小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

元ソーリ暗殺未遂

INDEX|11ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

 普通のSNSではできないのだろうが、しょせんは、ネットであげるのは、ハンドルネームを使ってのことであるし、ネットカフェなどで、会員登録のいらないところからの投稿であれば、別に投稿者が特定されることもない。
 もし、これが、名誉棄損や侮辱罪などにあたるのであれば、開示請求なども考えられるが、それ以上にこの動画の持つ意味は大きかったのだ。
 しかも、この市長が記者から、
「囲み取材」
 を受けている時のこの市長の対応というか言い訳があまりにも情けなさ過ぎて、お話にならなかったのだ。
 記者から、
「この行為をどう思いますか?」
 といわれた時、
「私は普段はあんなことはしない」
 といって、おもむろに所持品の中から、手のひら大の何かを出して、
「いつも、私はこれを使っている」
 と、カメラの前に差し出し、いかにも、鬼の首を取ったかのような顔をしていた。
 市長が取りだしたそのものというのは、
「携帯灰皿」
 であった。
「私は普段から、これを使っているんだ」
 とばかりに、言い訳にならない言い訳をした、
 テレビを見ている人のほとんどが、
「だったら、それを使えばいいじゃないか。使ってないから、動画を取られたんだろうに」
 と思っていることだろう。
 実際にこの動画が、編集されたものではないことは分かっているので、間違いのない事実なのは姪悪だった。
 しかも、まったく同じ行動を同じ日に撮影もされていたのだ。本来であれば、言い訳にもならないことに違いない。
 その動画も見せられ、本人は、それほど驚いている様子はない。それなのに、記者から、
「この時のことを釈明できるものならしてください」
 というようなことを言われた市長は、
「釈明と言われても、正直私は憶えていないんですよね」
 と、いわゆる、
「政治家の常套手段」
 である、
「記憶にございません」
 という言葉をいうのだ。
「記憶にございませんなどというと、許されるとでも思っているのか、今までの政治家がそれを言ったがために、どんな目に遭ってきたのかということを失念しているのか、それとも、もうそういうしかない状態に追い込まれているのか、本人は一向に気にしていない様子だった」
 それを思うと、
「この男、もう終わりだな」
 としか思えなかった。
 そのあと、記者から、
「これを機に、タバコを止めるおつもりはないんですか?」
 と聞かれても、
「市長を辞任されるつもりはないんですか?」
 と聞かれても、答えは一つで、
「ありません」
 しかなかったのだ。
 確かに、市長を辞任ともなると、
「私を信じて投票してくれた人がいるので、勝手に辞任はできない」
 ということなのだろうが、それも、
「この動画が明らかな事実」
 だということになれば、
「そんなやつだとは思わなかったから、投票したのに」
 と皆思っていることだろう。
 しかも、ここの県では、条例の中に、
「ポイ捨て禁止」
 というものが、明記されているのだ。
 つまり、それが決まったことで、率先して守るということは当たり前で、その啓発を自らでしなければいけない立場が率先して破っているということである。
 しかも、市長という立場は、当然、公平なる選挙で選ばれた市長として君臨しているのだ。
 皆、
「まさかそんなやつだとは思わなかった」
 ということで、有権者を騙していたといってもいいだろう。
 これは、食品を販売するうえで、産地偽装や、賞味期限の改ざんなどと比べ物にならないくらいの罪の大きさである。
 まず何と言っても、公務員である以上、
「その給料は、我々の血税から払われている」
 ということである、
「税金泥棒」
 といわれても仕方がない。
 少なくとも、
「条例違反」
 を犯したということに変わりはないからだ。

                 証言と裁判

 煽り運転も、この詐欺のような市長がいまだに君臨している男も、基本的には、
「小心者」
 といえば聞こえはいいが、しょせんは、
「へたれ」
 でしかないということだ。
 今回自首してきた津山という男、本当に彼がやったのか?
 もしそうだとすると、単独犯なのか? バックにどんな人物が絡んでいるというのか、この男が、警察で何を話すかということが重要だった。
 もちろん、マスゴミには、
「山根元首相襲撃犯と思われる男が、K警察署に自首してきて、現在、取り調べが行われている」
 ということは発表されたが、その内容に関しては、自首してきている以上。
「やったのは自分だ」
 ということを認めているのは分かり切っていることであるが、
「それ以外のことは、何も分かっていない」
 ということなのであろう。
 警察からの発表は、そのあたりのことには触れていないのだった。
 ただ、捜査が進められていくうえで、時々、捜査本部からの記者会見は行われるであろう。
 段階を追っての捜査になることは分かっているが、問題はデリケートな部分を孕んでいるはずなので、難しいところもあるに違いない。
 どちらにしても、今のところ、容疑者は、黙秘をしているようなので、そこから新たな進展は、なかなか望めないだろうと捜査本部は見ていた。
 ただ、ここで黙秘をしているということは、
「彼のバックに誰かいるということの方が可能性としては高いのではないか?」
 と思うのだった。
「自首してくる人間が、覚悟を決めたはずなのであれば、もっとすぐに自分の行動を明らかにするはずである」
 と思えた。
 彼のように、
「まったく黙して語らず」
 という場合、逆に、
「自首してきてから、堰を切ったかのように、まくしたてるように話す場合は、
「後ろの誰かがいる」
 と考える方が多いかも知れない。
 というのも、
「自分がやったことならゆっくり話せばいいのに、誰かに入れ知恵されて、それを話しているのであれば、忘れないうちに話しきる」
 という
「使命」
 を帯びて、自首させられてきたということなのだろう。
 そんな風に考えると、
「この男は、どこまで自分のやったことを話すかというのを見極める必要がある」
 と桜井刑事は考えた。
 きっと、すべてがウソということはないだろう。
 本当のことでも、ウソの中に混ぜてしまうと、案外と分からないもので、却って、ウソの中にあると、本当のことも、
「ウソなのだ」
 と警察に思い込ませて、欺くことができると思っているのかも知れない。
 さらに、バックに誰かいるということになれば、弁護士も、キレる人をつぎ込んでくるかも知れない。
 ただ、そうなると、バックに誰かがいるというのは、将来的にバレてもしょうがない。今の時点では、必死に隠す必要があるのだろうからである。
 ただ、今の時点では、容疑者が自首してきているのだから、最重要容疑者であることのは間違いない。事情聴取を行い、その裏付けによって、どのように襲われたのかということを明らかにすることが大きかった。
 もちろん、それと平行し、動機という問題が一番大きなものである。
 何と言っても、
「元首相が暗殺未遂にあった」
 というだけで、大いなるセンセーショナルを巻き起こしたのだから、
「動機がハッキリしません」
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次