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元ソーリ暗殺未遂

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 会社自体を捜査してみると、どうやら、ブラック企業であるということに違いないようで、そもそも、この業界は、大なり小なり、ブラックなところの多い会社ばかりだという印象もあったので、それを聴いても、
「いまさら驚きもしないわ」
 ということであった。
 桜井刑事の知り合いにも、システム会社に勤めていた人がいて、彼も、
「体調を崩した」
 ということでの退社だったが、実際に身体を壊したのも事実であったが、そもそも、精神が病んでいたのだ。
「精神的なきつさに、身体がついてこれなくなった」
 ということが、真相だったのだ。
 仕事が忙しいというのも事実なのだろうが、それよりも、
「下請け、孫請けの辛さ」
 ということが大きいだろう。
 面倒臭い仕事はどんどん下に回ってくる。しかも、納期は、かなりシビアなもので、最初から、
「残業ありき」
 で計算しても、予定はギリギリ。そうなると、少しでも余裕を持たせようとすると、
「寝る間も惜しんで仕事」
 ということになる。
 いくら若いとはいえ、そんな状態が数か月も続けば、精神が病むのは当たり前のことだった。
 ソフト会社というと、昔などは、
「他の会社にバレてはいけない」
 ということで、開発中は、
「社員は缶詰め状態だった」
 というのを聴いたことがあったが、今はどうなのだろう?
 寝る魔も惜しんでの仕事ということになると、本当に気が狂ってしまっても、しょうがかいと言えるだろう。
「よく2年ももったものだと思います」
 と、津山はボソッと呟いたが、最初は、津山が何をいったのか、桜井は意味が分からなかった。
 それくらいに、唐突で、小さな声だったのだ。
 それでも、表情一つ変えずに視線はあらぬ方向を向いているのだから、そこまで見ていると、
「一番つらかったことなのだろう」
 と考えると、おのずと、会社に勤めていた2年間ということが分かったのだ。
「そんなに仕事がきつかったんですか?」
 と聞いてみると、
「仕事のきつさもありましたが、あいつらは、人間を人間とは思っていないんですよ。こっちが、少しでも時間を作って、その間に精神的なものを取り戻そうと思ってもそうはさせてくれない。完全に従業員は、上司のおもちゃ状態ですよ。虐待のようなこともあったし、何よりも性的虐待がひどかったんです」
 というではないか?」
「性的虐待?」
 と訊ねると、
「ええ」
 といって、彼は涙を流しながら話をしていた。
 その涙というのも、自然と出てきたもので、本人は自分が涙を流しているという意識すらなかったのかも知れない。
 その内容は、言語道断なないようで、とても、書き表すことのできないもので、
「羞恥」
 などという言葉ひとことで片付けられるものではないのだった。
「そんなひどい目に遭っていたのか」
 と思うと、
「誰かを殺したくなったとしても、無理もない」
 とも感じた。
 しかし、それが、なぜ上司ではなく、元ソーリの、しかも、遊説先のSP監視の元だったのか、殺すことはできなかったとはいえ、少なくとも襲撃は成功し、その場から逃げおおせることはできたのだ。
 それを考えると、桜井刑事は、
「本当に彼だけの犯行なのだろうか?」
 と思うのだった。
 そもそも、あれだけのことをしでかして、しかも、その場から逃げたのだから、警察としても、
「素人の犯行ではないのでは?」
 と思っていた。
 そのわりには、防犯カメラにしっかりと映っていた。
 もっとも、今の時代に防犯カメラにちゃんと映らないというのは、それこそおかしなもので、特に最近は、どこの誰もが、防犯カメラに近いものを持っている時代であったのだ。
 特に車の中であれば、
「ドライブレコーダー」
 というものをつけている人は多い。
 いわゆる、
「あおり運転」
 なるものが、社会問題として増えてきたからだ。
 道路で、例えば、前の車がブレーキをいきなり踏んだので、反動でこちらもブレーキを踏むと、後続車におかしなやつがいたりすると、急にキレて、猛スピードで自分の前に走りこんできたかと思うと、急ブレーキを何度も踏んで煽ってみたり、逆に、後ろから、やたらとクラクションを鳴らし、車間距離を詰めてきたりするやつがいる。
 こちらが、家族と一緒だったり、彼女を乗せてのドライバなど、楽しそうな人を見るだけで、ムカッとくる人なのかも知れない。
 もちろん、チンピラのようなやつもいれば、普通のサラリーマンもいる。
 今の時代は、
「チンピラであろうと、普通のサラリーマンであろうと、キレる時は、キレるのだ」
 ということであろう。
 そもそも、あおり運転というのは、今に始まったことではない。昔からあったことのはずなのだが、最近の方が、その内容はひどいものであった。
 特に怒り狂ったあげく、こちらの車をせき止めるようにして、車を止め、中から出てきて、こちらの寄ってきて、罵声を浴びせながら、車のガラスをバンバンと叩いたりするやつもいる。
「こいつ、完全に狂ってる」
 と思うと、どうすることもできず、恐ろしさで車の中で震えている人も多いだろう。
 しかし、初戦はチンピラにしても、普通のサラリーマンにしても、本質は、
「へたれ」
 でしかないのだ。
 少しでも冷静になると、
「ヤバイ」
 と思うのか、そのまま車に戻って、逃げるように走り去るのだった、
 こんな映像を、情報番組といわれる放送において、特集と組みながら流している番組も少なくない。
「いやぁ、本当にすごいですね」
 と、何がすごいのか、自分の態度で察しろとでもいうのか、コメンテイターと呼ばれる人たちがそういって、呆れる態度を見せていた。
 確かに、そんな状態において、
「襲撃された運転手はどうすることもできないんだな」
 ということであり、この番組を見ていて、たぶん、一定数の人は、いくつか感じるものがあったのだろう。
「人間というのは、キレるとあんな風になるんだ」
 ということを考え、目を加害者側に移してみると、
「俺だって、絶対にキレないなんて言いきれないからな。もし、キレたらあんな風になるのかな?」
 と思うだろう。
 さらに、
「キレる人とキレない人の違いは、沸点が違うからだろうか?」
 と感じるのだが、要するに、
「キレてしまうと、きっと何も分からなくなるだろうから、それを自分でも分かっているんだろうな。だけど、本当に、後で言い訳のように、覚えていないということを言っているのを見たことがあるが、覚えていないというのは本当なのだろうか?」
 と思うのだった。
 そういえば、この間別のニュースで、
「ある市長の、タバコのポイ捨て」
 という報道があった。
 どうやら、誰かが撮影していて、その動画が、SNSで拡散されたことで、事実が発覚したということだった。
 普通なら、個人情報保護の観点からまずいのでは?
 と思われるのだろうが、実際には、個人情報に関しては、細心の注意を払っていた。
 それでも、その人物が市長だとバレるくらいの加工しかしていないのだった。
 そういう意味で、削除対象になる前に報道されたので、ネットで挙げた人物は、匿名だったので、どこの誰かは分からなかった。
作品名:元ソーリ暗殺未遂 作家名:森本晃次