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損得の犯罪

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 と思いながらも、その理由が何なのかということが分かっていなかったのだった。
 とにかく、誰かが倒れているということは分かったが、オートロックなので、どうすることもできない。かといって、そこに倒れている人が本当はどういう状態なのか分からないので、迂闊なことはできない。警察を呼ぶのも危険だと思ったので、とりあえず、オートロックのところにある、非常ボタンを押した。その横には、インターホンがあったが、これは、各部屋に繋がっているものだと思ったので、最初は触らなかったが、非常ボタンを押した瞬間に、その電話がコールを始めた。
「わっ」
 と思って驚いた配達員だったが、電話に出て見ると、
「こちら、○○警備、どうされましたか?」
 という返事が返ってきたので、配達員は、
「あ、警備会社の人ですか? こちら新聞配達の人間なんですが、どうも、エレベータのところで人が倒れているみたいなので、とりあえず、非常ボタンを押しました」
 というと、
「警察には知らせましたか?」
 と言われたので、
「いいえ」
 というと、
「大至急知らせてください。我々も、すぐにそちらに向かいます」
 ということであった。
 明らかに大げさになってしまったが、警備会社がそういうのだから、その指示に従うしかないだろう。
 元々、気になっていたのに、警察を呼んでいいものかと思っていたモヤモヤがなくなる分だけいいのかも知れない。
 電話を切って、110番を押した。
 すると、警察も連絡を取ってくれて、すぐに来るという。
 配達員は、エレベーターを見ている限りでは、明らかに、倒れている人は身動き一つしない。
「ひょっとして、ずっと誰かが倒れていると思っていたけど、実際には、人間ではなく、何かの物体なのかも知れない」
 とも思った。
 それならそれで、ホッとするのだが、今度は、
「人間ではないかも?」
 と思うと、逆に見ているうちに、人間にしか見えないと思えてくるから、不思議なことであった。
 まずやってきたのは、警備会社の人であった。制服にヘルメットという装備は、いかにも、コマーシャルで見たいでたちで、早速話を聴かれた。
「人なのかどうなのかも自信がなくなってきたんですが」
 というと、
「分かりました、確認してみましょう」
 といって、オートロックを、キーで解除して、エントランスに入った。
 早速中に入ってみると、そこにいるのは、果たして、人間だったのだ。
 その表情は、断末魔に見えた。完全にどこかの虚空を見つめていて、まったくどこを見ているのか分からない状態は、
「完全に死んでいるんだろうな」
 としか思えないのだ。
「警察には知らせましたか?」
 と聞かれたので、
「ええ、誰かが倒れているように見えるので、通報しましたと言いました」
 というと、
「ええ、それで正解です。警察もすぐに来るでしょうね」
 と言っているうちに、マンションの前に、赤い光が点滅しているように見えたのは、パトランプが回転しているからだったのだ。
 パトカーから数人の刑事が下りてきて、
「どんな状態ですか?」
 と聞かれたので、警備員が、
「どうやら、死んでいうようですね」
 と、平気な顔をして答えた。
 どうやら、こういう場面は慣れているのか、慌てることもなく、警察の質問に答えていた。
 さすがに、実際にどうなっているかというところを怖くて見る気にもなれなかった配達員だったが、
「死んでいるようだ」
 と言われて、第一発見者としても、見ておかないといけないと思って、覗き込んでみた。
「明らかに死んでいる」
 と感じたのだが、それは、先ほど警備員が感じたのと同じ意識をその表情から感じたからだが、死んでいる人の胸には、ナイフが突き刺さっていて、胸から、鮮血が流れ出ているようだった。
 まだ流れているように見えるところから、
「死んでそんない時間が経っていないとおうことか?」
 と感じたのだが、それは、逆に言えば、
「ひょっとしたら、犯人とすれ違った可能性もあったということか?」
 と考えると、怖くなってきたのだった。
 刑事は、念のために鑑識もつれてきているようだった。
 こちらも、警備員に負けず劣らずの装備をしていて、早速、検死に入っていたのだ。
 いつの間にかまわりに、黄色い、
「規制線」
 が張られ、いかにも、
「事件現場」
 という様相を呈していて、もし、これが、もっと遅い時間であれば、このあたりに、たくさんの人だかりができていることは、容易に想像がついた。
 刑事は、とりあえず、他の応援も呼んだようで、この現場が明らかに、
「殺人事件現場」
 であるということは、間違いなかったのだ。
 鑑識が見る限り、
「犯行時間は、今から2時間以上前ということですね?」
 というと、
「ハッキリとした時間は分からないんですか?」
 と言われると、
「どうやら被害者は、刺された後、少しだけ虫の息でありながら、生きていたようなんです。だから、被害者が絶命した時間は、解剖でハッキリするでしょうし、ここでも大体は分かりますが、刺されたという、いわゆる犯行時間は、今のところハッキリとしないということですね」
 と、鑑識は言った。
 なるほど、被害者が苦しんだ様子が見て取れる気がする。刺されてから絶命するまでに時間が掛かったということは、それこそ、
「この事件が、残虐性のあるものだ」
 ということの証明であろう。
 それともう一つ、先ほどの扉の開閉の疑問が近づいてみると分かった。
 というのも、
「エレベーターの開閉ボタンの閉ボタンを、誰かがセロテープのようなもので、止めていた」
 というのが原因だった。
 子供騙しであったが、それだけに、
「このことにどういう意味があるのか?」
 と考えると、不気味な気がした。
「理由が分からないというのは、不気味だな」
 と、配達員は感じた。
 しかも、普通であれば、元々が窪んでいるので、わざわざ何かスポンジのようなものをあてがってその上から閉ボタンを留めている。最初から計画のうちだということであろう。
 刑事も、
「これは何のためにしたんだろうか?」
 ともう一人の刑事にいうと、
「何でしょうね? こんなことをしていれば、上から呼んでも上にはいかないでしょうからね?」
 ということであった。
「でも、もう一台ありますよ」
 と一人の刑事がいうと、
「ああ、そうだね。でも、ちょっとおかしな気がするんだけど」
 という。
「というと?」
 と聞くと、
「だって、こっちのエレベーターには、3回までしかありませんよ」
 というのだった。
 それを聞いたもう一人が、
「それをいうのであれば、こっちの開いているエレベーターだって、3階を示しているじゃないか?」
 という。
 このビルの構造を知っている人であれば、
「ふーん、そういうことか」
 と思うだろう。
 警備員は、もちろんのことながら、新聞配達員も、毎日来ているのだから、それくらいのことは分かっていて当然だった。
 警備員が、このビルの歪な構造を警察に説明していた。
作品名:損得の犯罪 作家名:森本晃次