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元ソーリ暗殺未遂

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 そうなってしまうと、戦争も終わりで、結果、無条件降伏から、占領という憂き目になるのであった。
 それから、そろそろ約80年が経とうとしている。
 当時の戦争を知っている人は、もうほとんどが皆無となり、
「過去の歴史」
 としてしか語られない時代になってきたといってもいいだろう。
 だが、戦争前夜から戦争。
 いや、大日本帝国憲法ができてから、その問題はいずれ立ちはだかる問題だったのかも知れないが、それが、
「天皇の統帥権」
 としての、軍の立場の問題だったのだろう。
「政府のトップが、軍の作戦すら知ることができない」
 というジレンマ、そして、それを嫌というほど味わったのが、東条英機だったということを考えると、
「あの戦争を引き起こした原因の大きな一つに、天皇の統帥権が関わっていた」
 といっても過言ではないだろう。
 大日本帝国が滅んだことで、日本国というものが、戦勝国である、連合国側から作られることになる。それまでの、
「立憲君主国」
 から、
「民主国家」
 への変貌である。
 今の国家は、その民主国家から来たものであるが、結局は、
「アメリカの属国」
 に見えてしまっている状態である。
「平和国家日本」
 というのが、日本の代名詞のようであったが、最近ではそうもいかなくなった。
「隣国である、いくつかの国が、日本の国の近くで、攻め込んできている」
 それを日本の国民は皆、
「日米地位協定」
 というものがあることから、
「アメリカが、軍事的に日本を守ってくれる。何と言っても、日本は、専守防衛の国だから」
 ということであるが、実際には、アメリカとしても、
「日本は戦時体制になった時は、まず日本が防衛努力を行い、それでも難しい時は、アメリカが動く」
 というもので、それも、アメリカとしては、その時の情勢によるということであろう。
 つまりは、他の同盟国に対しての体勢と同じだということである。
 もし、そういうことであったなら、日本は、戦争に巻き込まれた場合、防衛力がなければ、すぐに占領の憂き目にあうということになるが、占領されてしまうと、いくらアメリカでも、簡単に手を出せなくなってしまう。だから、
「防衛費を拡大して、自己防衛ができる国にしないといけない」
 ということが言われるようになった。
 そんな時の、夏くらいであっただろうか。ちょうど参議院の解散時期であった。そのための選挙が行われていたのだが、その時、元首相であったり、政党の要人が、自分の政党で推したい人の応援演説をするという、いわゆる、
「遊説活動」
 が繰り広げられていた。
 徳に、今年の政府において、元首相の動きははげしかった。
 ウワサでは、
「再度首相への返り咲きを狙っている」
 という話もあるくらいだったが、その人がちょうど、
「日本の防衛予算を引き上げ、防衛能力を高める必要がある」
 ということを切実に推し進めている人だったのだ。
「自国を自分たちで守るのが当然だ」
 ということで、その一番のネックになっている、
「平和憲法」
 というものを、改正する必要がある。
 ということであった。
 実際に水面下では、いろいろ動いているようだったが、なかなかどこまで言っているのか、水面下である以上、なかなか国民に見えるわけではなかったが、今回の参議院選挙も、そういう意味で、自分の意見を組んでくれる人を押したくなるのも、当然だというものである。
 選挙はどこまでうまくいくかは、分からなかったが、少なくとも、政府与党が負けるということはなかった。
 確かに与党は、いろいろ問題も多く、ソーリの支持率も最低の時期であったが、それ以上に野党がひどかった。
 野党第一党の支持率が、10%を切っているのだから、どうすることもできない。
 いくらうまくやったとしても、野党が一致団結したとしても、とてもではないが、政府与党に勝てるわけがなかった。
 何しろ、野党が同じ選挙区で、別々に立候補者を立てたりすると、そこで競合してしまうのは当たり前のことであった。
 そんなことは分かり切っていることであり、政府与党としては、
「しめしめ」
 ということで、ほくそえんでいることだろう。
 政府与党とすれば、
「競合してくれて、野党票が割れてくれれば、自分の一人勝ちという青写真が現実のものとなるからである。
 しかし、野党候補が一人だけになってしまうと、
「過半数を取らないと勝てない」
 ということになり、そうなった時、どうすることもできなくなるのは必至ではないだろうか?
 だから、もし、
「野党が協力しなければ、政府はさらに安泰だ」
 ということであった。
 野党が競合せずに、1:1の構図で戦ったとしても、
「政府与党が圧倒的な力」
 というのは、ほとんどの人が認めることであろう。
 かといって、野党も、
「はい、そうですか」
 といって、簡単に、候補者を下ろすということにはいかない。
 特に党の幹部であったり、執行部として、絶対に政治家として必要な人であれば、そんなに簡単に諦めるわけにはいかないだろう。
 それを思うと、
「その地区は、何としても、自分たちの党のちからを見せるしかないということで、下手をすれば、野党の一騎打ち」
 という構図を見せる選挙区もあるに違いない。
 そんな政治の裏側をいかに見ていくかということが、問題になるのであって、国民も、選挙に熱くなっている人間、まったく無関心の冷めた目で見ている人間と、その差はかなりのものであろう。
 そもそも、
「投票率が低いと、現政府が有利だ」
 といわれている。
 なぜかというと、低い投票率の中で、実際に投票しているのは、
「選挙になれば、必ず行く」
 という、いわゆる、
「固定票」
 あるいは、
「組織票」
 と呼ばれるものである。
 それらの票は、政府与党の票であり、特に連立政権である、もう一つの党の、一種の、
「宗教票」
 といえるものではないだろうか。
 もっとも、最大与党は、その政党と連立を組んだのは、
「ちょうどその時、単独政党だけでは、過半数を上回ることができない」
 ということで、しょうがなく、どこかの政党と組まないといけないとなった時、浮かんできたのが、ここの政党で、
「宗教票としての、固定票さえあれば、過半数を割ることはない」
 という考えがあったからだ。
 だが、元々は、野党第一党でもなかった政党なので、その発言力には限界があった。そういう意味では、
「政府与党」
 の仲間入りをしても、彼らに政策を邪魔されるということはないだろう。
 ということであった。
 しかし、それでも、一方ならぬ口出しはしてくる。助言という形ではあるが、その声を同じ与党を組んでいる相手として、無視をすることはできない、
 お互いに気を遣いながら政権を築いていき、何とか今までうまくいってきた。
 細かいところでは、その政党の政策も実現されていて、
「彼らがいまさら、野に下るということはないだろう」
 といわれるようになったのだ。
 今回の参議院選挙も、
「防衛費の問題」、
「数年前から巻き起こった、世界的なパンデミックの問題」
 さらには、
「オリンピック自国開催」
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次