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元ソーリ暗殺未遂

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 そんな取り調べも、今のコンプライアンスに近い形を取っている。これは世間でコンプライアンスと言われ始めた頃よりも早いような気がするが、元々警察の処置から、
「警察で、コンプライアンスのことを言われ出したことで、世間でも広がったのではないか?」
 と思うのだった。
 まずは、セクハラ関係においてのことだが、女性の参考人がいる時は、必ず、女性の係官がついているということ、さらに、留置する場合も、留置場まで、確か女性が一緒についていくのではないだろうか?
 要するに、係官が男性だけでは、セクハラ問題が起こらないとも限らない、確か、取り調べの最中の書記も女性ではなかったか。
 取り調べの最中の言動にも、セクハラがないようにという配慮かも知れない。
 ここまで警察がシビアなのは、逆にどれだけ以前からひどかったのかということを証明しているのかも知れない。
 さらに、パワハラというものもある。暴力や、それに類したものにより、相手に脅迫観念を与えて、自白させるというものだ。
 だから、取り調べ中の部屋の扉は、基本的に開けっぱなしになっている。怒号が起こらないようにする。あるいは、暴力が行われないということになるのだろう。
 取調室では、確か、だいぶ前から禁煙だったように思う。それは、
「根性焼き」
 のようなことがないようにするためだと思うのは、自分だけだろうか?
 要するに、ハラスメント違反に関しては警察も結構厳しかった。
 昔のテレビドラマなどや、よくパロディなどで取調室で行われていることとして、
「かつ丼食うか?」
 というのがあっただろう。
「取り調べというと、かつ丼」
 というのが代名詞だっただろう。
 しかし、それも今はなくなっている。これも、
「泣き落し」
 だったり、空腹を狙っての自白強要に繋がるということなのか、正直、いろいろ言われているがどれが本当なのか、警察当局でなければ、真相というものは、よく分からないことであろう。
 そんな警察の取り調べの中で、自首してきたこの男は、相変わらずの黙秘を続けている。とにかく、
「弁護士が来るまでは、何もしゃべらない」
 ということを徹底しているのか、とりあえずは、にらめっこが続いているようだった。
 しかし、時間が経てば経つほど、
「本当にこんな男が、あんな暗殺などという物騒なことを引き起こしたのだろうか?」
 と感じてくる。
 黙秘を続けているというのは、それだけ、警察が怖いと思っているのか、次第に肩身が狭そうで、時間を持て余しているという感じであった。
「本当は喋れば楽になれるのに」
 と思っているとしても、不思議がないほどで、見ていると、額にうっすらと汗が滲んでいるようだ、
「話したくてうずうずしているんだろうか?」
 とも思ったが、ここで警察が焦って、相手に喋らせるようなことを強要はできないだろう。
 何といっても、相手は自首してきたのである。言いたいことがあって自首してきたのか、防犯カメラの映像が手配の材料にされたことで、
「逃げられない」
 と踏んだのか。
 それを考えると、
「ここで焦って自白の強要に走ると、まるで相手の術中にはまってしまうような気がするので、一緒ににらめっこするしかないんだろうな」
 と思いしかなかったのだ。
 そんな状態の、
「にらめっこ」
 が続いている時、並行して、この男の身元が調査されたが、自首してきたこと以外で、今回の事件に結びつくような事情は、出てくるわけではなかった。
 家族とは、離れて住んでいて、兄弟も、3つ年上の兄貴がいたというのだが、どうやら、自殺をしたという。
「その原因が今回の事件に何か関係あるのでは?」
 と思い、調べてみると、どうやら、失恋での自殺だったという。
 そもそも、兄貴はm精神疾患に悩まされていて、鬱病を患っていたという、その状態からの、
「衝動的な自殺だったのでは?」
 とも言われたが、遺書もあったことから、衝動的というよりも、徐々に死にたいといいう思いが募っていき、覚悟が決まってからは、後は、自殺にまっしぐらだったという。
 自首してきた弟も、少し精神疾患の気があるようで、兄貴と同じような鬱病だという。
 ただ、自殺を試みるほどの出来事が今までになかっただけで、逆にいうと、人を好きになったり、人と絡んで何かをしたりということが、今までになかったのだ。
 そんな男だということが分かると、さすがに、取り調べで相手を追い込むなどということは決してできないことは明白だった。
 当然、相手の弁護士もそのあたりをついてくるだろうし、こうなると、相手の弁護士との闘いになることは明らかだった。
 その日の夕方頃になって、担当弁護士ということで、黒川という男が、K警察にやってきた。
 彼は、どうやら、容疑者の父親から雇われたということだった。父親は、会社を経営していて、本来であれば、息子が自首したということだけで、会社経営が危機にあることを分かっているということで、顧問弁護士でもある黒川氏がやってきたということであった。
 ただ、黒川弁護士がやってきた時、一枚の手紙を持参していた。最初に黒川弁護士がやってきた時、最初に、
「釈放願いたい」
 ということを言ってきたのだ。
 彼も弁護士なので、容疑者が自分から自首してきたのだから、そう簡単に釈放など警察にできるわけはないということは分かっているはずだ。それだけに、強硬に言っているわけではない。
 そこで、弁護士が取りだしたのが、持参してきた手紙だった。
「これは、私どものところに舞い込んだものなのですが、警察にも、情報共有ということでお渡しします」
 といって見せてくれた。
 警察との情報共有などというのは、普通はおかしいのだが、さすがに、刑事もビックリしていた。
「投書ということですか?」
 と聞かれた黒川弁護士は、
「まぁ、そういうことですね」
 とこたえた。
 そこに書かれているのは、
「元首相の山根氏を襲撃したのは、津山氏ではない。某保育園の、某保母さんだ」
 ということが書かれていた。
 いまさら、
「保育士と描かずに、保母さんという表現をしているのは、投書を送りつけた人間の性格なんでしょうね」
 ということであったが、まさにその通りではないかと思うのだった。
 さすがに警察も、この投書だけで、自首してきた人間を、
「はい。そうですか」
 といって帰すわけにもいかない。
 とりあえずは、弁護士の権利として、取り調べを受けている、容疑者との接見を、決まった範囲で許すしかなく、どんなことを話すのかは、警察が聞くわけにはいかない。
 せめて、
「投書があった」
 ということと、これからのことに関しての方針くらいは話しただろう、
 弁護士は、やるだけのことはやってその日は帰っていったが、その無表情な性格から、何を考えているのか分からなかった。
 警察側も、弁護士に対しては、
「いよいよ始まったか」
 という程度で、特別な感情を持ったわけではなかった、それだけ、黒川というのが、
「普通の弁護士」
 だということで、必要以上に意識する必要がないと感じたのだった。
 その日の夜は相当冷えてきていて、
「まさか雪が降ったりはしないだろうな?」
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次