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 それだけ、幕府という中央の力が、まったく地方に影響しなくなっていたということの他ならないのだ。そこから先がいわゆる、
「戦国時代」
 と呼ばれる時代に突入するのだ。
 だからと言って、戦国大名というのは、
「幕府を倒して、全国を統一とまでは思っていなかっただろう」
 と言われている。
「越後の上杉謙信も、上洛し、将軍を助け、政治を元に戻す」
 ということを考えていたというし、
 織田信長も実際に、将軍家の足利義昭を奉じて上洛し、彼を、第十五代将軍の座につかせたではないか。
 その後、信長の権威が強いことに反発し、
「信長包囲網」
 などを作ることで、信長と敵対することで、結果、京都を追われ、幕府を滅亡させることになったのだが、何も信長も最初から、幕府を倒そうとは思っていなかっただろう。
 せめて、
「利用するだけ利用する」
 という程度の考えだったに違いない。
 ただ、信長は、
「神になろう」
 という意識があったようだったので、築城した安土城に、
「帝の屋敷」
 を作り、自分は天守にいることで、帝を見下ろすというような考えを持っていたのではないかと言われているが、果たしてどこまでがそうなのか、分かったものではなかった。
 そんなことを考えていれば、当然配下の連中もついてくることはないだろうからである。
 そんな時代を通り越し、秀吉の時代になると、彼も、朝廷を立てていた。さらに、江戸時代になっても、そこの方針は変わりはなかった。
 ペリー来航により、幕府が開国したことで、攘夷派であった孝明天皇は、心中穏やかでなかったであろうから、幕府に、期限を切っての、攘夷の実行を約束させると、各藩が外国打ち払いを始めた。
 幕府の立場は微妙なものになり、幕末が混乱してくると、討幕派が動き出し、
「天皇中心の中央集権国家」
 というものの樹立を考えるようになってきたのだ。
 実際に、
「鳥羽伏見の戦い」
 に端を発した戊辰戦争が始まったが、肝心の徳川慶喜が、
「大坂城を脱出し、江戸に逃げ帰る」
 ということを行い、
「朝廷とは争わず、隠居する」
 と言いだしたものだから、
「幕府は滅亡」
 することになり、
「天皇を中心とした、明治新政府」
 が出来上がったのだ。
 そこには、明らかな方針があった。
「不平等条約の撤廃」
 というものがあったのだが、
 何といっても、
「領事裁判権、さらには、関税自主権の復帰」
 というものが、そこにはなければいけないのだった。
 日本で、条約を結んだ国の居留民が罪を犯しても、日本で裁くことはできないというもので、もう一つは、貿易の際の関税はあくまでも、相手からの一方的なもので。その不平等が、日本を苦しめることになるのだった。
 そのためには、まず、
「諸外国に、日本という国は、極東の後進国ではないということを思い知らせる必要がある」
 ということで、まずは、日本国内の近代化、いわゆる、欧米化といってもいいだろう。
 さらに、国における兵を強くすること。
 そのためには、富んだ国にしなければならず、産業を発展させる必要がある。
 それが、
「富国強兵政策」
 であり、そのために、急速な欧米化が必要だった。
 さらに、並行して、政治体制も、欧米に合わせる必要があった。
 つまりは、
「憲法を制定し。議会政治を行うこと」
 というのが、その問題であった。
 そのためには、教育などの充実も必要で、憲法制定のために、議会政治の元祖、イギリスや、憲法を学ぶために、プロシア、つまりドイツで勉強したりし栄太のだ。
 そして、大日本帝国憲法を中心とした、国内法が制定され、それによって議会も開かれ、いよいよ日本は、世界に先進国の号令を行うという時代に入ってきたのだった。
 そして、いよいよ日本が世界に肩を並べるようになった時、帝国主義の戦争に巻き込まれるという、ある意味屋無負えない状態になった時、国民への戦争鼓舞や、士気を高めるということでも、教育の中で。
「日本は、神の国である」
 という宣伝とともに、
「天皇は人間の形をした神だ」
 とでもいうような、
「現人神」
 と言った発想が芽生えたのである。
 戦争において、悲劇の代表ともいわれる、
「玉砕」
 というのも、その時、
「日本ばんざい。天皇猊下万歳」
 といって散っていった人たちばかりだったというのは、今でも言われていることである。
 それも、
「天皇というのは、2,600年と続いてきた世界にも例のない、万世一系の家系である」
 ということを大いに宣伝し、国民を洗脳していく。
 この考えが、
「家を守っていく」
 という日本人独特の考えを示しているのではないか?
 ということなのである。
 確かに、他の国でも、
「国王がいて、王国と言われるところもあるが、ここまで長く、ずっと君臨してきた国もない」
 と言われる。
 天皇というのは、
「日本国民ではない」
 と言われる。
 だから、憲法の中にある、
「基本的人権」
 には含まれない。
 あくまでも、憲法で規定されているのは、
「天皇は国の象徴」
 というだけで、それ以外は、皇室典範というもので決まっていて、国民の権利義務には、天皇は関係ないといえるだろう。
 ただ、今の天皇家は、権力がないわりに、縛りは多いのだ。ある意味、
「自由がないだけに、可愛そうだ」
 ともいえるが、そういう国家も珍しいわけではない、
 それを思うと、
「今の家系を守るという考え方も、古くなっているのではないだろうか?」
 とも思えるのだ。
 つまり、実際に、
「日本国は、考え方から、今でいう近代化の時期を迎えているのかも知れない」
 と言えるのではないだろうか。
 まだまだ昔の機運が残っている今の日本というのは、ある意味、
「考え方という意味で、なかなか中途半端なところにいるのではないだろうか?」
 と言えるだろう。
 日本における、
「家族を守る」
 という考え方も、今の時代にはまったくマッチしていない。
 そもそも、
「家を継ぐ」
 といっても、継ぐだけの家もなかったり、そのための相続税の問題などから、家や土地を手放さなければいけない事態になりかねないだろう。
 またお約束の政府批判にしかならないのだが、あまりにも、税金が高すぎる。
「何でもかんでも税金とりやがって」
 と思うのに、さらに増税などといっているのだから、信じられない。
 そもそも消費税だって、
「社会福祉の充実のため」
 と最初の頃は言っていたくせに、学費は上がるは、医療費負担の率は上がりは、挙句の果てに、老人になるまで国のために尽くして働いてきた人たちに対して、
「年金はやらんから、死ぬまで働け」
 というような政策を取るというのは、まるで江戸時代に、農民対策として行ったような、
「農民は生かさず殺さず」
 と基本方針に似ているのではないだろうか?
 それだけ、時代が逆行していき、生活ができなくなってくると、暴動が起こったり、政府を批判したりが出てくるように思うのに、何も出てこないということはどういうことなのだろうか?
 そんなことを考えると、
「家を守る」
作品名:平均的な優先順位 作家名:森本晃次