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損得の犯罪

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「まるで狙っていたかのようではないか」
 と思われるもので、警察からすれば、まるで犯人に嘲笑われているかのようで、これほどの屈辱というのはないかも知れない。
 同じように、人がエレベータに引っかかっていて、パスケースが、やはり同じところに置かれている。凶器もナイフであり、もちろん、同じ凶器のわけはないというものだったが、こちらも同じように、ナイフで刺されて死んでいたのだ。
 さすがに、二度目ともなると、坂上も落ち着いていて、110番をすると、K警察の、桜井刑事の名前も出したくらいだった。電話受付の人もさすがに数日前の事件のことまで覚えているわけもなく、話が通じないようだったが、逆に、通報者があまりにも落ち着いているのが、却って怖いくらいだったようだ。
 桜井刑事と、迫田刑事は現場に飛んでいった。
「前の事件も解決したわけでもないのに」
 と思いながら、迫田刑事が頭の中で、
「これは連続殺人事件なのだろうか?」
 と考えていた。
 ということになると、被害者の二人には共通点があるということになる。
 すると考えられることとしては、昔の自費出版社系の話であったり、それ以外であればタクシー仲間とも感がられる。
 そんなことを考えると、
「何かが殺人を誘発しているのか?」
 と、考えられなくもない。
 まずは、現場に行って、この目で見ないことには、どうしようもないのであった。
 そこに転がっている人を見ると、初めて見る人だったので、少なくとも、
「タクシー会社関係」
 というわけではなさそうだ。
 一応、捜査会議の中で、
「被害者が、自費出版社関係の会社の社員だった」
 ということは話をしておいた。
 しかし、本部としては、
「そんな化石のような昔の話が、今回の事件に関係しているとは考えにくい」
 と、それこそ、
「昭和の頃のミステリー小説の読みすぎなのではないか?」
 と言われるようになり、捜査方針から、早々と却下されていた。
 だが、それでも、迫田刑事は、今回の事件に、
「自費出版社関係が、何らかの形で影響している」
 と考えているようだった。
 だから、簡単に説は否定できなかったが、警察というところは、
「管理官のような立場の人であっても、一旦捜査本部で決まった捜査方針に従わない場合は、捜査から外される」
 ということもあるようだ。
 だが、それでも、自分の勘を信じている人もいるようで、たまに、
「捜査が混乱すれば、自分の意見が浮上してくる」
 と考えている人も結構いるようだった。
 そんなことを考えていると、
「何か、被害者から、自費出版関係の証拠のようなものが出てきてほしいな」
 と思うのであるが、
「ただ、今回の事件が、連続殺人だという気持ちには、一足飛びに考えることができないのであった」
 と感じるのだ。
 急いで現場に行くと、刑事も皆目をこすって、さらに目を凝らす。
「本当にデジャブではないか?」
 と皆が感じていることのようであるのだ。
 連続殺人事件なのかどうかは別にして、模倣犯の可能性はあるだろうか?
 実際に、テレビなどのニュースで報道されたことを考えれば、
「犯人にしか分からない」
 ということもいくつかあるような気がする。
「やはり、連続殺人事件ということで、捜査するのが一番だろう」
 ということで、捜査本部も一本化され、
「戒名」
 にも、連続殺人という文字が入れられたのだ。
「ところで、今度の被害者は、どういう人物なのかな?」
 ということで聞かれた捜査員の刑事は、警察手帳に書いたメモを見ながら、
「今回の被害者は、山形という人物で、年齢が、25歳です。彼は、このマンションの住人ではなく、近くのアパートの住人でした。今は無職のようで、コンビニのアルバイトなどで食いつないでいるようで、就職してもすぐに辞めてしまうということでした」
 それに桜井刑事が質問する。
「それは、単純に仕事が嫌いとか、飽きっぽいとかいうことが原因なんですか?」
 と聞かれた刑事は、
「いいえ、そういうことではないようで、どちらかというと、仕事は真面目で、上司も本当は働いてほしいと思っているようなんですが、いきなりキレたりすることが多いようで、それで、なかなか続かないということです」
 というのだった。
 それを聞いた桜井刑事は少し考えたが、またすぐに、
「何か、育ってきた環境に問題があるのかな?」
 という質問をしてみた。
 どうして桜井刑事がこういう質問をしたのかというと、前の被害者が、曰くありげだったことで、この人も、
「何か悪いことに加担しているのではないだろうか?」
 と思ったからのようだったが、どうも、その発想に間違いはなかったようである。
 というのも、
「そうなんですよ。実は、これは被害者の叔母に当たる人から教えてもらったんですが、被害者の母親は、どうやら、新興宗教に入信していたことがあったようで、その宗教というのが、ここ20年くらいの間、ロクなことのない団体ということで有名なところのようなんです」
 というではないか。
 みなまで言わずとも、皆にはそれがどこの宗教家分かったようだ。
 といっても、この間、暗殺事件で問題になったところではないようで、どちらかというと、その宗教と紛らわしい活動をしていて、どうやら、
「あの宗教の上前でも撥ねようということなのかも知れない」
 と言われているところだった。
「困ったものですね」
 と、本部長が、ボソッと言ったが、
 警察とはいえ、宗教団体というところは、特殊法人であることもあり、なかなか警察の捜査が行き届かないところだということで、どこまで警察としての国家権力が通用するか、難しいところであった。
 警察内部であれば、
「仕方ないな」
 ということになるのだろうが、しかし、それ以上に、マスゴミであったり、世間の目は、そういうわけにはいかず。
「許してくれるわけはない」
 ということになるだろう。
「警察というところは、どうして、こんなに宗教に弱いんだ」
 と言われかねない。
 かつての、テロ事件でもそうではないか。
「警察がもっと毅然とした態度を取っていれば、あんな恐ろしいことはなかったんだ」
 と言われたことで、新しい法律ができたりもしたが、結果としては、どうしてもいたちごっこにしかならず、堂々巡りを繰り返すだけになってしまうだろう。
 そんなことを考えていると、
「警察と宗教団体」
 というものは、ある意味切っても切り離せないもので、下手をすると、宗教団体というものが、
「必要悪」
 と見なされかねないというわけである。
 そんな宗教団体であるが、今問題になっているのは、
「団体が家族のうちの一人を信者にして、その一人が、借金をしまくり、家族に迷惑を掛けたまま、家にも帰らず、家庭崩壊という問題が大きい。
 そんな中で、
「配偶者を失ったもう片一方が、子供の面倒を見ることもなく、その結果、家庭崩壊となる」
 ということであった。
作品名:損得の犯罪 作家名:森本晃次