減算法の都合
だから、世の中のことや、その成り立ちや、仕掛けが分かっていないから、そんな大それたことができるのだろう。
そんなチンピラ風情は、当然、バックに組織などいない。あくまでも、自分たちだけでやっているだけで、それがどういうことなのかということを分かっていないのだ。
彼らが狙うのは、
「金があって、立場的に、バラされるとまずい」
という人たちである。
チンピラが考えるのは、
「やつらは、何が怖いといって、バラされるのが怖い。せっかく売れてきたり、これから売れようということで、レールの上に載っているのに、そこをひっくり返されりようなくらいだったら、お金を出した方がいい」
と考えるだろう。
「彼らには、それだけのお金がある。だから、自分を守るには、金を出せばいいと思うだろう」
という安易な考えだ。
確かにそうだろう。
最初に引っかかってしまえば、一番最初に思うのは、
「なんとバカな連中に引っかかってしまったんだ」
ということと、次には、
「自分を守るにはどうすればいいか?」
ということである。
それを思うと、
「悔しいがあいつらのいうことに従うしかない」
ということである。
しかし、美人局側は、
「これで、やつらは、自分たちの言いなりだ」
と考えてしまうだろう。
確かに、一般人であれば、そう思うに違いない。
しかし、彼らは、立場があるし、金もある。このまま引き下がるなどするであろうか?
しかも、
「このままチンピラ連中が引き下がるわけはない」
と思う。
「どうせ、引き下がるわけはないというのは、写真などをネタに、今後、死ぬまで付きまとわられると思うと、どうするだろう?」
事務所によっては、用心棒を雇っているところもあるかも知れない。
上からは、怒られて、しばらくは干されるかも知れないが、死ぬまで、チンピラに付きまとわられるのも嫌である。
事務所も、そんなチンピラ連中は煙たいだろうから、何度か消そうを考えることだろう。
さすがに、殺しまではしないだろうが、証拠を押収し、二度と悪いことをする気が起きないほどに
「制裁」
を加えるということくらいは、普通に当たり前にあるだろう。
しょせんは、チンピラなのだ。組織に勝てるはずもない。
「ボコボコにされて、証拠は押収され、男は、死ぬまでこき使われ、女は、どこかに売り飛ばされたりするだろう。
泣こうがわめこうが、そもそも、自分たちが仕掛けたことなのだ。本当の極道から見れば、
「一番許されない行為」
でもあるだろう。
こんな連中のために、自分たちが、白い目で見られる。
ということもあるだろう。
彼らとすれば、
「自分たちが必要悪だとすれば、あいつらは、本当のただの悪でしかない」
ということである。
しかも、一番ちんけで、安易なやり方で、金を儲けようとするのは、一番許せない行為なのかも知れない。
特に極道は、いろいろなことを金で解決したりする分、余計にお金というものを、神聖なものだと思っているのかお知れない。
それを、安直な方法で手に入れようとすることが許せないのだろう。
「金儲けをするなら、それ相応の覚悟が必要」
というものだ。
彼らにとって、金儲けは、下手をすると、
「暇つぶし」
の一環なのかも知れない。
もちろん、
「生活に困って」
ということなのかも知れないし、ただの、
「遊ぶ金欲しさ」
なのかも知れない。
しかし、安直な金儲けしか考えない連中は、
「金儲けに、覚悟を持っている」
という人間から比べれば、ただのクズでしかないのだ。
「何かの特技や才能を駆使して、金を儲けるというのであれば、立派な金儲けであろう。しかし、女というものを武器にして、それを詐欺に使うのであれば、それは、覚悟を持っているとは言えないだろう」
チンピラ側からすれば、
「これの頭を使った金儲け」
と思っているのかも知れないが、これは立派な犯罪だ。
相手の弱みを握り、それをネタに金を搾取するというのは、立派な犯罪だ。
「いくつの罪が並立するか分からない」
というほど、ちんけなくせに、覚悟のない犯罪といってのいい。
そういう意味で、こんな連中を懲らしめるという意味で、暴力団が必要悪だと言われるゆえんであろう。
そう、暴力団は、こういう時のための、
「用心棒」
でもあるのだ。
「美人局」
をする連中は、先のことしか見ていない。
「騙されるターゲットを探して、いつものように女がターゲットを誘惑し、ホテルに連れ込む。女はホテルのカギが締まらないようにしておいて、男と女の様子を、ケイタイかスマホで、撮影させ、この時とばかりに、忍び込んでくる」
というのが、美人局のやり口である。
ただ、やつらの、
「何がバカか」
ということであるが、
やつらには、前しか見えていないから、自分たちが襲われるということはないとタカをくくっているのだ。
たぶん、
「証拠はこっちにあるのだから、どんなに騒いでも、こっちのものだ」
としか思っていないのだろう。
実に、バカの典型である。
やろうと思えば、
「殺してしまえば、すべてが闇の中だ」
ともいえるだろう。
やつらは、そんな簡単なことも分からないのだろうか?
殺さないまでも、
「攫ってきて、拷問に掛けて、写真のありかを聞き出す」
くらいのことは簡単にするだろう。
ただ、やつらが、もし殺しをしないのだとすれば、それは、やつらの優しさではなく、
「リスクを犯してまで、殺す相手か?」
ということである。
「こんなクズどものために、手を汚すことはしたくない」
というだけのことで、
「別に、死んだからといって、どうなる連中でもない」
ということに変わりはないだろう。
それを考えれば、
「美人局というものが、どれほどわりに合わないやり方なのか?」
ということが分かっていないということであろう。
美人局の連中は、まさか、
「俺たちが一番頭がいい」
とでも想っているのではないだろうか?
「ちょっと怪しい写真を撮って、脅すだけで、お金が手に入る。しかも、証拠がこちらにある限り、相手は拒否することができない。ずっとたかってやる」
とでも、思っているのだろう。
確かに、これが、一般人であれば、お金もないし、人脈もないだろうから、
「こちらの言いなり」
になるということも考えられるが、そう何度もお金がないことで脅せないといえるだろう。
しかし、それを強引に脅して、相手が借金地獄に落ちたりして、追い詰めるだけ追い詰めてしまうと、果たしてどうなるかということを、やつらの頭では考えきれないだろう。
というのも、
「人間、追い詰められると何をするか分からない」
というものだ。
人によっては、自殺を考えるだろう。
しかし、
「自殺するくらいなら、脅迫してきた連中を道連れに」
と思うかも知れない。
脅迫している連中が、
「俺たちの脅迫で、追い詰められれば、こちらを殺そうという意思が生まれるかも知れない」
ということを、まったく考えないということであろう。
本当は、詐欺を働くくらいに追い詰められているのであれば、その気持ちは分るというものだ。