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怪しい色彩

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 もちろん、童貞ということもなく、大学時代は、それなりに彼女がいたりして、普通の学生時代を過ごしてきた。
 しかし、それが急に、これほど彼女への執着がなくなったのは、就職活動中だったかも知れない。
 その時付き合っていた女の子がいたのだが、就職活動をしていると、なかなか一緒にいることもできない。その子は、まだ1年生で、今大学に入ってきたばかりの、
「今が一番楽しい時期だ」
 と言ってもよかっただろう。
 そんな彼女が4年生の自分とつき合うようになったのは、
「私、同年代の男の子とでは、つき合えないの。どうしても年上がいいの」
 と言っていたのだ。
 当時の南部は、自分でいうのもなんだが、
「結構モテた」
 と言ってもよかった。
 実際に、好きになった女の子に告白して、断られたことがなかったので、思いあがっているというのも、無理もないことだっただろう。
 ただ、まわりもそれを認めていた。
「南部が相手だったら勝ち目ないよな」
 と言っていたので、有頂天になっていたのも確かだったが、それが、逆に自分を孤立させているということに気づかなかったのだ。
 それは、
「南部は一人でやらせとけばいいんだ。俺たちは俺たちの仲間を作っていればいいんだ」
 ということで、いつの間にか、南部は、
「周りからハブられていた」
 と言ってもいいだろう。
 だが、そのことも、途中から分かってきていた。
 それでも、
「彼女ができるんだったら、友達なんかいらないや」
 とばかりに、思っていた。
 だから好きな人ができれば、そちらに必死になり、友達などどうでもいいと思うことで、
「俺の好きなようにさせてもらう」
 と思うようになった。
 だから、まわりが認めてくれているのでなく、ハブられているということを感じていると、一人でいるのが、そんなに苦痛というわけでもなくなってきたのだった。
 だから、
「大学時代というと、友達といるよりも彼女といる方がいい」
 と思っていたのだが、途中から、
「彼女といるのも、何か億劫な気がする」
 と思うようになり。次第に、
「俺は一人でいる方がいいのだろうか?」
 と思うようになった。
 しかも、就活の時の彼女というと、
「相手は、まだこれから大学生活を謳歌する年齢で、こっちは、そろそろ、大学生活に見切りをつけなければいけない年齢だ」
 ということが、身に染みて感じられるようになってきたのだ。
 そうなってくると、
「俺は、一人取り残された」
 という風に、彼女に対してまで思うようになった。
 友達に対しては、最初からそう思っていたので、せっかくの大学生活の終着点で、自分が何を得たのかということが分からなくなったのだ。
 これがトラウマのようになって、おかげで、就職してからというもの、
「友達も彼女もいらない」
 と思うようになっていた。
 かといって、趣味があるわけでも、仕事を一生懸命に頑張ろうというわけではない。
 とにかく、何をどうしていいのか分からず、
「ただ、一人でいるというのが、一番いいんだろうな」
 と感じるようになっていたのだった。
 就職した時は、最初から警備会社だったわけではない。
「就職には、法学部が一番有利だ」
 というような勝手な理屈で、大学は、高校が大学の付属高校だったので、受験勉強もすることもなく、いわゆる、
「エスカレーター」
 で入学したのだった。
 最初から、他の高校から、正規の入試を経て入学してきた連中に、コンプレックスを持っていて、
「俺はいつも、彼らの後ろから背中を見ているだけなんだな」
 と思っているだけだった。
 彼らとしては、エスカレーターで入学してきた連中を、あまり心よくは思っていなかっただろうが、明らかに嫌っているわけでもない。
 ただ、中には明らかに嫌っているやつもいて、
「俺たちが必死で勉強して入学したのにな」
 と妬ましいことを言っているのを聴いたことがあったが、そんなやつとは最初から絡む気にはなれなかったのだ。
 そんな学生時代だったが、その頃からできたコンプレックスで、
「友達も彼女もいらない」
 という時期があった。
 普段なら、
「友達と一緒であれば、いけるのに」
 というようなところも、
「友達と一緒だと、自分が楽しめない」
 ということもあり、普通なら一人で行かないようなところに、一人で行くようになったというのも、何か皮肉なものであった。
 大学時代までは、彼女ができても、いつもすぐに別れていた。最初は、人当たりがいいからなのか、結構、最初はいいのである。
 しかし、大学2年生の頃までは、何人かで
「ナンパをする」
 という、大学生としては、ベタなことをしていたので、最初に行くのはいつも、南部だったのだ。
 しかし、途中から、気が付けばいつも一人になっていた。
「南部は仲良くなるための、最初のきっかけを作ってくれて、後は俺たちで、それぞれ好きな相手と仲良くなって、おいしいところだけを貰っていく」
 というようなことになっているようだった。
 大学3年生くらいまでは、そのことに気づかなかった。
「俺は、仲良くなるために必要な人間だ」
 ということで、おいしいところを持っていかれているという印象もなく、
「まだまだ、俺は童貞でいる運命なのかな?」
 と漠然と感じていたのだ。
 だが、四年生になって、実際につき合ってくれる彼女ができたことで、有頂天になっていたのだ。
 実際に、喋りも、
「マシンガントーク」
 といわれるようになっていて、
「俺の話を教務深く聴いてくれる女の子がいたんだ」
 と思うようになった。
 それだけ、最初は、控えめだと思っていたが、途中から、
「俺は貧乏くじを引いている」
 と思うようになると、最初は、
「それでも、皆の役に立っているんだから、それでいい」
 と思っていた。
 だが、やはり、いいところはなかなかなく、どうしても貧乏くじだった。
 次第に、自分の中にある自尊心が、傷つけられているという意識を持つようになると、
「これじゃあ、嫌だな」
 と思ってるところに、やっと4年生になって、彼女ができたのだ。
 その時は、
「神は見捨てないものだよな」
 と思い、自分の日ごろの行いの良さを感じたが、次第に付き合っていくと、どこかぎこちなさがあるように感じられるのであった。
 そのぎこちなさがどこから来るのか分からなかったのだが、
「俺にとって、彼女って本当にいるのだろうか?」
 と感じるようになったのだ。
 というのも、マシンガントークを、聴いてくれている時はいいのだが、たまに、急にあからさまに、
「面白くない」
 という態度を取ることがあった。
「ああ、嫌がっているんだ」
 と思うと、言わなくなってきた。
 すると、ぎこちなさがさらに激しくなって、話をするのが怖くなってくる。
 それが、
「億劫なのか、怖いという思いからくるものなのか?」
 ということで悩むようになってきて、会うということすら、考えようと思うほどになってきたのだ。
「俺って、本当に彼女にとっての彼氏なんだろうか?」
 という思うと、
「彼女も、本当に彼女なのだろうか?」
 という思いの両方が交錯しているのだった。
 そんな時、
作品名:怪しい色彩 作家名:森本晃次