損得の犯罪
「拡大していった事業を縮小していく」
というのが、まず一つ。
さらには、ムダな経費を使わない。細かいことを言えば、
「使っていない場所の電気を消す」
などというところから徹底させ、あとは、都心部にある事務所を、交通の便が少々悪くても、郊外に持っていくなどという、家賃の無駄を省いたり、などということをしていた。
しかし、一番の経費節減は、経費で一番大きなところとして、どこの会社もネックである、
「人件費」
ということになるだろう。
いわゆる、
「リストラ」
という言葉がささやかれ、それまで言われていた、
「窓際族」
などというもののような生易しいものではなく。
「今辞めれば、退職金は弾む」
という形での、
「早期退職者を募る」
というやり方で、人員を削ったりしていた。
普通であれば、
「早期退職などという言葉に引っかかったら、後悔する」
と思うのだが、当時は、
「どうせ、放っておけば、いずれ、辞めなけれないけなくなるんだ。ここで少しでもたくさんもらっておいた方がいいかも知れない」
ということで、早期退職を考える人もいるだろう。
そもそも、
「早期退職に乗らずに、まだここで粘ろう」
と思ったとしても、それ以前に、しがみついた会社がもつとは言い切れないだろう。
それなら、
「少しでも多く退職金を貰って、次の会社を探した方がマシだ」
と思うことだろう。
しかし、結局、みんなが同じことを考えて、世の中に失業者が溢れてしまう。
経費節減のために、人を削っている会社ばかりなので、この時期に、人員を募集しているところなど、普通に考えればないだろう、
それでも、一人の募集に、面接者が、ハイエナのごとく集まってくる。
考えてみれば、そこがいい会社ということは、考えにくいだろう。
考えられることとして、その会社は、今でいう、
「ブラック企業」
であり、社員が入っても、すぐに辞めたり、身体を壊したりするような会社だということは、ちょっと考えれば、容易に想像がつくというものだ。
だから、本当は簡単に辞めるべきではなかったのかも知れない。うまく再就職できたとしても、ブラックな会社にいいように使われて、使えなくなったら、捨てられるという運命だと思えば、どちらがいいのか?
ということである。
ただ、この選択は非常に難しい。
前の会社にしがみついていたとしても、いずれは、辞めなければいけなくなるだろう。かといって、それまでに何ができるのかというと、それも難しい。
中には、勉強して、新たなスキルを身に着けて、それを武器に企業に自分を売り込むということもできるのだろうが、その企業があてにならないのだ。
企業もいつ潰れるか分からない状態で、人も、失業者が溢れている。
普通なら、
「売り手市場」
あるいは、
「買い手市場」
ということで、どちらかが強いのだろうが、その当時は、どちらも弱いのだ。
確かに、雇う方が強いのだろうが、それは見せかけの強さであり、それに騙されて、
「よかった。新しい会社に就職できた。この時代に人を募集しているのだから、きっとしっかりした会社なのだろう」
と思ったとすれば、それは大きな間違いではないだろうか。
「逆も真なり」
ということで、入ってみれば、どうせすぐに、
「何かがおかしい」
と感じるようになり、気が付けば、自分が、
「会社の奴隷」
と化してしまっていることに気づくだろう。
そして、その時初めて、
「そっか、募集を掛けていたということは、それだけ、社員の出入りが激しいということか」
ということに気づかされるのであった。
「会社なんていうものは、信じられるものではない」
と思った人も多かったことだろう。
人件費の節減ということで、企業側が次に考えることとして、
「非正規雇用」
というものの採用であった。
いわゆる、
「パート」
「アルバイト」
の類であるが、非正規社員ということで、その頃から注目されるようになったのが、
「派遣社員」
と呼ばれるものだった。
アルバイトというと、会社が新聞や、雑誌などに掲載し、募集を掛けるものだが、派遣社員というのは、企業と、従業員との間に、派遣会社というのが絡むもので、その分、会社も従業員も安心できるというものだ。
従業員側も、いきなり解雇されることもないし、企業側も、急に来なくなったり、その日事情でその人がこれなくても、誰か他の人を派遣するということもできるので、
「穴をあける」
ということはないので、安心というものだ。
しかも、その間に、
「人材派遣会社」
が絡むことで、利益が生まれることにもなる。
企業としては、
「正社員よりも、給料が安くて済む」
ということと、アルバイトなどよりも、解雇しにくいということもあるが、契約期間も、三か月ほどということで、そんなに長い間ではないので、契約延長を更新しなければ解雇はできるということで、正社員を雇うことでのリスクは少ないだろう。
社員側としても、それほど責任を負わされることもなく、残業もほとんどない。アルバイトに比べて、覇権会社が間に入ってくれることで、何かあった時のクッションの役目もしてくれる。
というようなことで、社員側もそれなりにいいことが多そうだ。
今の企業に、派遣社員などが多いのは、この時からであろう。
バブルが弾けたことで、いろいろな改革が行われ、今のような社会になったのだが、さすがに、バブル時代の問題はなくなってはきたが、経済は一向によくはならない。
その問題は、何がいい悪いということが、いまだに分かっていないからなのかも知れないが、もっといろいろなところで、ひずみが生まれたことでの悪影響もあるのだろう。
そんな中で、バブルが弾けて、世の中がカオスになっていた時代には、いろいろな商法があり、問題が発覚して消えていった業界もあった。
一番印象に残ったのが、今から10数年くらい前に流行った、
「自費出版社系」
の会社だったのだ。
詐欺商法
バブル経済というものが弾けてから、会社は、
「経費節減」
ということを言い出した。
しかも、
「あれだけ広げた事業を縮小する」
ということが叫ばれ始め、当然のことながら、それまで、
「働け働け」
と言っていた会社が、今度は、
「残業するな」
ということになったのだ。
どうせ、産業をしても、残業手当が出るわけでもない。しかも、給料は下がり、賞与の支給もなくなったという時代があったくらいだ。社員、一人一人が節約しないといけないのだ。
そんな中で、それまでは、
「残業しろ」
という風潮があり、その分(全部とは言わないかも知れないが)残業手当も貰えたのだが、仕事が忙しくて、そのお金を使う暇がなかったというのが、バブルまでの時代だった。
しかし、それが、今度は、人件費節減ということで、残業もしないし、給料尾そんなにない。
となると、今度は、
「貧乏暇あり」
ということになるのだ。