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「地元愛」
 のような感覚で過ごしてきた橋爪だったが、
「O市のPR」
 ということでは成功し、他の市から見ても、
「明らかに一歩リードしている」
 といってもいいだろう。
 そんな街において、昨年くらいであっただろうか? ある殺人事件が勃発したのだった。
 何とその第一発見者が、橋爪だったわけだが、その発見をしたことによって、それまで忘れかけていた、過去と対面させられるようになるとは思ってもいなかった。
 それは、仕事をほとんど会社の事務所で行うようになり、出先にあまり出向くことがないことで、ほぼ毎日の生活が、
「家と事務所の往復」
 ということであった。
 車も以前は持っていて、運転もしていたが、40歳を過ぎた頃に、
「俺は性格的に車の運転はしない方がいいのかもな」
 と思い、車を手放すことを決めたのだった。
 福岡に住んでいれば、別に車がなくとも、不便だということもない。
 むしろ逆に、車を運転している方が、道が混んだり、何と言っても、
「交通マナーの悪さ」
 に、いい加減、苛立っていて、そのうちに、
「怒り心頭してしまって、事故を起こしかねない」
 と真剣考えていたことで、一念発起、
「もう車などいらない」
 と思い、思い切って車を手放すと、
「その維持費だけで、どれほどのものだったのか?」
 ということが分かったのだった。
「なるほど、車など、ないならない方がいいのかも知れない」
 と考えるようになった。
 何と言っても、ガソリン代、乗れば乗るほど、消耗品の交換から、毎年の点検費用。さらに2年に一度の車検代」
 それらを考えると、
「実にバカにならない」
 と感じるのだった。
 実際、JR,私鉄、地下鉄という鉄道網の充実と一緒に、かつて動いていた路面電車がなくなった時、その代替えにと、
「十分なバス路線の充実」
 ができたことで、街は充実してきたのを、身に染みて感じていたのだった。
 ただ、さすがに東京ほどのことはなく、実際には、
「鉄道会社のそれぞれの思惑」
 などもあり、不便なことも多かった。
 JRはというと、とにかく目立つのは、
「対応の遅さ」
 であった。
 まるで、昔の国鉄時代のように、朝のラッシュ時に、人身事故などが起こったとすれば、下手をすれば、その日1日中、
「ダイヤは乱れっぱなし」
 ということも、当たり前にある。
 しかも、電車の本数を大幅に減らすという、運休列車をたくさん出しても、その体たらくなのである。
「JRになって30年以上の建っているのに、やっていることは、国鉄と同じだ」
 と言われても仕方がないだろう。
 しかも、電車が定時から、20分以上経っているのに、一向にホームに入ってくることはない。
「おかしい」
 と思い、駅の改札に聴きに行った。
「どうして20分も待ったのか?」
 ということであるが、そもそもJRの十分くらいの遅れは、
「誤差の範囲だ」
 というくらいに、その運営の甘さは分かっていたつもりだったので、ホームを離れた瞬間に電車が入ってきたりして、その電車に乗れなかったとすれば、
「これほどの本末転倒なことはない」
 ということになるだろう。
 だから、20分の遅れまで待っていたのだ。
「こっちは、ここまで、お前たちの甘さを見切っているんだぞ」
 という感覚を持ってのことだった。
 実際にホームからエスカレータで階下の改札口に行って、事務所を見てみると、駅員が数人、何事もなかったように、落ち着いて自分の仕事をしているではないか。
 正直呆れかえって、
「電車、遅れているけど、どうしたんだ?」
 というと、慌てる様子もないことから、
「こいつら知っているんじゃないか。確信犯ということか?」
 という理解は、ほぼ間違っていなかったのだが、
「ああ、そのようですね」
 と、ぬけぬけというではないか。
「分かっているなら、放送しろよ」
 と、半分こみあげてくる怒りを抑えようと必死になって、何とか苦情をいうだけで、怒鳴り込みを抑えてやったはずなのに、まるで、それに火に油を注ぐかのように、
「どうして遅れているのか、その理由が分からない」
 というのだ。
 完全にそれを聴いてブチ切れてしまった。
「バカか、お前ら。こっちは、ホームでいつ来るかも分からない電車を待ち続けてるんだぞ。お前たちが、一言事情をアナウンスすれば、他の電車に乗り換えることができて、徳の昔に目的地に着けてるかも知れないじゃないか」
 と怒鳴りつけた。
 何しろ、その駅から徒歩度5分くらいのところに地下鉄の駅があり、目的列車の終着駅までも、並行して地下鉄が走っているのだ。
 それを思えば、
「一言言ってくれれば」
 と考えるのも当たり前のことであろう。
 それを、
「理由が分からないから、放送しない」
 というのは自分たちが文句を言われるのが嫌だからなのか、理由を聞かれて答えられないことに客が怒るのが怖いのか、どちらにしても、怒られることに変わりはないのに、さらに客の神経を逆撫でするというのは、
「実に悪質で、それでいて、無能な行動だ」
 と言えるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「ああ、やっぱり、こいつらは、何年経っても国鉄なんだ」
 と思う。
 もうすでに、30年以上も経っているのだから、今の中心人物で、
「国鉄時代の中枢を知っている」
 という人はいないだろう。
 今のトップの人も、まだ入社してからすぐくらいの人たちで、
「民営化」
 という混乱に巻き込まれた。
 ということしか、イメージとして残っていないに違いない。
 だが、それでも、当時の国鉄から民営化された時、一度は引き締まった気持ちになるのだろうが実際に蓋を開けてみると、こんなにひどい状況が、今まで続いているなど想像もしていなかっただろう。
「続いたとしても、最悪数年くらいのものだろうな」
 と思っていたのが、実に甘いということで、経済と同じ。
「いや、もっとひどくなったのではないか?」
 と言われる、
「失われた30年」
 とは、国鉄のことをいうのではないだろうか?
 と、橋爪はそんなことを考えるのだった。
 そんな中において、ある日、仕事を終えて、家に帰ろうとした時のことであった。その日は、飲み会があったので、少し遅くなった。会場は中洲だったので、帰りはJRよりも西鉄の方が近いので、西鉄を利用することにした。
 最寄り駅から家までも、若干ではあるが、近いこともあるが、中洲の飲み屋であれば、博多駅まで行くよりも、天神の方が近かったのだ。
 しかも、途中からは地下街が通れるので、少し寒くなってきているので、地下街を通れるのは有難かった。
 飲み会といっても、昔のように、二次会があるわけではない。
 そもそも、飲み会というもの自体も、ここ4年なかったので、本当に久しぶりだったのだ。
 元々誰かと呑むというのもあまり好きではない、だが、会社での飲み会が久しぶりということもあり、あまり気は進まなかったが、参加するようにして、
「あまり、飲まないようにしよう」
 と、飲み会そのものよりも、体調面の方が気になっていたのだった。
 そもそも、ここ3年くらいは、
「世界的なパンデミック」
作品名:平均的な優先順位 作家名:森本晃次