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完全犯罪の限界

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 しかし、ハッキリとした証拠があったわけではないので、あくまでも疑惑というだけで、捜査されたということも、警察で一部の人が知っているくらいで、表ざたには一切なっていなかった。
 だが、この宗教団体に関しては、警察側もマークしているが、刑事課ではそんなことまで分からない。だから、この女が捜査線上に浮かんだことで、初めて、この団体が浮き彫りになったのだった。
 ただ、平野聡子という女の、
「ペア」
 となっている男が誰なのか?
 ということは正直警察も分からなかった。
 そこに行くまでに、彼女から捜査が外れてしまったので、結局闇から闇になっていたわけだが、
「もし、あの時、もっとちゃんと調べていれば分かったかも知れない」
 ということであるが、今となっては、それを追うことはできない。
 しかし、今回の捜査は、
「殺人事件」
 である。
 今のところの最重要容疑者が、この平野聡子だった。
 何と言っても、行方不明となっていることが一番である。まずは、彼女の行方を追うことが先決だった。
 マスゴミの発表として、
「駅前マンションの空き室で、男の死体が発見され、警察は男の身元の捜査と、その部屋の元住民である、行方不明となっている女性の行方を追っている」
 というような、三面記事的な扱いであった。
 事件としては、センセーショナルではあるが、あまりにも情報が少なすぎるので、報道のしようがないというのが、本音ではないだろうか?
 ただ、この平野聡子の関係者ということで、かつて、
「美人局問題があった」
 ということで、旧教団体を捜査していたところからの状況提供で、浮かんできたのが、加藤正明という男であった。
 実際に、その情報を元に捜査していると、さすがに宗教団体も、
「殺人事件の捜査」
 ということなので、むげに断ることもできず。
「できるだけの捜査に協力します」
 ということになり、被害者の写真を見せ、
「加藤さんのようだ」
 ということで、死体の検分を行ってもらうと、
「加藤さんです」
 ということで、数日かかったが、やっと被害者の身元が分かったのだった。
 だが、この男が過去にどのような人間だったのかということは、宗教団体の方にも分からなかった。
「おたくの幹部なんでしょう?」
 ということであったが、
「我々は、その人が俗世でどういう人間だったのかということは、ほとんど感知していません」
 というではないか。
 逆にいえば、
「彼らにとって、利用できさえすれば、どういう人間かということは、関係ない。どうせ、自分たちが洗脳するのだから」
 ということのようである。
 実際に、宗教団体を見ていると、
「何だ、ここは?」
 というような、
「歪な集団」
 だった。
 確かに、表とは隔絶された、ここよりも歪な旧教団体は存在した。
 しかし、それは、昭和の昔だったりするのだが、そういう意味では、
「いまだにこんな団体が存在しているのか?」
 というところであった。
 表に出ている宗教団体の収入源は、細々と行っている内職をちょっとした販売ルートに乗せているというだけで、それは、別に犯罪ではなく、普通の団体維持のための、正当な行為であった。
 しかし、それだけでとても、団体を維持などできるわけもない。
 そこで表に出てきたことが、
「美人局疑惑」
 であった。
 ただ、それだけでも維持がでくるわけもなく、いろいろ調べられてきたところによると、
「男による色仕掛けで、女たちは、性風俗業界で、働いている」
 という。
 どちらかというと、こちらの方が主力の収入になっているようで、性風俗業界と、この団体とは、裏で繋がっていると言われている。
 性風俗業界の方も、宗教団体も、お互いに、その関係が白日の下にさらされるというのは、困ったものだと思っていた。
 性風俗業界も、
「キャストが宗教と関わっているなどということを客に知られると、店のイメージが悪くなって、集客に問題がある」
 と思っていて、逆に宗教団体も、
「収入源を風俗だと思われて、変な捜査を受けると、裏でやっている美人局が警察に疑われ、団体の存続の危機になってしまう」
 ということであった。
「だったら、美人局のようなことをやめればいい」
 ということであったが、こちらは、実は、女性側が困ると言い出すだろう。
 というのは、
「この美人局で得たお金の半分以上は、女の子の懐に入る」
 ということであった。
 この体制があるから、女の子も、風俗で働くことを容認し、その見返りとして、スタッフが、自分のしもべになるといういびつな関係が営まれている。
 このような歪な関係の宗教団体であるが、その全容は警察にもつかめていない。
 というのも、
「やっていることは、おおむね分かってきているのだが、この団体の目指す、最終目標が何にあるのかが、よくわからない」
 ということである。
 正直、この団体が、宗教団体であるということは分かっているのだが、何を目的にしたものなのかが分からない、
 自分たちの宗教を広めて、
「皆さんを救いの道に導く」
 というようなあからさまなことはまったく公表されていない。
 教祖はいるにはいるが、その教祖が、何か教えのようなものを持っているのかというと、そういうわけではないという。
 確かに、秘密が多く、おとんど、表には出てきていない団体であるが、それだけに、この団体の存在は、
「何か事件でも起こらなければ、大っぴらになることのない団体だ」
 ということであった。
 実際に、警察の宗教団体を取り締まる課でも、こんな団体があるとは思ってもみなかった。
 これは、昔の話のようだが、昭和の時代の頃に、
「ほとんど、表に出てこない、謎の宗教団体というものがあった」
 という。
 その団体のことを、
「暗黒の団体」
 と、警察は呼んでいた。
 というのも、
「存在は確認できるのだが、実態がまったく見えてこない」
 というものだったようだ。
 しかも、別に悪事を働いているわけでもなく、かといって、何をやっているのかも謎だった。
 まるで、
「その存在というものを、まったくかき消そうとするのが、その団体の存在意義だ」
 とでもいうような、おかしなところであった。
 そんな時、一人の刑事が、
「宇宙には、光を一切放たない暗黒の星があるということだが、あの団体はそういう組織なのかも知れないな」
 といっていた。
 つまり、
「光というのは、自らが光を発する恒星と、その光をうけて、反射させることで自分の存在を他の星に示すという、惑星、衛星のようなもので構成されているんだ」
 ということであった。
 ここまでは、誰もが求めることであった。
「だけど、宇宙には、光を発することはなく、光が当たっても、それを吸収してしまうという星が存在していると言われている」
 という。
「それってどんな星なんだ?」
 と聞くと、
「一言でいうと、邪悪な星だね。光を発しないから、近づいても分からない。その間に何をされるか分からない。暗黒に紛れて、その保護色で近づいてきて、相手を一瞬にして破壊する。そんな星だと思っていいんじゃないかな?」
 というので、
作品名:完全犯罪の限界 作家名:森本晃次