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同一異常性癖の思考

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 ということに邁進できるということなのは、
「自分の勧善懲悪が、純粋なものではない」
 と言っているのと同じではないだろうか?
 それを考えると、
「大きな悩みもなく、刑事という仕事に邁進できている自分が、本当の勧善懲悪でなくなっていることに、ショックを覚えるのではないだろうか?」
 実際に、
「交番勤務の方がよかったな」
 と思うことがある。
 あの頃は、刑事になって、
「自分の行動が、人の役に立てばいいんだ」
 と思っていた。
 刑事というものが、必ず人のためになる仕事ばかりできるというわけではない。
 実際には、理不尽な犯罪を引き起こした人間を相手にするのだ。
 しかも、犯人すべてが、
「理不尽だ」
 というわけではなく、逆に、被害者すべてが、
「可愛そうだ」
 ということもあるだろう。
 確かに殺人事件で殺された人は、それ以降の人生を断たれてしまったので、一律に、
「可愛そうだ」
 ということなのだろうが、実は、その人が犯行を引き起こす原因を作ったのかも知れない。
 殺された人が、
「諸悪の根源」
 と言われるような人だったかも知れない。
 ひょっとすると、その被害者は、無差別集団殺人を引き起こし、世界中の人たちから、
「極悪人」
 と言われている人であれば、どうだろう?
 下手をすると、殺人犯が英雄に祭り上げられるかも知れない。そうなると、根本的な考えが、まったく役に立たないということになるだろう。基本的に、絶対に犯してはならない結界を設けておく必要があり、相手がいくら極悪人であろうが、
「殺人を犯せば裁かれる」
 ということが大前提となるのが、法律であり、社会なのであろう。
 迫田刑事は、しばらくの間、試行錯誤の刑事生活であった。
 もちろん、縦割り社会への疑問があったのも当然であろう。ただ、そのことを意識していたわけではなく、性格が、どちらかというと楽天的だったので、
「悩みはあるが、それがどこから来るのか、分からない」
 と思っていたようだ。
 迫田刑事は、人を見る時、
「人を見る目であったり、観察力がある」
 と言われていたが、自分では、そこまでは感じていなかった。
 そんな謙虚さのようなものが、自分に対しても働くのか、素直な気持ちと一緒に、
「都合の悪い」
 と思うようなことは考えないようにするというところが働くことで、世の中を渡っていける自然な感覚を、身に着けていたのかも知れない。
 だから、まわりの刑事からは、
「迫田さんほど、一生懸命に捜査に当たる人もいない」
 と思われているようだ。
 そういう意味では、真面目ではあるが、どこか、
「融通の利かない」
 というところがあるようで、その感覚がまわりの刑事には、
「どこか二重人格に見える」
 と思われている。
 しかし、これも無意識にであろうが、二重人格の裏の部分をなるべく表に出さないようにしていることで、やはり、人から慕われる人のようだ。ただ、迫田刑事のような考え方の刑事は稀のようなので、どちらかというと、
「アウトロー」
 のイメージが強いのであった。
 そんな迫田刑事であったが、彼は気になっている事件があった。
 この事件は、10年前に発生した事件で、当時、残虐な事件として、結構話題になったが、犯人を捕まえることができず、今では。
「お宮入り」
 となっているものであった。
 この事件は、迫田刑事が、刑事になってから、何度目かの事件で、まだまだ新人として、捜査自体、わけも分からないまま進み、結果として、
「犯人の術中にはまってしまった」
 というべきなのか。まったく犯人の尻尾を掴むことができず、最重要容疑者は、
「海外に逃亡した」
 ということで、
「みすみす警察は犯人を取り逃がした」
 ということを、マスゴミに書かれ、警察の威信や面目は、丸つぶれだったのだ。
 だからこそ、迫田刑事にとって、この事件は特別であり、時間ができれば、調書を読み直すという時間の使い方をしていたのだ。

                 過去のお宮入り事件

 この事件の内容としては、
「ある老人夫婦の家に強盗が入ったのだが、二人組のその強盗は、被害者となった老夫婦の寝込みを襲ったようで、夫婦をそのままナイフで刺し殺し、金庫からお金を奪って逃走した」
 という、強盗殺人事件であった。
 金庫が開けられているということは、
「相当に親しい間柄の人間が、主犯、もしくは共犯として参加している」
 ということは明らかだった。
 そこで浮かんできたのが、被害者が日ごろから可愛がっていた30代の男がいたのだが、この男が事件の後、行方不明になっていることで、重要参考人として手配することになったのだ。
 残虐非道な犯罪だというのは、
「老夫婦は、寝込みを襲われ、無抵抗のまま刺されたというのに、身体には、数か所に及ぶ、刺し傷があった」
 という。
 それだけでも、明らかに凶悪と言ってもいい犯罪で、このニュースが報じられた時、世間からは、
「なんという極悪非道な犯行だ」
 ということで、世間からの注目度はかなりのものだった。
 ワイドショーなどでは、絶えずトップのコーナーで報道され、1週間以上に渡って、警察の捜査が注目されていたのである。
 しかし、そのわりに警察が掴んでいる情報というのは、少なかった。
 というのも、この老夫婦はm一種の、
「守銭奴のようなところがある」
 と言われていて、そのせいもあってか、
「この老夫婦に関わっている人は少なかった」
 ということだったのだ。
 マスゴミや世間は、好き勝手なことをいう。
「とにかく、殺された人が可愛そうだ」
 というのは、もちろんのことなのだが、それは正直、マスゴミの報道によるものなので、どこまで信憑性があるかというのは、世間の皆も分かっていることであろう。
 それでも、信じてしまうのが、世間というものであり、そのせいで、警察も結構大変なところがある。
 ただ、この事件を耳にした人で、少し年配の人であれば、思い出す事件もあったのではないか。
 あれは、昭和の終わりだったか、平成の頭くらいであったか。
「老人をターゲットにした詐欺事件」
 というものが発生し、こちらも世間を騒がせたものだった。
 こちらは、
「被害者が殺される」
 ということはなかったが、何よりも、それまでにはなかった。
 いや、あったかも知れないが、ここまで表に出てくることはなかったのではないだろうか?
 というのも、この事件は、
「会社ぐるみ」
 の、組織的な犯行だったからである。
 被害者は、
「お金を持っている孤独な老人ばかりだった」
 というのが特徴で、犯人グループ、ここでは、詐欺組織会社の社員と言われる連中が、言葉巧みに被害者に近づき、優しさを餌に相手に取り入り、完全に安心させようという手口だったのだ。
 中には、女の社員であれば、色仕掛けを遣ったりしていたようだ。
 とにかく、老人を安心させ、いろいろなツボや、金ののべぼうを買わせるなどしていたのだ。
 手口は巧妙で、買わせたものは、相手に渡さず、一度、
「これを買いました」
 といって、見せておいて、
「物騒なので、私どもが会社の金庫に預かっておく」
作品名:同一異常性癖の思考 作家名:森本晃次