
 ということであろうか?
 そんなことを考えていると、
「意識というのは、夢の世界、現実世界の両方にあるもので、その帰属する世界は、最初に感じた世界にある」
 ということではないかと思うのだった。
 早速、録音されているボタンを押してみた。
 ちなみに、録音時間は、2分弱くらいであったが、その時間が長いのか短いのか、美穂には分からなかった。
 とりあえず、再生してみることにしたのだった。
 何かが騒がしいような気がしたのは、電話による回線の場合があるというのは、ネットによる電話や、音声チャットのようなもので感じていたことだったので、
「無理もないことだ」
 というのは感じていたのだ。
 そして、次に感じたこととして、
「そこが、密室のように感じたことだった」
 というのは、音がこもっていて、
「まるで、お風呂場のような感じがした」
 というものだった。
 だが、その、
「風呂場」
 というものを感じた時、少し、自分で気持ち悪いと感じたのだ。
 風呂場というところは、
「湿気を帯びた密室」
 なのである。
 そして、
「その場所には、基本的には裸で入るものだ」
 という思い込みがあり、今自分が服を着ているという意識があることで、どうしても、風呂場を想像すると、
「服を着ていて、風呂場にいる」
 という感覚になるのだ。
 だから、湿気を感じている自分を意識していて、それだけに、とてつもない気持ち悪さを感じるのだ。
 美穂は、いつも、
「自分の体調は、ちょっとしたことで悪くなる」
 と思い込んでいることで、環境の変化に、自分は敏感であり、そのため、風呂場のシーンなどを想像すると、てきめんに、体調が悪くなりそうになるのを自覚してしまうのであった。
 体調の悪さが、悪寒や、吐き気に繋がる。ゾクゾクしてくる感覚が、発汗作用にもつながっているのだろう。
 汗が出るくらいに身体がほてっていて、きついことで、ブルブル震えを感じさせる。
「汗を掻いたシャツは、すぐに着替えないといけない」
 ということは分かっているくせに、
「どうせ、また何度も着かえなければいけないのが分かっているので、それこそ、睡眠時間がなくなってしまう」
 ということを考えると、
「体温で、汗を引かせればいいんだ」
 という怠慢意識が芽生えてくるのだったが、それだけ身体を動かすことが億劫であり、難しいことの証明であったのだ。
 そのまま、寝ていると、
「気持ち悪い」
 と思いながらも、起き上がれないでいると、
「金縛りに遭うのではないか?」
 と考えるのもいつものことだった。
 そういえば、
「さっき、金縛りに遭ったと感じたような気がする」
 と思ったのだが、身体に金縛りの感覚は残っているのだが、意識としては、今夜のうちに、金縛りに遭ったというものが残っていなかった。
 ということは、
「昔夢で見たことを、記憶から引き戻されて、意識に変わったところを、夢として見たのを、現実だと認識したのかも知れない」
 と感じた。
 だからこそ、身体に金縛りの感覚が残っていたというのは、決して無理なことではなかったということなのかも知れない。
 実際に夢を見た感覚が身体に残っていることは少ないわけではなく、特に、湿気からなのか、体調からなのか分からない汗が身体に滲んでいたと考えると、自分でも、金縛りが、夢によるものなのか、現実だったのか、分からなくなってしまう。
 ただ、自分を納得させることができるとすれば、それは、
「夢の中だった」
 と思うことであり、
「どうして夢に走ったのか?」
 ということであれば、
「それは、今夜のことではなく、遠い昔に感じたことだ」
 という意識があるからではないだろうか?
 そんなことを考えていると、今夜、
「本当に夢を見ていたのかどうか、怪しいものだ」
 と思うのだった。
 電話に残された録音メッセージを流していると、そこから声が聞こえてくるわけではなく、時々、
「カツーン」
 というような音が聞こえてくるだけで、その音が、風呂場からだという感覚は、否めないものだったのだ。
 風呂場を思い出すと、気持ち悪さが前述のように襲ってくるわけで、それが、金縛りに変わったのだと思えば、納得がいく。
 ただ、その納得もかなり意識が歪んだものであり、屈折した感覚を、どうしても、感じさせるのであった。
 そして、
「風呂場」
 という感覚を、一瞬にして、
「密室」
 という言葉に置き換えているという感覚になったのだった。
 今は、
「絶滅危惧種」
作品名:血の臭いの女 作家名:森本晃次