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完全犯罪の限界

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「このナイフは自分を陥れようという意図があってのことになるだろう」
 と言える。
 しかし、まったく関係のない人が、自分のポストに放り込んだ」
 ということになるのだろうが、すると、犯行現場はどこかこのすぐ近くということになるだろう。
 とはいえ、このまま、放っておくわけにはいかない。
 少なくとも、
「警察に連絡しなければ」
 ということは当たり前のことで、この場をなるべく離れず、110番するしかなかった。
 刑事はほどなくやってきて、その凶器を見て、
「これだけの出血だったら、絶命していてもおかしくないな」
 という刑事同士の話が聞えてきた。
 第一発見者が、そう感じても無理もないことで、
「とにかく、鑑識に回すしかないだろうな」
 というと、鑑識に凶器と思しき血染めのナイフは委ねられることになったのだ。
「ところで、この集合ポストを開けた時、初めて気づいたというのだね?」
 と口調は柔らかかったが、その目には疑いがこもっているように思えてならなかった。
「ええ、そうです。ただ、扉を開ける前から何か湿気のようなものを感じたので、何か円だとは思ったんですけど」
 というと、刑事の目はまたしても、怪訝そうになった。
「そんな個人の感想なんかいらないんだよ」
 と言わんばかりのようで、
「さすが、警察というのは、人を疑うことが商売なんだな」
 と思い知らされたのだった。
「あなたは、この部屋番号からすうと、305号室ということですね?」
 と聞かれたので、
「ええ、そうです」
 と答えると、
「あなたの隣人とかはどんな方なんですか?」
 と聞かれたので、
「両隣とも、今は空室になっています。たぶんですが、今は半分くらいが空室なんじゃないですかね?」
 というので、
「どうしてですか?」
 と刑事が聴くと、
「ちょうど、引っ越しシーズンということもあり、引っ越して言った人も結構いるようですし、元々、そんなに入居で最初から埋まっていたというわけえはないんですよ」
 と彼がいうと。
「そうだったんですね? 立地はいいはずなのに、家賃が高いんですかね?」
 と刑事に聞かれたが、
「そこまで高いとは私は思っていませんでした。どちらかというと、便利がよすぎるのが逆に少ない理由ではないかと思ってですね」
 というと、
「ほう、それはまたどうして?」
 と刑事が聴く。
「これは私一人の意見ですが、あまりにも駅に近いので、コンビニやスーパーが近くにないんですよ。ご存じの通り、最寄りの駅からは反対側になるので、賑やかな表に比べて裏は、昔からのマンションが多いので、スーパーなどの喧騒としたものがないという閑静なところなんですよ。かくいう私もそういうところがよかったので、ここに決めたというわけなんですけどね」
 と発見者は言った。
「なるほど、確かに、コンビニとかがありそうな雰囲気じゃないな。でも、こういうところであれば、入居者がもっといてもいいと思うですけどね」
 と刑事がいうと、
「最近は車の人も多いですから、仕方ないですよ、駐車場も、土地の価格に比例して高くなるので。車を主に使っているひとには、向いていないですよ」
 というのだった。
「なるほど、ということは、間違ってあなたのところに凶器を入れたというのも考えにくいですね」
 と刑事がいうと。
「そうかも知れません。でもそれだと、まるで何かの犯罪を私に擦り付けようとしているように思えてならないですね」
 というと、今度は刑事が、
「待ってました」
 とばかりに、
「あなたは、自分に罪を擦り付けようとしている人間に、心当たりがあるんですか?」
 と言われ、
「墓穴を掘ってしまった」
 と感じたが、後の祭りだった。
「お前が絡んでいることに間違いはないな」
 ということで、刑事は睨みを利かせた。
「あっ、まずかったか?」
 と思ったが、刑事の目はごまかせなかったのだ。
 しかし、それは、彼の被害妄想だったようで、そおことに言及されることはなかった。
「ところで、あなたは、一体どういう人なんですか?」
 と刑事に聞かれた。
 刑事も部屋だけは、集合ポストの部屋番で分かったはずだが、名前はさすがに分かるはずもない、
 昔ならいざ知らず、今であれば、
「個人情報の観点」
 から、誰も郵便受けのところに名前を書いている人はいない。手慣れた郵便配達員であれば、別にいいのだろうが、年賀状配達のアルバイトなどであれば、
「こんな厄介なことはない」
 と思うに違いないだろう。
 実際に、脇坂も今から15年くらい前であるが、アルバイトで年賀状配達をした。その頃には、個人情報の話もそろそろ厳しくなってきた頃であったので、本当に郵便受けに名前が書いてあるなど、普通なら、ありえないと思うような時代だった。
 しかも、それからしばらくしてのことだったのだが、年賀状配達をしていて、
「年賀状をどこかに捨てた」
 ということで、問題になったアルバイト員がいた。
 結局罪に問われたのだが、結果どうなったのかまでは知らなかったが、少し気になるところではあった。
 といっても、高校時代のその時は、
「どうせアルバイトだから」
 という意識しかなく、それだけに、
「意識はしても、その後のことなど、意識はなかった」
 というのも、
「無理に意識しないようにしていたのかも知れない」
 と感じた。
 というのも、
「俺だって、何度捨ててしまおうと思ったか」
 と後から思えば感じたことか。
 確かに、そんなやつか、結構いた。郵便局の食堂で、皆愚痴をこぼすように、
「ありゃあ一体どういうことなんだよ、配達員に対する嫌がらせか? そりゃあ、いつもの配達員だったら、間違えることもないだろうけど、俺たちバイトにとっては、表札やネームプレートが命のようなものなんだから、その命がないって、どういうことなんだって感じだよな」
 といっていた。
「そりゃあ、そうさ。だけどお前はどうしてないか分かって言っているのか?」
 と一人が聞くと、
「いいや、理由が分からないから、悔しいんじゃないか」
 と、怒りに任せて言っているだけだったので、皆思わず、ずっこけた様子になっていたのだが、それでも、
「あれは、個人情報保護の観点からだよ。お前だって、個人情報保護法くらい分かるだろう?」
 と言われた彼は。
「バカにするんじゃない。それくらいは分かっているさ。だからと言って、悔しいじゃないか」
 と言っているのは、
「分かって言っている」
 ということである。
 ある意味、確信犯ということであるが、それ以上に、彼の感覚としては、あくまでも、
「自分中心主義だ」
 ということであろう。
「個人中心主義であっても、それでもいいんじゃないか?」
 と思っていたので、
「どちらの言い分も分かる気がするな」
 と感じたのだ。
 ただ、愚痴をこぼしているやつも、本当は、
「こんことを言っていても、どうなるものでもない」
 ということは分かっていることだろう。
 分かっていても、どうしてもそうなるのは、性格的に、ある意味での、
「完全好悪なのかも知れない」
 と思っていた。
 彼も、方向性は違うようだが、どちらかというと、同じ、
「勧善懲悪」
作品名:完全犯罪の限界 作家名:森本晃次