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完全犯罪の限界

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「そんな恐ろしい星が、本当に存在するとは思えないけどな」
 というと、
「だから、幻の星なのさ。実際にも存在しているかどうか分からないが、何となく気配のようなものを感じる。それって、この世界にだって、いくつも存在しているじゃないか。この我々の世界よりも、規模的にはあるかに大きい、予測不可能なことを、天文学的なという表現をするじゃないか、まさに、その想定外の広さがあるところなのだから、無数に存在するといってもいいんじゃないかな?」
 というのであった。
「言われてみれば、一理ある。いや、それが当たり前というような気持ちだってあるではないか。
 そんな不可思議な星が宇宙には無数に存在している。その話を疑わなかった老刑事も、今回の捜査本部の中には入っていた。
 だから、その老刑事は、今回のこの宗教団体を、まさしく、その、
「暗黒の星」
 をイメージしていたのだ。
 そんな中において、浮かんできた今回の被害者として、
「ほぼ間違いない」
 と言われた、
「加藤正明」
 という男であるが、必死でその正体の把握を進めようとしていたが、なかなかその正体が分からなかった。
 宗教団体からは、
「殺人事件の捜査ということなので、こちらも、協力します」
 ということで、
「教団幹部、信者などへの聞き込みなどを制限することはしない」
 ということであったは、どこまで信用していいのか分からないところもあった。
 確かに、話が聴けるといっても、宗教団体が、
「いいよ」
 といっても、個人個人がどう感じているかということである。
 警察を快く思っていない人も多いだろう?
 何しろ、宗教団体に関係しているような連中だ。俗世間の人たちとは隔絶していて、扱いにくいというのも分かる気がする。
 しかし、刑事によっては、
「一番扱いにくいのは、今の俗世間の人間であり、さすが俗世間というだけの人がいて、人の性格など、その人間の数だけある」
 と考えると、やってられないと思っている人も少なくないだろう。
 そう、人の数だけあるのだから、その相手をする自分だって、同じレベルの人間でしかない。
 一人で、たくさんの人間の相手をするのだから、大変なのは、もちろんのことである。
 この加藤正明という男も、
「暗黒の星」
 のような人物だったようだ。
 しかし、捜査をしているうちに分かってきたのが、
「この男が、ずっと、平野聡子を自分の女としていて、洗脳していた相手だった」
 ということがある程度、確定しているということであった。
「実際に行方不明になった時期と、死体の死亡推定の日時に、矛盾はない」
 ということも分かってきた。
 そして、鑑識の報告で、
「被害者の血液型と、ナイフに残っている血液型とが一致した」
 ということは分かっている。
 しかし、もう一つ不思議なことがあったようで、
「実は、あのナイフに付着していた血液なんですが、どうも、一つではないようなんです」
 ということであった。
 これには、一瞬、捜査本部も、
「ギョッ」
 として、緊張が走ったが、
「ああ、複数といっても、もう一つの血液は、動物の血のようなんです。ネコかイヌかというところでしょうね」
 というのであった。
「なんだ、人間じゃないのか?」
 と、それを聞いた刑事はそう思ったのだが、だが、それならそれで、
「もう一つ謎が増えた」
 ということであろう。
 謎というのがどういうものなのか、容易に判明できるわけではないのだが、
「一つ一つ解決していけばいいのだろうが、何も解決しないうちに謎だけがどんどん明るみに出る」
 ということで、
「事件はやはり厄介だ」
 ということになるのだろうが、逆に、
「謎が多いということであれば、さらにこの謎がどんどん深まってきて、ある程度で切ってしまうまで待つしかないのかな?」
 とも考えた。
 なるべく、謎であっても、すべてが出てくると、その一つの謎を解決するパーツが、その他の謎の中に存在しているとすれば、
「まるで、ババ抜きをしているように、それぞれで相殺し合って消し合ってくれれば、最後に残ったジョーカーが、真実ではないか?」
 と言えるような気がしてきたのだった。
 確かに今表に出てきていることは、まったく謎を解決できるところまで至っていない。それを思うと、
「早くすべてのピースが出てきてくれるような捜査がまずは、先決なのではないだろうか?」
 と言えるのだと思うのだった。
 とりあえず、今出てきていることで繋がったのは、
「被害者である加藤正明と、部屋の住民で、行方不明となっている平野聡子との関係というくらいしかない」
 ということであった。
 しかし、それが分かれば、今度は、
「二人の関係」
 ということで、いろいろなことが、芋づる式に発見されるかも知れないという思いもあったが、それは、若干、甘い観測ではないだろうか。
「却って、紐がこんがらがってくるかも知れないな」
 という、ネガティブな発想になる捜査員もいた。
 というのは、それだけ、この事件に、謎が多いということなのかも知れない。
 そこへもってきて、もう一つの謎が増えた。
「動物の血が混じっている」
 ということであった。
 あのマンションは、動物飼育が不可だったこともあり、
「殺害現場が別である」
 ということを証明しているといえるのではないだろうか?
 ただ一つ、被害者と容疑者がハッキリしたということは、進展であろう。
 容疑者が行方不明であっても、今度は、
「重要参考人」
 として捜査できるのだから、少しは進展したといってもいいだろうか?
 ただあくまでも、参考人であるから、プライバシーに抵触してはいけない。難しい捜査であることに変わりはないだろう。
 ただ、ここにきて、もう一人の容疑者が浮かんできた。
 それは、平野聡子の元旦那が交通事故で死んでいたということが分かったからだった。
 元旦那ということは、聡子は離婚していた。その理由が、宗教団体への入信だったのかどうかは定かではないが、一応、まわりからはそのように言われているという。
 聡子の宗教へののめり込みというのは、周りから見ていても、
「ヤバイ」
 と思われるほどであったが、だからと言って、宗教への入信は、
「個人の自由」
 である。
 それを、友達くらいの立場で何とかできるわけでもないだろう。
 簡単にそれができるくらいなら、とっくに旦那ができているといってもいいだろう。
 ただ、一つ気になっている人もいた。
「彼女の宗教への入信を、旦那はそんなに嫌がっているわけではなかった」
 という人もいたのだ。
 何とその時、旦那にも女がいて、その女にかなり傾倒していたともいわれている。
 逆に奥さんが、宗教にのめりこんでくれる方が、旦那にとっても、身動きがとりやすいという意味で、気が楽だったのかも知れない。
「お互いに好きなことができるのだから、何も離婚なんてする必要もないのに」
 ということで、二人が離婚したということに、何かしらの疑念を感じていたということであった。
 ただ、一つ、捜査が進んでいくうちに、分かってきたことがあった。
 何と、男が殺されたと思われるその時、
作品名:完全犯罪の限界 作家名:森本晃次