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元ソーリ暗殺未遂

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「奥さんの考えていることを素直に考えると、あの息子が、黙秘をしているのは、ウソを、本当のことで隠すことができないからではないか?」
 ということを暗示しているように思う。
 日本の場合は、
「黙秘権」
 というものが認められているので、
「何も言わないのは、ウソをついているわけではない」
 ということだ。
 下手に喋って、それを証拠と取られてしまっては、理不尽だからである。
「あなたには、黙秘権というものが認められています。ここで喋って自分の不利になると思ったことはしゃべらなくてもいいです。しかし、ここで喋ったことは、基本的に事実として証拠になり、誓約を読み上げた上で、虚偽のことを話したりすると、偽証罪に罰せられるので気を付けてください」
 と裁判官は必ず最初にいうではないか。
 さらに、
「偽証罪の件」
 については、証人に対しても同じことを言われる。
 だから、法廷に引っ張り出されて、証言をする証人というのは、出てきた以上、ウソはいえないという大きな十字架を背負っていることになるのだ。
 もし、それが、被告の不利になることであっても、いわなければいけない。
 下手をすると、罪が有罪として確定し、懲役刑を食らい、その刑期を終えて、娑婆に戻ってきた時、
「その時の証言がなければ、有罪にはならなかった」
 ということで、被告がもし、証人を恨んでいて、その逆恨みから、復讐を受けるかも知れない。
 そうなれば、完全に逆恨みでしかないのだが、犯罪を犯す人間に、そんな理屈が通用するわけはない。
 何年も経ってから復讐されるというのは、実に理不尽だ。
 しかも、
「ウソをつくと、偽証罪であなたも罰せられる」
 などといわれると、正直にいうしかないではないか。
 それを思うと、証人というのも、遊びでできるものではない。下手をすれば、
「命がけ」
 といってもいいだろう。
 逆に、証人として出て行った人間が、被告を嵌めるために、虚偽の報告をすることもある。
 ただ、圧倒的に多いのは、被告側が、弁護士の裁量で、
「ウソを尽かせる」
 ということである。
 弁護士の優先順位は、あくまでも、
「被告人の名誉と財産を守ること」
 である。
 そのためには、ウソというのは、
「被告人を守る」
 ということよりも、さらに優先順位は低いのである。
 そうなると、
「証人にウソを尽かせる」
 ということも、平気でやる弁護士もいるだろう。
 とはいえ、最初からその手を使うような安直なことをしてしまうと、次第に首が回らなくなってくるというものであって、あくまでも、
「最後の手段」
 なのである。
 さすがに検察官は、
「証人にウソを尽かせるということはしない」
 検察官、あるいは警察の本来の目的は、
「真実が何かを究明すること」
 なのである。
 そこから先は、弁護士、さらには裁判官を相手にして、罪状をきめるために、被告側、原告側それぞれの意見や、証人を始めとする、証拠を元に、裁判官が、その罪をきめるのだ。
 それなのに、肩や被告側と、原告側で、後ろについている人の目的がここまで違って、
「果たして、真実を見つけることができるのだろうか?」
 と、思う人も少なくないだろう。
 弁護士も、やっていて、
「こいつ、絶対にやってるな」
 ということが分かっても、被告に対しては、
「大丈夫、私が無罪に持ち込んであげますよ」
 といって安心させ、そのために、ウソを真実の中に隠すなどのテクニックを用いて、無罪に持ち込もうとしたり、執行猶予を勝ちとるなどという、最終的な目的を定めて、動くことになるのだった。
 つまり、弁護士と被告は、
「二人三脚」
 ということになる。
 しかし検察官は、あくまでも、真実を知ることが大切なのであり、原告が勝利するために動くわけではない。
 しかし、警察の捜査網で出来上がった証拠であったり自白などを使って、被告を追い詰め、
「真実を明らかにしていく」
 というのが、一番の目的なのだ。
 それぞれに、目的が違うということで、裁判官も大変だとは思う。お互いの立場の違いを考えに入れて、審査しないといけないからだ」
 そういえば、以前、裁判の中で、弁護士が急に、被告の言っていることを、否定し始めるというおかしな状況になり、検察官も、膨張している刑事も、戸惑っていたことがあった。
 ただ、それは刑事ドラマのフィクションであったので、普通であれば、こういうことはないのだが、ドラマの構成上、最初から見ていれば、犯人が誰かということは最初から分かっていたのだ。
 このドラマの構成は、
「最初に犯罪を見せておいて、つまりは犯人が誰かということを分からせたうえで、主人公の刑事が、途中で犯人が誰かということに気づき、徐々に追い詰めていく」
 というドラマ形態だった。
 しかも、この回の話は、ドジな刑事が、弁護士の罠にはまり、自分の犯罪をあたかも、被告の刑事のせいにして、自分が助かろうと画策して、自分でシナリオを書いて、自分で演じて見せていたのだ。
 しかし、ドラマとしては、優秀な刑事がそれを見抜き、今度は自分でシナリオを書いて、相手の上前を撥ねようという考えだったのだ。
 だから、弁護士も、自分で描いたシナリオ通りに進めていくつもりが、
「優秀な刑事の登場」
 によって、せっかくのシナリオが崩れていく。
 しかも、それ以外のシナリオを、しかも、自分が追い詰められるシナリオを用意しているわけもなく、却って頭の中が、
「カオス」
 となってしまうことで、どうすることもできなくなった。
 完全に、
「優秀な刑事の手の平で転がされている」
 ということであった。
 もちろん、弁護士は、もう途中からタジタジである。
 最初は、必死になって、被告を無罪に持ち込もうとしていたのを、途中から、執行猶予に持ち込もうとするという、最初からのシナリオだったが、本当は追い詰めるはずの刑事が、擁護し始めたのだ。
 だが、これも、計算ずくだった。
 どんなに刑事が擁護しようとも、その行動に信憑性を持たせないようにしてきたわけなので、
「すべてが言い訳にしかならない」
 という方法であった。
「私は、口八丁手八丁の弁護士だ」
 ということが、頭の中にあって、それが強い気持ちになるからなのか、この弁護士は、
「証拠というものをあまり重視していなかった」
 というところがあったのだ。
 優秀な刑事は、そのことを看破し、弁護士を追い詰めていく。
 そして、肝心な証拠に弁護士が触れてくれないことに対して、
「この弁護士さんは優秀であるにも関わらず、こんな重要な証拠に触れてはくださいませんでした」
 といって、裁判官に対して、弁護士に対しての皮肉をいうのだった。
 さすがに、弁護士もここまでくるとタジタジさが、表に出まくっていて、裁判官も、
「おかしいな」
 と思っていたことだろう。
 当然普段の冷静沈着な弁護士が、今日に限ってこんない取り乱すなんて、想像もしていなかったということであろう。
 そもそも、この刑事がこの弁護士を怪しいと見たのは、
「被告とは、友達だということであったが、別にこちらから依頼したわけでもないのに、自分から、弁護を引き受ける」
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次