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怪しい色彩

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「警察に対しての、挑戦」
 という感覚だったかも知れない。
 潤子は、警察で、正直、最初はあそこまで煽るような言い方をするつもりはなかったのだが、途中から、どうも自分が、
「主人公でないと気が済まない」
 と思っていたのかも知れない。
 確かに、彼女は旦那に浮気されて、ショックが大きかっただろう。 だからこそ、それだけ、
「プライドと、自尊心が強い」
 と言ってもいいかも知れない。
 しかし、逆に、彼女が、
「最初から、主人公でないと気が済まない」
 と思っていたわけではないということであれば、それはすなわち、
「彼女は犯人ではない」
 ということを示しているのかも知れない。
 しかし、それを最初に証明すると、
「警察に対しての挑戦」
 ということにも
「自分が主人公でないと気が済まない」
 ということにもならないということなのであろう。
 さて、そんなことを潤子が考えているなどということを警察も、夢にも思っていないだろうから、潤子がこういう発想になればなるほど、
「本当に真実から離れていくことになるのだろうか?」
 ということを考えてしまうのだった。
 潤子とすれば、自分の不倫相手が、南部だということを、正直どう思っているのかである。
 南部は、完全に、
「彼女の弱みを握ったことで、脅迫じみた形にして、強引に女にした」
 と思っていることだろう。
 だから、男としては、
「後ろめたさもある」
 だろうし、
「女を可哀そうだ」
 とも思っていることであろう。
 しかし、同じ立場であっても、潤子の方では、そんなことは思っていない。
「近い将来、どっかの男を自分の男にしよう」
 という発想はあった。
 もちろん、
「イケメンで、セックスがうまかったら、それに超したことはない」
 と思っていただろうが、まさか、ひょんなことから、南部のような男を
「自分の男」
 にしようとは思っていなかった。
 だが、相手が、
「自分を強引に蹂躙した」
 と思っていて、後ろめたさを感じているのであれば、却って好都合。何かあった時に、自分の悪い部分と、この男に押し付けることだってできるに違いない。
 ある意味。
「逃げ道」
 という意味での男という使い方もできるだろうと思い、潤子の考えは、この男、つまりは、
「南部」
 という男の出現で、最初に思っていたこととは若干違ったかも知れないが、自分の計画の中に、それなりに、何か通じるものがあるに違いないということを感じているのであった。
 最初、潤子は、旦那に対しての復讐というのは、当然考えていただろう。
 実際に、警察に対して、あれだけ挑戦的な態度を取っているのは、実際に殺して、
「その犯罪に対して、自分に自信があるか」
 あるいは、
「実際にやっているわけではないので、それについての、完璧なアリバイがあるか」
 あるいは、
「やっていないという証明になる何かがあるか?」
 のどれかではないかと、考えられる。
 そのことに関して、桜井刑事は、あくまでも自分の中に、
「刑事の勘」
 としてであるが、
「彼女は犯人ではない」
 と思っている。
 そして、もう一つの考えとしては、さらに、
「もし不倫の相手が、南部であれば、南部も犯人ではない」
 と思っている。
 これは、前述の考えと同じで、もし、彼が不倫相手だったとすれば、
「南部のような男が、旦那を殺すはずはない」
 と言える。
 立場的に考えて、いくら旦那が不倫をしているからと言って、自分も不倫をするなら、その相手を、わざわざ独身男性にするわけはないだろう。
 相手のフットワークが軽いということであれば、こちらが重たい分、すぐに逃げられたり、何かに利用などできるわけもないだろう。
 不倫をしていて、少しでも、
「ヤバい」
 と感じたら、絶対に有利なのは、南部だからだ。
 しかし、南部は、あくまでも、
「女の弱みに付け込んで」
 それで、女が逆らえないようにしておいて、その獲物を自分のものにするということである。
 そう思うと、男を捕まえようという計画がある中で、何を自分が不利になるようなことをするのだろう。
 そもそも、往々にして、
「万引きをする人は、その時意識が飛んでいるのではないか?」
 と考えられるので、それだけ彼女は、その瞬間。自分の意識が飛んでしまうような、一種の病気を持っている女なのだろう。
 だが、そう考えると、
「今回の旦那の死」
 というのは、見た目は、
「奥さんとその不倫相手」
 というのが絡んでいる。
 と考えられるが、そもそも、この考えは、何かの理論に基づいたわけでも、何かそのようなれっきとした証拠のようなものがあって、言っているわけではない。
 あくまでも勝手な考えから出てきたことであって、
「実際には、この事件に、南部はおろか、奥さんもまったく関わっていないのかも知れない」
 と言えるであろう。
 あまりにも、うまい具合に、ちょっと考えれば、
「これはうまい発想」
 ということで、
「推理を組み立てられるということが、いかに安直な考えを招くのか?」
 ということに繋がるのではないかということが考えられるのであった。
 桜井刑事は、自分が、
「あの奥さんに操られているのではないか?」
 とばかりに、何かの錯覚に陥るかのように、
「マインドコントロールされているのではないか?」
 という考えに至ってしまっている自分が怖いのだった。
 そんなコントロールの中には、
「絶対に一つでなければいけない」
 ということが、墓穴を掘ることがあるのだった。
 南部の取り調べの中で、南部という男の身元についても、聞かれた。
 南部という男は、現在35歳であり、彼は両親から、それほど愛情を受けて育ったわけではなかった。
 父親が、実は結構金持ちだったというのだが、金持ちにありがちというのか、どうなのか、
「家にあまり帰ってこないし、生活はそれなりに裕福ではあったが、決して母親も自分も幸せではなかった」
 というのだった。
 それというのも、
「父親は、他に女がいたようで、母親はそのことを知っていたようなんですが、高校生くらいの頃の僕には分かりませんでした。でも、そのうちに、父親の羽振りも次第に悪くなり、他で女を囲うということもできなくなり、普通の家族になってしまったんです。でも、前の父親の女が死んだようで、その時に女が生んだ子が、家に入ってきたんです。どうしてうちが引き取ることになったのか、詳しくは知りませんが、裁判か何かでもあったんでしょうね。急に自分に弟ができたというわけです。血のつながりのない、少し年の離れた弟がですね」
 と、南部は言った。
「ほう、少し複雑な家庭環境なんですね?」
 と刑事が聴くと、
「ええ、そうですね。弟は、私よりも、八歳くらい年下ですかね。今は28歳くらいであないでしょうか。だから、最初に引き取られた時は、まだ、小学生の低学年の頃だったので、弟と言われても、実際にはピンときません。甥っ子とおじさんというくらいの年齢でしたからね」
 と南部がいうと、
「じゃあ、その時の家族関係はいかがでしたか?」
 と刑事に聞かれ、
作品名:怪しい色彩 作家名:森本晃次