元ソーリ暗殺未遂
というほどの寒さに、街全体が凍り付いているような寒さだった。
まるで、今後の捜査を暗示しているかのようで、桜井刑事は、その冷たさを、身に染みて感じているようだった。
クルーザー事故
この日、弁護士がやってきたことで、
「事件が一つの意外な展開を示すカモ知れない」
と感じられるようになった。
この投書がどこまでの信憑性のあるものなのかということも分からない。そもそも、今回の容疑者の自首というのも、
「どこまでが本当か分からない」
とも思えてきた。
何といっても、犯人は、黙秘しているわけで、気が弱そうに見えるくせに、警察とのにらめっこにも臆していないようだ。
そもそも、精神疾患の気があるということを聞かされてみると、
「一歩間違うと、精神的なところでの無罪となってしまうかも知れない」
ということであった。
本当の精神疾患なら、それで仕方のないことなのだろうが、そうなると、世間が黙ってはいないだろう。
確かに、どんなにひどくて、
「殺されても仕方がなかった」
と言われるようなソーリであったとしても、
「一応、殺されかかった」
ということは、民主国家において、許されることではないというのが、ほとんどの人の一致した意見であろう。
今回はたまたまこいつだっただけで、国民にとって、
「殺されては困る」
という人もたくさんいるだろう。
それなのに、簡単に暗殺行為が成功し、さらに、その場から逃げおおせるということになるのであれば、
「警備なんてあってないようなものだ」
と大いなる批判が噴出することだろう。
そういう意味で、未遂であっても、この事件の経緯を、国民は黙って見守っていたのだった。
もしこれが、曖昧な形で終わったとすれば、警察のメンツは悪くなり、国民の警察への非難は結構なものとなるに違いなかった。
そんな状態において、今、国民は何も言わない。それあ関心がないわけではなく、冷静な目で見守っているということだ。
とりあえず、命に別状はないので、あまり時間が掛かって、忘れ去られるようなことであれば困るが、
「時間をかけてでも、正確な情報を国民が求めている」
ということであろう。
今回の事件のような、インパクトの強いものは、えてして、連鎖的な犯罪が起こらないとは限らない。
事故などにおいても、まったく関連がないのに、偶然なのだろうに、連鎖することがあるのとは明らかに違うのだろうが、犯罪においては、
「模倣犯」
と言われるような、類似犯罪が、結構いろいろな場所で起こったりする。
それはひょっとすると、
「どこででも、このような犯罪の根っこが潜んでいて、一つが表に出てくると、水平線で浮かび上がろうかどうしようか、世間の様子を見ていた連中が、堰を切ったかのようにマネを始め、まるでカオスのようになってしまう」
という現象を引き起こすということなのではないだろうか?
というようなことも言われるようだ、
過去の歴史においても、戦前などの、カオスな時代には、暗殺などが、頻繁にあったり、大量虐殺などという極悪なことが、ニュースになるような大きなことではなく、歴史の中に埋もれてしまったようなことが、頻繁に起きていただろう。
たとえば、
「南京事件」
での虐殺を、日本人が行ったと言われてきたが、あれだって、どこまでが本当か分からない。
何といっても、当時の南京の人口よりも、被害者の数が圧倒的に多いという矛盾しているような数字を、平気で挙げてくるくらいなので、本当の信憑性などあったものでもない。
しかも、最終的に戦争は、日本が負けたということで、
「シナ事変で悪いのは日本側だ」
というレッテルを貼られてしまっていた。
しかし、本来、原因となった、
「盧溝橋事件」
というのは、数日後に和平協定が結ばれ、一旦は終結したのだ。
「シナ事変がいつからか?」
と聞かれた時は、その後に起こった、
「通州事件」
あるいは、
「廊坊事件」
「公安門事件」
などと言われるものが、その発端となるはずだ。
そもそも、廊坊事件や公安門事件は、中国軍による、日本軍への挑発発砲から発したものであり、通州事件に関しては、中国による、
「日本人、大量虐殺事件」
というものであった。
北京郊外の通州というところに住んでいた日本人が、ほとんど虐殺されてしまったというもので、しかも、その実行犯は、その前日まで、
「日本居留民を守る」
という、そういう組織で、居留民とは、家族同然に暮らしてきた連中が、いきなり裏切り、日本人を虐殺したのだから、許されるものではないだろう。
そんな話を思い起こすと、
「シナ事変は、明らかに中国側が仕掛けてきた戦争だ」
ということになるのだ。
ただ、その後の日本軍が、欧米の租借地のある上海や南京を空爆したり、軍を進駐させたりしたので、見た目は、
「日本軍による侵略」
ということになるだろう。
そもそも、戦争というのは、人によっては、
「先に手を出した方が悪いに決まっている」
という意見もあるだろう、
確かにそうではある。
「喧嘩だって、それまでどういう理由があるかは別にして、最初に手を出した方が悪い」
という考えがあるだろう。
だが、果たしてそれでいいのだろうか?
相手を殴らせるように、口で煽るだけ煽って、相手が我慢できなくなった瞬間に、
「相手からいきなり殴られた」
と言えば、それまでのいきさつを知らない連中からは、
「殴った方が悪い」
と言われるのは当たり前だ。
いくら、
「相手がそう仕向けた」
と言っても、誰も信用しないだろう。その証拠がなければ、後になってから何を言っても、それはいいわけでしかないのだから。
それを思うと、今の時代は、その、
「証拠」
というものが、ハッキリしている場合が多い。
「防犯カメラの映像」
さらには、車の中で撮っている、ドライブレコーダーの場合は、映像だけでなく、音声も入っているので、そこに行き着くまでの過程もハッキリと映っているのだ。
ここまでくると、
「先に手を出した人が、絶対的に悪い」
と言い切れなくなるだろう。
「あんたが、煽らなければ相手が怒り狂うこともない」
ということになる。
とにかく、喧嘩になってしまえば、声を荒げたり、相手を罵ったり、さらには、暴力をふるうという明らかな行為でないと分からなかったことが、それ以外のことでもいわれるようになるというのは、ドライブレコーダーのおかげといってもいいだろう。
今回に投書で指摘されていた、某保育園の某保母と書かれているが、弁護士は、
「その人物を分かっている」
ということで、警察に、その人物を探ってほしいということを、暗にほのめかしている。
警察もそこまで分かっているのであれば、無視することもできない。
今回、弁護士が、警察に対して、強硬な態度を取らなくて、アッサリと行き挙げたのは、警察に信用してほしいという思いがあったからだろう。
それを思うと、警察も、無視もできない。話に聴いた保育所を当たってみる必要がありそうだ。
最近は、ニュースで何かと話題の保育園、