小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

血の臭いの女

INDEX|11ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

 丑三つ時であれば、夢がその錯覚に関わっているとしても不思議なことではない。それを思うと、占いであったり、祈祷であったり、人が恐怖に陥る時、
「何かにすがりたい」
 と考えるのは当たり前のことであり、しかも、その時間帯が一番眠りの深い時ではないかと思うのだが、果たしてどうだろうか?
 夢というものをいつ見て、目が覚める時というものの関係を考えると、少し違う感覚になるようだった。
 そんな午前二時を少し過ぎた時間。その日も相変わらずの静けさだった。このあたりは閑静な住宅街なので、なるほど、静なのはいつものことであるが、何か耳鳴りがしていたのだ、
 それが違和感で目を覚ましかけているのだろうが、静かなところに持ってきて、どこか耳がツーンとなっていることだった。
 まるで、どこかの山に登っているか、高層ビルのエレベーターを一気に昇っている時のようだ、
 とっさに、
「ああ、気圧が低くなっているんだな」
 と感じた。
 そして、自分の今のこの中途半端な、眠気と目を覚まそうとしている狭間で、
「まだ布団から抜けたくない」
 と思ったのは、自分の身体が重たくなっていることに気づいたからだ。
 その原因が、汗を掻いているということだったからだ。
 身体にへばりついたような汗を感じていると、身体を起こすことが億劫だったのだ。
 目が覚めているにも関わらず、身体を起こせない感覚は、それだけ、表が生暖かいということで、それが汗の原因だと思った。
 そして、その原因は空気の湿気にあると感じたのだった。
 ということは、先ほどの耳鳴りと、空気に交じっているであろう、
「重たい湿気」
 これは、意識の中で矛盾しているものであった。
 ただ、実際には稀にではあるが、湿気を含んだ空気の中でも、ツーンという耳鳴りがあったり、目が覚めた時に汗を掻いているからといって、絶対に空気が重たいような、湿気を含んだ空気ではないということだって、あったりするので、
「自分の勘だけを信じるのは、いかがなものか?」
 と感じるのだった。
 そんな状態の中で、身体を何とか起こすと、耳鳴りがなくなっているのを感じた。
「ああ、夢の中で感じたことだったのかな?」
 と思うと、先ほどの自分の錯覚が、気のせいだったということに気づき、ちょっとホッとしたような気がしたのだった。
 次第に目が覚めてくるのを感じると、やはり、先ほどまで、夢を見ていたような気がしていた。
 ただ、その夢に、
「もう一人の自分」
 が出てきたという意識はなかった。
 それというのも、
「夢を見た」
 という感覚はあるのだが、その夢がどんな夢だったのかというと、意識がハッキリしないのだった。
 美穂は、目が覚めるまでに、大体10分くらいはかかるだろうと思っている。だからアラームもそれを計算し、
「どの時点で目を覚ませば、それほどきつくないか?」
 ということを計算して目を覚ますようにしている。
 その時間にも、自分の中で余裕を持つようにしていて、慌てないということが大切だと思うようになった。
 慌ててしまうと、自分が、
「せっかく目を覚まそうとしているのに、自分で自分の邪魔をしているようで、そんなことをしていると、目を覚まそうとしている自分の邪魔をしているように思えてきて、このまま永遠に目が覚めないのではないか? と感じてしまうのではないか?」
 と思い、怖くなるのであった。
 もちろん、目が覚めないなどということが今までにあったわけではない。ちゃんと、
「眠りに就いた回数と、目を覚ました回数は、ピッタリ同じはずだ、それこそ、永遠に逢わない辻褄を、追いかけているような錯覚に陥って、眠るのが怖いという感覚に陥ってしまうのではないか?」
 と感じることだろう。
 それを思うと、
「今にも目を覚ましそうになっている自分の背中を押すような気持ちに、自然となっている」
 ということに気づいていたのだ。
 それが、午前二時であるということを、分かってのことだったのかどうか。その時に感覚があったわけではなかったのだ。
 夜になると、最近は急に冷えてきていたので、寒い分には慣れていたが、暖かくなるという想像はしていなかったので、この湿気が頭痛を誘っているということに、後になって気づいたのだった。
 暖かさがどこか気持ち悪さを運んできて、何か嫌な記憶を思い出させるという予感を感じさせた。
 あれは、確か子供の頃の記憶だった。
 子供の頃というと、小学生低学園だったので、まだ、児童と呼ばれるくらいの子供だっただろう。
 あれは、今はもうなくなってしまったが、テーマパークだったか、遊園地だったか、遠足で小学校から出かけた記憶があったので、たぶん、テーマパークのようなものだった気がする。
 家に帰ると、まだ、その時のスタンプラリーのようなものが、小さな冊子として残っている。それを見ると、
「ああ、このスタンプを押したものだ」
 と、その時のことを思い出した気がした。
 スタンプを思い出していると、そのテーマパークがどんなところだったのか、思い出してきた。
 そこは確か、どの時代なのか、定かではないが、
「昔の街並みを再現した」
 という感じのところであった。
「子供が楽しく歴史を勉強できる場所」
 ということで作られたものだったようだ。
「思い出そうとすれば思い出せるではないか?」
 と感じたのも当たり前のことで、その場所には、何度も出掛けていたのだった。
 というのも、小学生の時だけだと思っていたのは、その後に行った時と、あまりにも記憶の中のその場所と、かけ離れていたからだった。
 その時は大学に入ってから、初めてできた彼氏と出かけてきたものだったが、その彼氏が、
「歴史が好きなんだよな」
 ということで、初めてできた彼氏だったので、逆らうこともできないというか、逆らうつもりもなかったので、
「ただ、ついていくだけ」
 という、三行半的な考え方をしていたのだった。
 見ているだけで、
「どこか可愛い」
 と感じたことが、付き合い始めるきっかけだったのだが、相手もまさか、美穂に、彼氏が今までいなかったと思わなかったようで、それを聞いた彼氏は感激していた。
 その様子を可愛いと思うのであって、男性に対して自分が、
「可愛いなどと思うなんて失礼じゃないかしら?」
 と思ったのだが、
「感じてしまったものはしょうがない」
 と思うと、
「このまま、ずっと付き合っていければいいな」
 と感じるようになった自分が、おかしな感覚を持っていると思った。
 しかし、それ以上に、
「こんな感覚になったのは初めてだ」
 という新鮮な気持ちが勝ってしまって、
「別れなどという言葉は、頭にまったくなかった」
 ということであった。
 その何度目かのデートで出かけたそのテーマパークに寄った時、その日は、実にデート日和といってもいいくらいに、きれいに晴れていた。
 確か、季節は秋だったと思う。そろそろ日陰に入れば、寒さを感じる時期であったが、日差しが容赦なく降り注いでいると、ちょっと歩いただけでも、身体から汗が滲んでくるのを感じるほどであった。
 小学生の頃も同じような天気だったのだろう。デートをしている間に、
作品名:血の臭いの女 作家名:森本晃次