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完全犯罪の限界

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「平野聡子は、どうやら、北海道にいた」
 ということのようだ。
「一緒に旅行した」
 という友達がいて、実際に、彼女と一緒に旅行した時、ちょうど彼女がひったくりに遭って、それを警察に届けていたことが、北海道警察に問い合わせたことでハッキリしている。
 警察に被害届が提出されていることから、これ以上のアリバイはないということであるが、ただ、彼女と旅行をしたという人も、その前後の彼女の行方に関しては、一切知らなかったようだ。
「だって、会ったのも久しぶりのことで、一度以前にどこかのパーティで偶然一緒になったのが彼女だったんですよ、私たちは中学時代一緒だったので、懐かしくなって話をしているうちに、お互いに北海道に行きたいということになって、あれよあえよという間に決まったことだったんです。彼女は行動力のある人だったからですね」
 と、彼女のことをまったく疑っている様子はないようだった。
 彼女に聞き込みにはきたが、行方不明の状態なので、プライバシーは守らなければいけない。だから、事件のことは伏せての聞き込みになるので、突っ込んだ話はできないということになるのだった。
 だが、このアリバイは、あまりにも都合のいいものであった。
 しかし、それを無視しても、鉄壁なアリバイであることに変わりはなかった。
 まさか、彼女をどんどん、
「容疑者に違いない」
 という気持ちが高まってくる中での、この証言と、それを裏付ける、
「鉄壁のアリバイ」
 捜査本部の落胆は、目に見えているようだった。
「まあ、しょうがないか」
 と、切り替えが早かったのは、桜井刑事だった。
 これまでにも、同じようなどんでん返しを食らったことは何度もあったはずだ。
 それを思えば、
「これからの捜査を心が折れないままにやっていくしかないか?」
 と考えながら、
「平野聡子が、どれだけ計算して動いているのか?」
 ということが気になるところであった。
 この期に及んで、
「まったく計画性のない」
 ということはありえないということだといってもいいだろう。
 確かに、
「鉄壁のアリバイ」
 ではあるが、それだけに、ワザとらしさというのは、否めない。
 逆にいえば、
「わざとらしくなければ、鉄壁のアリバイなどというのは、存在しないのではないだろうか?」
 と言える気がする。
「人の意見に逆らいたくなる」
 という人の考え方で物事を見るというのも、ある意味楽しいもので、
「殺人事件なのに、不謹慎な」
 という人もいるかも知れないが、その考えが、
「事件解決に繋がるかも知れない」
 と思っている意図もあるだろう。
 そういう意味でいくと、事件が謎に包まれていることで、いろいろな想像ができるというものだ。

                 事件というものの「真実」

 事件において、
「本当の被害者というものが、誰なのか?」
 ということである。
 見えていることとしては、
「人が殺されている」
 ということと、
「その凶器と思しきものが、人の集合ポストから見つかった」
 ということ、さらに謎として、
「血液に動物の血が付着している。それによって、殺害現場が別ということが、ほぼ確定した」
 ということ、
「容疑者と思しき女が行方不明」
 ということ、
「宗教団体が絡んでいるかも知れない:
 ということくらいであろうか?
 一つ気になるのが、
「なぜ、動物の血が混ざっている」
 ということが起こったのか? ということである。
「犯行現場が別だ」
 ということを示しているということになるのだろうが、それよりも、
「そのことが、確定させた」
 ということに、何かわざとらしさが感じられ、一応の容疑者のアリバイも、同じように、わざとらしかが感じられるということで、今回の事件をどのように見ていくかということが問題になってくるであろう。
「とにかく、今回の事件は、至るところに、誰かの意思、あるいは、意図が画策されているように思えるのだ。
 ということになると、
「逆も真なり」
 ということも考えなければいけないだろう。
 この間、全国ニュースにもなったことで、
「夕方の六時というから、まだまだ会社が終わって帰宅ラッシュの真っただ中の時間の、都心のターミナル駅から、徒歩2分くらいのところで、刺殺事件があった」
 ということを報道していた。
 K市よりも、さらに大都会で、県庁所在地の中心駅のすぐそばだった。
「新幹線も止まるようなそんな大きな駅で起こった、大事件」
 ということであった。
 被害者は、30代の女性ということであったが、その女性は、
「ストーカー被害を警察に訴えていた」
 ということで、その後の経過として、
「裁判所から、接近禁止の命令まで出ていた」
 というではないか。
 これだけを聴けば、
「オンナに付きまとっている男性が、ストーカー防止条例に逆らって、女に近づき、そのままの勢いで、刺し殺した」
 ということであったが、果たして、そのあらすじ通りでいいのだろうか?
 もちろん、
「殺傷してしまった」
 ということに、弁解の余地はないのかも知れないし、まだ逃げているということなので、、
「早く捕まってほしい」
 という考えにウソはない。
 しかし、事実はどうなのか分からないのだ。実際に警察が捜査をして、その男が犯人であれば、逮捕されて、そのまま事情聴取が行われ、起訴されるか、不起訴になるかは、検察官の判断になる。
 警察は、なるべく、
「実証」
 を固め、犯人の犯行を立証できるだけの証拠を集めて、裁判で明らかにするようになる。
 つまり、そこから先は、裁判ということになる。
 ただ、実際に裁判となり、
「無罪」
 ということだってないとはいえない。
「証拠不十分」
 ということも十分にありえるし、優秀な弁護士に掛かると、警察の提出した証拠を、ことごとく否定されるということもあるだろう。
 下手をすると、警察の提出した証拠を逆手にとって、無罪の証拠とされることだってある。
 実際に、その人が犯人ではないということもあったりするくらいで、警察が逮捕して、起訴するところまでが警察にとっては、ある意味ゴールであるが、
「事件の解明」
 という意味では、まだまだこれからだといってもいいかも知れない。
 この、
「ターミナル駅周辺での女性殺傷事件」
 というものも、表に出ていることだけを鵜呑みにして、
「このストーカー男が悪いんだ」
 ということで、情報番組などで煽ってしまうと、
「却って、警察の捜査の枷になってしまいかねない」
 と言えなくもないだろうか。
 というのも、
「情報番組というものには、コメンテイターと呼ばれる連中がいる」
 というところからが問題で、
「放送局からくぎを刺されているか、あるいは、原稿のようなものがあるのかも知れない」
 のであるが、
 MCと呼ばれるメインキャスターは、ある程度中立であるが、コメンテイターと呼ばれる連中は、
「あくまでも、多数派意見を、あたかも、それが当たり前のことのようにいう」
 というのが多い。
作品名:完全犯罪の限界 作家名:森本晃次