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怪しい色彩

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「そうですね、難しいところでしたね。一時期父親も会社が危ないと言われた時期もあったんですが、持ち直したようで、また少しずつ裕福になっていきました。でも、年齢からなのか、それとも、母親に気を遣ってからなのか、昔のような、女遊びはしなくなりました。仕事に一生懸命のようで、その分、趣味に没頭するようになり、釣りに行ったり、ゴルフに興じたりと、まぁ、金持ちの道楽なんでしょうが、それでも、昔よりもかなり丸くなったというところですね」
 と南部がいうと、
「そうなんですね。じゃあ、南部さんも大学を卒業するまでは、金銭的にはよかったわけですね?」
 と言われ、
「まあ、そうですね。大学にも行けたし、就職もできた。でも、そこからは、あまりパッとしない人生でしたが、自分では、そんなに嫌いではないかも知れないですね」
 と南部がいうと、
「まあ、そうでしょうね。人生の良し悪しというのは、人それぞれ、そして、それを感じることができるのは、その人本人だけですからね」
 ということであった。
 このような話ができるのは、たぶん、警察の方も、
「南部という男は、あまりこの事件に関係ないかも知れない」
 という思いがあったからだろう。
 その根拠としては、
「不倫が原因で旦那を殺したのだとすれば、南部が結婚もしていない自由な身だということを考えると、殺す理由がない」
 というところである。
 ただ、まったくありえないことではない。
 というのも、これが計画的な犯罪であれば、考えにくいが、突発的なものであったりすれば、あり得ることかも知れない。
 特に、恨みを持っているのは、当然旦那の方であろうから、旦那が南部を呼びだして、「何か文句の一つでもいってやろう」
 とでも考えたとして、その時、
「もみ合ったか何かして、そこで刺し殺してしまったかも知れない」
 ということも考えられなくもない。
 だとすると、問題になってくるのは、死体発見現場である。
 そこは、南部の勤めているところで、しかも、南部が見回りをしているところではないか?
 呼びだす方が旦那だとすると、そんなところに何があるか分からないのに、ノコノコ南部が出向いていくわけはない。逆に南部が呼びだすとすれば、今度は、そんなことは論外で、まったく関係のない場所に呼びだすことだろう。
 いくら、時短中で誰もいないであろうビルと言っても、誰に見られないというわけでもないだろう。
 ただ、殺害するなら、この場所はいいかも知れない。
 基本的に見回りの時間以外は誰も来ないし、防犯カメラもついていない。だからこそ、見回らなければいけないわけで、
「ただ、このビルがどうして選ばれたのか?」
 ということにはなるのであろうが……。
 鑑識の調べでは、死亡推定時刻や殺害の概要については、初見とほぼ変わりないということであったが、死体を動かしたという形跡もなく、
「他で殺されて、運ばれてきたということはありません。だから、殺害現場としては、あの場所で間違いないということになりますね」
 ということであった。
 そうなると、いくら、タレコミのようなものがあったとしても、ますます、南部の容疑は薄くなってくると言ってもいい。
 そういう意味で、南部を連れてきて、取り調べはしているが、警察も、どこまで聴いていいのか思案のしどころであったが、とりあえず家族構成であったり、彼もことを知っておく必要はあるというものだった。
「ところで、南部さん。あなたの家族は現在、どんな感じなのですか?」
 と刑事に聴かれて、
「両親は、普通に実家にいると思います。義理の弟は、地元の大学を中退したようなんです。どうやら、役者の養成スクールのようなところに通って、今はどこかのプロダクションにいるようなんですよ」
 というではないか。
「ほう、役者のタマゴというわけですな?」
 と刑事は少し興味を持って聴いてみると。
「ええ、顔立ちが、いわゆるイケメンという感じなんでしょうかね。私にはよくわかりませんが、美形と言われているということでした。そういえば、肌の色も女みたいに白くて、か細いんですよ。肌もつややかで、女の役も時々やっているというような話を聴きました。でも、まだまだ駆け出しなので、そんなに露出度はないとのことでしたが、それでも、それなりに期待はされているというようなことは聴きました」
 ということであった。
 この話が、実は今後の捜査に、関わってくるのだが、とりあえず、刑事は、彼の家族構成を、世間話程度に聴いたくらいであった。
 さて、事件の方は、被害者の方の人間関係について捜査が進んでいくことになった。
 捜査本部でも、まず、手掛かりとしては、
「旦那が不倫をしていた」
 という話を奥さんの潤子から聞かされただけで、しかも、その相手に関して、奥さんの方では、
「知らない」
 ということだったので、被害者が殺された動機ということからも、まずは、その、
「不倫相手」
 というものの有無、そしているのであれば、
「それがどこの誰なのか?」
 ということを、ハッキリさせる必要があるということであった。
 そもそも、被害者は普通のサラリーマンだということなので、まず不倫をするのだとすれば、
「社内」
 ということが考えられた。
 もっとも、社内恋愛、しかも、不倫というのは、あまりにもリスクが高い。確かに、よく聞くような話であるが、それこそ、
「そんな、AVじゃあるまいし」
 というようなくらいに捉えている人が、サラリーマンとしては多いようだ。
 不倫というと、当然ながら、それなりに金もかかるだろう。女に金を使わせるわけにもいかない。そんなことを考えると、彼の給料で、不倫ができるほどの金を持っているとは、考えにくかった。
 もう一つ考えられるのは、数年前からよく言われる。、
「パパ活」
 のようなものだった。
 これを不倫という括りに入れてしまうことに抵抗のある人もいるようだ。
「パパ活って、肉体関係が目的ではないらしいの。お金を与えたり、部屋を用意したりはするんだけど、決してエッチ目的ではないというのね。草食系男子が増えてきているというのもその理由にあるんじゃないかしら?」
 というOLもいたりした。
「あなたは、パパ活や不倫の経験は?」
 と聞いてみると、
「私にはパパ活なんてできないわ。どうせお互いに不倫だったり、お金の授受があるなら、やっぱり対等でいたいって思うもの。ちゃんと抱いてもらえる相手じゃないとこっちだって物足りないし、女の子もそれでいいなんて、私にはその感覚が分からないわ。男と女ってそんなものよ。私と同じように、対等を求めると思うの」
 というのを聴いて、
「それがよく分からないところなんだよ」
 と刑事が聴くと、
作品名:怪しい色彩 作家名:森本晃次