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元ソーリ暗殺未遂

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 ということは許されない。
 最終的な目的としては、
「再発防止」
 というのが、世間からの要望であろう。
 警察としては、
「犯人を逮捕して、送検し、起訴されることで、裁判の場に送る」
 というのが仕事なので、
「検挙率を上げる」
 というのが、一番の目標ということになる。
 今のところ、容疑者は、自首をしてきて、自分のことを最低限の表現で答えただけで、後のことはまったくの黙秘をしている。
「弁護士が来るまで、一切話さない気だな?」
 ということは分かったが、どうにも対面していて、この男の様子が分からない。
 今のところ、
「弁護士が来る」
 という様子もなさそうだ。
 しかも、彼の身元を、話から裏を取るのには、それほどの時間はかからなかった。家族に話を聴きにいくが、
「えっ、うちの息子が、この間の元ソーリ襲撃事件の犯人だって自首したとおっしゃるんですか?」
 と、母親は、完全に、
「寝耳に水」
 という感じであった。
 父親は、何も言わずに実に冷静だが、それを見ていると、
「うちの息子ならやりかねない」
 と考えていると、思えてならないのだった。
 母親がいうには、
「確かにうちの息子は、あの元ソーリが大嫌いだとは言っていましたけど、まさか、襲撃するなんて、想像もつかないです」
 というではないか。
「息子さんが、元ソーリをどうして嫌っていたのかということをご存じですか?」
 と聞かれた奥さんは、
「いろいろだと思います。そもそも、あの元ソーリには、疑惑が多すぎるし、この間の伝染病の時でも、的外れなことばかりして、結果、すべてが、後手に回ったわけでしょう? そうそう。一番嫌っていたのは、自分の保身のために、法律を変えようとしたあの時など、怒りをあらわにしていたのを覚えています」
 と言っていた。
「それは、あの検察庁の問題の?」
 と桜井刑事が聴くと、
「ええ、そうです。あの問題では、SNSなどで、芸能人などが、相当攻撃していて、炎上していたでしょう? それが、息子的には、ツボだったと思うんですよね」
 と奥さんは言った。
「ああ、あの時ですね」
 というと、
「ええ、最後には、賭けマージャンを自分でやってマスゴミに誰かからリークされたというあの茶番ですよ」
 と、この件に関しては、さすがに奥さんも露骨に嫌な顔をして、まるで汚いものを触るかのように話しているのが、印象的だった。
 それを思うと、
「ああ、似た者親子なのかも知れないな」
 と感じた。
 それを見ていると、
「お父さんが、口出しをしないのは、奥さんと息子が実によく似ていて、自分では太刀打ちできないと思っているからではないだろうか?」
 と、感じたのだった。
「では、息子さんの性格としては、どうなんでしょう? 先ほどの奥さんの態度からは、まさか、こんなことをするような子供には見えないという感じでしたから、大それたことなどできないということですかね? 要するに、小心者だからできないということなのか、それとも、バカなことはしない冷静沈着な性格だということでしょうか?」
 と聞かれた奥さんは、少し考えてから、
「まあ、親としては、息子に対して、どうしても贔屓目に見てしまうし、不利なことは言いたくないとも思うので、たぶん、参考にはならないかも知れませんが、私とすれば、後者だと思います。冷静沈着というか、あまり喜怒哀楽を表に出さないというかですね」
 というので、
「そうですか、ただ。性格を内に籠める人間ほど、怖い人はいないとも言われますからね。そういう意味では、怖いといえるのではないでしょうか?」
 と桜井は、敢えて、厳しめの言い方をした。
 それは、この奥さんが、結構冷静に聞いているのが分かったからで、どこか自虐的にも聞こえるのは、
「演技のようなもの」
 ではないかと思ったからだった。
 だが、奥さんの様子と、取調室の容疑者の様子を、見比べてみると、
「同じ冷静さでも、どこかが違う」
 と感じるのだ。
 そう思ったのと、ほぼ同時に感じたのが、
「本当に親子なのだろうか?」
 ということであった。
 二人が親子だということを考えると、
「親子の定義というものが、どこかで崩れる」
 かのように思えてならなかったのだ。
 ただ、一つの共通点として、
「たぶん、この二人の目の付け所は同じではないだろうか?」
 ということを感じた。
 先ほどの、検察官の問題しかりで、ただ話を聴いていると、あくまでも漠然としてであるが、
「同じものに目はつけているが、その中のことになると、見ている場所が、若干違っていると思う」
 ということであった。
 別の言い方をすると、
「同じ人を好きにはなったが、好きになったところが違う」
 ということで、
「もし、それぞれ好きになった相手のことの話をすると、どこか噛み合わないのではないか?」
 と感じるのだった。
 もし、これが親子であれば、話が通じないようになると、どちらかが焦れてくるのではないかと思った。
「どっちがどっち」
 とは言いにくいが、母親の方が、若干、奥深くを見ているのではないかと思った。
 もちろん、それぞれ、男と女なので、あくまでも、最初から次元は違っているのだろうが、
「相手の本質を見る」
 という点で、若干の違いがあるのではないかと思うのだった。
 そんなことを考えてみると、やはり、
「母親の方が年の功」
 と言えばいいのか、それとも、
「経験豊富」
 ということなのだろうか。
 ただ基本的に親子だから、似ているところがあるのは当たり前で、逆に、
「親子だから」
 という目で見ることで、その違いを無意識に探そうとしている自分がいることに気づくのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「あまり、親子を意識しない方が、二人を、いや、容疑者を見ることができるのではないか」
 と、桜井刑事は感じた。
「お母さんは、息子さんが襲撃した元ソーリのことをどう思われます」
 と敢えて聴いてみた。
「私は、そうですね。少なくとも好きではないです。とにかくやることが中途半端にしか見えないからですね。でも、これはおかしなことなんですが、今のソーリを見ていると、まだ、元ソーリの方がマシだったのではないかと思うんですよ。政治家なので、二人ともウソをつくというのは分かるんですが、今のソーリは、とにかくウソをつくという感じで、元ソーリの場合は、本当の中にウソを隠して、ごまかそうとするというのが見え隠れするんですよね。人間としてはどうなの? と思うんですが、政治家としては、元ソーリの方がマシなのかも知れないと思うんです。実に不思議な感覚ですけどね」
 という。
 それを聴いて、
「やはりこの奥さんは、冷静なところをついてみているんだ。果たして、あの息子にそこまで見ることができるだろうか?」
 と思えた。
 ただ、この奥さんの言っていることは、ある意味、警察が自分の息子に事情聴取している見方を暗示させるということを分かって答えているのだろうか? もしそうだということであれば、
「この奥さん、おそるべし」
 というところであろうか。
 桜井はそのことを考えながら、
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次