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自殺後の世界

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「警察じゃなくとも、誰にでも聞けるような質問をいちいちしてくるな」
 というイライラが募っていたほとだったが、その思いというか、予感は当たっていたということであろう。
「警察なんて、そんなものだわ」
 と思っていたが、その思いはその時から始まったわけではなく、もっともっと昔からだたような気がする。
 おにいちゃんの事故は、もちろん、
「殺人の可能性もあるのではないか?」
 ということで、調べられた。
 一緒に行った中に怪しい人もいないわけでもなかったが、結局、誰が怪しいという決めてもないし、実際に、事故を、
「事件だ」
 といって捜査するだけの決定的な証拠もなかった。
 こういう場合。決定的な証拠でもない限り、普通は、捜査を進めることはできない。警察というところはそういうところで、
「怪しきは罰せず」
 ということになるのだ。
 要するに、
「面倒くさいことに首を突っ込むことを嫌がる」
 というべきだろう。
 下手に誰かを犯人にして検挙したとしても、それが後になって、
「冤罪だった」
 などということになると、芽も当てられない。
 その時の捜査として、ボートに確かに穴のようなものが空いていたということであったが、そのボートの貸し出しはランダムに化しだされるもので、
「不特定多数と狙った犯罪」
 ということであればいざ知らずだが、
「特定の誰かを狙った犯罪などということができるはずもない」
 のであった。
 そういう見解に至ったことで、警察は、
「事故だ」
 と判断し、マスゴミにもそのように発表した。
 だから、ニュースでも、
「ニュースフラッシュ」
 程度の、まるで、スライドされるかのようなニュースが、三面記事のように流れただけだったのだ。
 だから、世間では、翌日には誰も覚えていない程度のもので、仲間内で、数日もすれば、話題にも上がらない程度のことであった。
 実際に、一緒に遊びに行っていた連中の方が特に、余計に、
「話題にしよう」
 などと思うわけもない。
「この話はタブーだ」
 と言わんばかりに、誰も何も話題にすることはなかった。
 だから、この話題は、家族以外からは忘れ去られ、最近では家族の間でも、
「なるべく触れないようにしよう」
 という感じになってしまっていた。
 確かに家族としては、いつまでも、ひきづっているわけにもいかないということであろう。
「うちには、みゆきがいるんだから。いつまでも、この話題を引きづっていても仕方がない」
 と。父親が判断したのか、事故から半年が経った頃には、
「この話題は、タブーだ」
 ということになっていた。
 ただ、誰も話題にしないだけで、気持ちの中で忘れるなどということはありえない。それを思うと、家庭内でのぎこちなさは、どう解釈すればいいのか、みゆきは、自分が思春期だけに、感受性の強さから、どこか、耐えられない気分にもなっていたのだ。
 かといって、
「家族が、タブーだというのを、いまさら引っ張り出して話をしたところで、おにいちゃんが戻ってくるわけでもないのだから」
 という、急に冷静になった気分で、落ち着いている自分に、みゆきは気づいていたのだ。
 みゆきは、中学時代まで、幼馴染の男の子がいて、いつも一緒にいる友達がいたのだが、その友達に対して、
「幼馴染って、都合いいわえ」
 と言ったことがあった。
 彼が、
「どうして?」
 と聞くと、
「だって、彼氏でもないのに彼氏のふりをしてくれるでしょう?」
 というと、
「あ、そっか」
 と、彼は、分かっているのか、納得はしているようだった。
「彼氏のふり」
 ということなのだから、彼氏ではないのだ。
「ただの幼馴染だ」
 という意識があったとしても、いくらふりだといっても、イチャイチャしていたり、身体が触れ合ったりすると、ドキドキくらいはするものだろう。そうなると、自分が、思春期であることくらいは分かっているだろう。彼の性格から見て、自分の考えていることを他人に悟られないようにすることに関しては、すごいものがあると思っている、しかし、それでも、
「幼馴染の渡しを、ごまかすことはできないわ」
 というくらいの自信が、みゆきにはあり、
「それが幼馴染と、彼氏との違い」
 というくらいに思っていた。
 彼氏というと、出会いからが圧倒的に短くて、絶対につき合いの長さにはおいつくことができるわけはない、
 それだけに、
「相手のすべてを知っていて、相手にも知っていてもらって安心できるのが、幼馴染で、相手のことを知りたくて、相手にも知ってもらいたいと思うのが彼氏だ」
 と思っていた。
 彼氏には幼馴染に感じない
「情熱」
 を感じるというもので、逆に幼馴染には、彼氏にはない
「安心感」
 を与えられると思うのだった。
 それを考えると、
「短いかも知れないが、それでもいい」
 と思うのが、彼氏であって、
「情熱的ではなくてもいいけど、ずっとそばにいてくれるとすれば、幼馴染以外の誰でもない」
 ということである。
 もし、彼氏と熱愛中に、
「幼馴染と彼氏、どっちを選ぶ?」
 と聞かれたら、どっちだろう?
 まだ、これから有頂天を目指すのであれば、
「彼氏」
 と答えるであろうが、少しでも、頂点を超えていれば、
「幼馴染」
 と、答えるに違いない。
 そのことは、彼氏と付き合っている時には分からなかったが、彼氏と別れてから、感じたことであった。
 今までに、何度か、彼氏と呼べるような人と付き合ったが、そんなに長続きしたわけではなかった。
 というのも、みゆきの、
「本当に彼氏にしたい」
 と感じていたのは、実は、
「亡くなったお兄ちゃん」
 だったのだ。
 子供の頃からの憧れで、
「大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになる」
 などと、結婚というものをまったく知らなかった時に、平気で言っていたものだった。
 お兄ちゃんも。黙って笑っていたが、それが幼馴染に似ているのだ。
 だから、兄がいなくなった今、兄の代わりが幼馴染で、だからこそ、彼氏と付き合っても、うまくいくはずがない。
 兄であったり、幼馴染と比較してしまうからだ。
 そういう意味では。みゆきの周りには、男として、
「しっかりした人が絶えずついていてくれる、羨ましい女だ」
 ということであった。
 その日のみゆきは、夜勤の日だった。二人での見回りだったのだが、交替で仮眠をとるようにしている。まず最初にみゆきが見回りの時間なのだが、さすがにまだ、日も回っていないので、眠れるわけでもなく、もう一人はナースセンターで待機していた。軽く音を小さくしてさえいれば、テレビを見てもいいことにはなっていた。
 早速、もう一人はテレビを見ていたのだ。
 ただ、だからと言って、絶えずナースコール医気を配っているのは当然のことであり、それは、彼女が見回りをしている時の、みゆきにしても、同じだった。
 みゆきは、いつものように順番通り、決まった部屋を回っていた。
 現在入院患者は、8人足らずであった。2人部屋でも、一人しかいなかったり、一部屋丸々空いているところもあった。比較的、病床使用率も高いわけではないので、それほどの緊張感はなかったのだ。
作品名:自殺後の世界 作家名:森本晃次