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同一異常性癖の思考

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 と言われて、
「一応、立ち入り禁止区域とはしておいて、誰も入った人はいないはずだと思います。一応、引き渡しを受ける前までは、研究チームというか、県の方での公共施設扱いのようになっているので、我々も、許可が出なければ何もできません。立ち入りすら禁止ですからね」
 ということであった。
「じゃあ、ここには、誰か入ってこようと思えば入れたわけですかね?」
 という桜井刑事が聴いたが、この質問は、迫田刑事も聞きたい話だったのだ。
「ええ、ここでは、本来なら防犯カメラのようなものがいるのでしょうが、今のところ、遺跡が発見されたということでもなかったので、そんなものはつけていませんので、入ろうと思えば入れたはずですよ」
 と、現場監督の人はいうのだった。
 それを聴いて、
「なるほど、それはそうかも知れませんね」
 と桜井刑事が言ったのを聴いて、監督はキョトンとしていることから、桜井刑事が何を言いたかったのかということを分かっていないようだ。
 それは、他の人も同じで、実際警察関係者でも、ピンと来ていない人もいるようだった。
 しかし、迫田刑事には桜井刑事が気にしていることが分かった。
 要するに、
「今回発見された白骨が、実は他にあったものをこちらに移動させたのではないか?」
 ということであろう。
 しかし、この発想はあまりにも突飛な発想でもあるだろう。
 というのも、
「桜井刑事だから思いついたようなもので、他の人には、想像もつかないことであろう」
 ということであった。
 なぜなら、この小学校が、取り壊されるのは分かっていることであって、ここに隠したとすれば、すぐに発見されるのは当然だといえるだろう。
 それは、
「犯人が、白骨死体を隠したかった」
 と思い込むから、そういう発想になるのであって、
「最初から隠す気持ちなどなく、むしろ、早く、あるいは、ちょうどのタイミングで発見させようと思うと、その場所が、この小学校だった」
 ということであるとすれば、理屈に合うことである。
 要するに、
「入らなければ出られない」
 という言葉のミステリー小説のキーワードがあった。
 というのは、あの話は、
「バラバラ殺人」
 というのが、殺され方だったのだが、
「よほど恨みを買っているから、そんなことになったのだろう?」
 と言われていたが、実はそうではなく、計算されたことであった。
 というのは、
「バラバラ殺人で、胴体だけが消えていた」
 というものだったのだが、アリバイトリックと、密室トリックが噛んでいたのだが、この場合の話は、
「実は、犯行は別の場所で行われていて、身体を切断することで、胴体を持っていったと思わせ、そこで、アリバイと密室のトリックと作ったのだが、実際には、他の場所で殺して、胴体以外を持っていったということであった。つまり、胴体以外は、密室でも入れることができるというもので、胴体を中から出すことが不可能だと思われたので、密室だったのだ」
 さらに。
「密室トリックとして使われた機械トリックでは、水道を流し続けることによる水圧を利用したものであったが、それ以外に、水を流すということに、大きな意味があったのだ。というのが、他で殺したのであれば、血液が少なすぎるということが分かってしまう、だから水を流すことで、犯行現場をこの浴槽にしておくということに成功するのだということだった」
 要するに、一つの見方を変えるだけで、いくつもの、犯人が行いたいトリックをすべて見抜くことができる。
 つまり、
「見る方向さえ変えれば、事件を解決することは、それほど難しいことではない」
 ということである。
 それだけ、
「人間の頭というのは、一つのことを思ってしまうと、なかなかそこから離すことは、難しいということであろう」
 と言えるのではないだろうか?
 だから、
「事件というのは、なかなか一足飛びに解決するものでない」
 と言えるし、犯罪者側から見て、
「完全犯罪などというのは、起こりっこない」
 というものである。
 事件というのは、
「犯人が考えたものであり、それは、いろいろなパーツを組み重ねることで、警察の捜査を煙に巻く」
 というものである。
 だから、解決に導こうとする、クイズ番組であれば、回答者側である警察というのは、
「まず、その内容をすべて、理解することから始めようとする。つまりは全体から少しずつ、目線を狭めて行って、取捨選択することで、まるで、森の中にある木を見つけようとするのであないだろうか?」
 と考える。
 つまりは、減算法の考え方なのである。
 目の前にあるものを一つ一つ不要なものを省いていくことで。真相に辿り着く。百から、どんどん減らしていくことで、正解を見つける。それこそ、ウソを隠す時の話に出てくる、
「木を隠すには森の中」
 という言葉の、
「森の中から、いかに木を見つけるか?」
 ということをしないといけないわけである。
「犯罪を完成させる犯人側のやり方の逆を行くことで、真相に辿り着かなければ、事件は解決しない」
 ということであれば、
「事件を解決させるためには、警察側が事件解決のために用意することとして、百となる事実を見つけ出すことである」
 と言えるだろう。
 そういう意味では、その時点で、
「警察側が圧倒的に不利だといえるだろう」
 ということである。
 犯罪者側というのは、自分の何かの目的達成のために、犯罪を犯す。
 もちろん、犯罪など犯したくないにも関わらず、何らかの理由で、犯さなければならないわけで、
「借金が溜まって、変なところから借りたために、首が回らなくなった」
 であったり、
「自分の大切な人が、理不尽な形で、命を奪われたことによって、自分の人生も狂ってしまったということによる復讐」
 などと言った、本当に、
「やむを得ない」
 という場合がそうであろう。
 中には昔の探偵小説に出てきたような、
「猟奇犯罪」
 に憧れている人、さらには、美というものを追求することで、犯罪を美に結び付けてしまうという、
「耽美主義的な犯罪」
 などというのもあるかも知れないが、普通ではありえない。
 だから、犯人は、
「絶対に捕まりたくない」
 という考えから、
「完全犯罪」
 というものを目指すのである。
 だが、
「完全犯罪なんて起こりっこない」
 と言われるではないか。
 どんなに計画された犯罪であっても、必ず解決されてしまう。もっとも、小説のように、
「解決」
 ということが、絶対的命題である以上、完全犯罪が起こってしまうと、その時点で、違うジャンルの小説にならないといけないのではないか?
 と思えるのだった。
 それが、
「探偵小説の限界」
 というものではないだろうか?
 犯罪を考えるというのは、犯罪者側が、
「加算法」
 であり、すべてが、
「ゼロから始まる」
 ということがまず、大前提となる。
 しかし、犯罪というのは、今までにもたくさんあり、探偵小説などで、いろいろパターンが出てきて、
「もう、すでに、パターンは出尽くしていて、これからは、バリエーションの時代だ」
 ということは、日本における、
「探偵小説黎明期」
作品名:同一異常性癖の思考 作家名:森本晃次