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完全犯罪の限界

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 普通は善悪の判断を意識してするものではなく、身体にしみこんだ遺伝子であったり、本能に近いもので、そのことを把握するということであろうか。
 それを考えると、
「世の中には、そういういい加減なやつが多いということになるのであろう」
 ということであった。
 いい加減なやつが多い中で、そんなやつほど、
「自分の権利を、これ見よがしに主張することであろう」
 ということだ。
 そんなやつらほど、普段から、必死になって自分の中にあるはずのない、善の部分を探そうとしているわけなので、主張したい権利を探すことができず、
「飢えている」
 といってもいいかも知れない。
 だから、本当にちょっとした権利の欠片のようなものが見つかったりすれば、それを、手の平を広げたくらいの大きさに、はち切れんばかりの大きさにしてしまうと、
「この時とばかりに、権利を主張しまくる」
 ということになる。
「権利を主張するには、その裏にある義務を遂行してから言えることだ」
 という、当たり前のことがまったく思いつかないのだ。
 そんな奴らは、
「義務」
 という言葉は知っていても、権利ばかり主張するわけなので、言葉の意味も分かっていないだろう。
 それだけに、
「権利を主張するなら、義務を遂行してからだ」
 という、
「当然の理論」
 が頭の中にあるはずなどない。
「ある意味、言葉は知っていても、意味を理解しようとしない」
 という典型的な理由になるのであろう。
 ここの、
「Kコート」
 というマンションは、実に立地としては、素晴らしいところに建っているが、少々お家賃が、
「高くてもしょうがない」
 と言われる、賃貸マンションであった。
 この2年くらいの間に、新築マンションということで、華々しくデビューしたのだった。
 他のマンションの集合ポストに、チラシとして、アルバイトが、
「ポスティング」
 をしていたようだ。
 ポスティングというのは、地域だけを決めて、チラシの束を持って走り回り、基本的に、見えているポストに、どんどん放り込んでいくというものだったのだ。
 昔の場合はそれなりに効果もあったのかも知れないが、今はネットを見れば、嫌でも広告は目に飛び込んでくるというもので、ポスティングというのも、かなり減っただろう。
 特に、最近ではポストに、
「押し売り勧誘お断り」
 という文字を貼り付けている人も多く、
「ポスティングも、同類」
 ということなのだろう。
 以前は、ポスティングなどで、たった一日の間にポストを開けると、チラシばかりが、数十枚放り込まれていることも多い。ポストを開けた瞬間、バラバラと下に落ちたのを拾った経験がない人はいないといってもいいだろう。
 下手をすると、その中に、
「重要な郵便が入っていて、それを見逃したまま捨ててしまうということがないとは言えない」
 ということになってしまう。
 そんな集合ポストの中に、タオルにくるまれた異物が入っていることを、いつものようにポストを開けた人が発見した。
 いつものように仕事から帰ってきて、
「ただのルーティン」
 というだけで、
「どうせ何も入っていないだろう」
 と思いながら、ポストを開けると、そこに異物が入っていたというわけだ。
 さすがに、それをそのまま見逃すことはできず、
「何だ、これは?」
 ということで触ってみると、ごつごつした、固いものだった。
 そして何となくではあるが、そこにあるものが何であるかということが漠然と分かってくると、思わず、
「うわっ」
 と声を上げてしまった。
 その声が思ったよりエントランスに響いているので、思わず、まわりをキョロキョロと見渡してしまった。まるで、
「盗人のようではないか?」
 と感じるほどだった。
 しかし、まわりを見て誰もいないとホッとした時、本当に、
「盗人になったかのようだ」
 と思うほどの安心感だったが、
「ああ、よかった」
 と思ったのは、むしろこれからすることを誰にも見られることはないと感じたからだった。
 手の上に乗っているタオルを、少しずつ捲っていくと、どんどん嫌な臭いを感じるようになったからだ。
「何だ、この臭いは?」
 と、予想はつくのだが、実際に嗅いだことのないこの悪臭に、正直参ってしまうと感じるほどだったのだ。
「鉄分を含んだこの臭い」
 というものを感じた時、一緒に感じたのは、湿気だった。
 まるで、雨も降っていないのに、
「絶えずまわりすべてが結露しているのではないか?」
 と思うような状態に、
「こんな分かりやすいと思うが、想像もしたくない」
 と感じられる悪臭が手の上に乗っていることが、とにかく最悪だったのだ。
 手をどけるわけにはいかない。
 落っことしでもすれば、音は乾いた金属音とともに、今までいないと思っているまわりに、
「一瞬にして人だかりができてしまう」
 という想像というか、
「妄想」
 に駆られてしまうのが怖かったのだ。
 あくまでも、まわりを気にしながら、少し座り込んで、床にタオルを置き、まるで、リンゴの皮でも剥いていくかのように、ゆっくりとタオルを剥いていくと、そこに現れたのは、果たして想像通りの、
「血染めのナイフ」
 だったのだ。

                 第一の殺人事件

「このナイフはいつ、どこで、誰の血を吸ったのだろう?」
 と考えてしまう。
 見てしまうと、今度は無意識に身体が震えだして、
「このまま、時間が経てば経つほど、情緒を保つことができない」
 と感じることであろう。
 手足が震えてくるのを感じた。
 自分が今、どういう立場にいるのかということを考えると、本当に震えが止まらなくなる。
 これから警察への連絡。警察からの事情聴取。ここまでは間違いない。
 そして、
「限りなく間違いない」
 ということとして、
「重要参考人」
 になることに間違いはないが、犯人が別に捕まらない限りは、自分が、そのまま、
「重要容疑者」
 として、取り調べを受けるだろう。
 もちろん、
「このナイフが誰の血をどこで吸い、その人がどうなったのか?」
 ということに決まってくるのだろうが、少なくとも、これだけの血が滲んでいるのだから、相当に大変なことになっているということは想像がつく。
 しかも、問題は、
「その人物が、すでにどうなったのかということを警察が掴んでいるか?」
 ということである。
 ひょっとすると、まだ事件は明るみに出ていることではないかも知れない。
 あるいは、どこかで誰かが行方不明になっていて、捜索願が出ているところなのかも知れない。
 あるいは、実際に殺されていて、後はその凶器を警察が探しているということなのかも知れない。
 とにかく、凶器と思われるものが、誰が放り込んだのか、自分の集合ポストにいれられていた。
 もちろん、放り込んだのは犯人だという可能性が、限りなく高い。
 そうなると、
「なぜ、犯人がこの自分のところに放り込んだというのか?」
 ということであるが、
「犯人は、自分の知り合いで、何か自分に恨みのようなものがあるか何かして、自分と関係のある人なのか?」
 ということになれば、
作品名:完全犯罪の限界 作家名:森本晃次