小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

パンデミックの正体

INDEX|7ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

「妖怪というのは、しょせんは人間が考え出したもので、人間が都合よく創造したものであって、本当に怖いのは人間なんだ」
 と思うようになって、話としての、幽霊や妖怪は怖いとは思わなかった。
 それよりも、人間の中に潜んでいる、潜在的な意識が、ある時、悪魔や妖怪となって表に出てくるのだと思うようになると、
「妖怪なんて、怖くない」
 と思うようになった。
「妖怪なら、まだ幽霊の方が怖い」
 と感じた。
 それは、やはり、
「一番怖いのは人間」
 という意識が芽生えたのであって、
「幽霊というものは、人間が化けたもの、妖怪は、人間以外が化けたもの」
 と言われることから、
「怖い人間が絡んでいるんだ」
 ということから、幽霊の方が恐ろしくなってきたのだった。
 そんな怖い話を聴いていた時、ある日、
「これ、本当におとぎ話なの?」
 と聞きたくなるような話があった。
 実際に聴いてみると、おばあちゃんは、いつもの顔と違い、
「ううん、違うんだけどね。美亜ちゃんが、大人になるにつれて、時々思い出す話だと思うのよ。本当を言えば、忘れてほしくないお話なんだけど、まだ小さい美亜ちゃんにそれをいうのは、可愛そうなんだけどね」
 と言われた。
 美亜は、どちらかというと、負けん気が強く、そういう風に言われると、却ってムキになる方だった。
「どういうことなんだろう?」
 と、首をかしげておばあちゃんを見つめると、
「ああ、ごめんごめん」
 といって、話を辞めるのかと思いきや、そんなことはなく、おもむろに話始めた。
「あれはね、おとぎ話ほど昔ではないんだけど、明治という時代なのね。お侍さんとか、そういう人がいなくなってから、日本に外人が入ってきた頃のお話なの。外国からは、近代的なものも入ってきて、お医者さんの技術とかも発展して行ったんだけどね。そんな時代に、外国の教えもいっぱい入ってきたのよね」
 というではないか。
 子供にでも分かるような話し方をしてくれているというのは分かったが、それでも、やはり難しい。半分分かっていればいい方だっただろう。
 おばあちゃんは続けた。
「その頃にね、やっと手術などもできるようになって、麻酔の技術も入ってきたのと一緒に、毒薬というのもいっぱい入ってきたのよ。日本にも、昔から毒薬というのはあったはずなのよ。戦国時代から江戸時代にかけても、毒殺というのがあったからね。きっと、自然に生えている草花の中に毒草があって、どれが毒草なのかということも、分かってくるようになってきたんでしょうね。ただ、記録としての学問書は残ってはいないけど、歴史書などでは、毒殺されたというようなことは書かれているので、毒薬を作る技術はあったんでしょうね」
 と言った。
「その毒薬がどうしたの?」
 と聞くと、
「ああ、その当時、明治という時代のちょうど中頃だったのかしらね。ちょうど、海外から、伝染病が入り込んで、それが流行りだしたの。海外の方では特効薬のようなものはあったんでしょうけど、日本には、その特効薬がなかったのね。でも、その特効薬を作るための原料が日本には、普通に生えていたのよ。それを発見した外人の学者が、日本人には教えずに、自分たちだけで独占しようと、自国に大量に持ち出したらしいの。でも途中で、他の国からその船は襲われて、日本からの輸出ものは強奪されたの。でも、その中に見覚えのない草が混じっているじゃない。これは何かと船の乗組員に聞くと、これが毒薬を作る元になるものだと答えたの。その時の襲った船の母国も、同じ伝染病で苦しんでいて、自分のところだけが助かろうとするその国と対立したんだよね。でも、そのことが国際問題になって、国際裁判に掛けられたの。でも、日本はそんなことを知らないので、毒薬を持ち出そうとした国と、それを使って一儲けしようと考えた国との間で、戦争にまで発展したの。そのことは、ヨーロッパの他の国は分かっていたけど、日本は蚊帳の外に置かれていて、何も知らないままに時が過ぎたということなのよね」
 というのだった。
「それから?」
 と再度促すと、
「でも、それを日本人に教えるおせっかい焼きがいて、さすがに日本人は怒ったのだが、日本にはそれに抗うだけの力があるわけではなかったので、どうしようもなかった、でもそのうち、日本人の立場が強くなるにつれて、この問題が、国際連盟で議論された。だけどね。日本は、しょせんは他の地域の貧しい国で、まだまだ発展途上ということもあって、なかなか思うようにはいかなかったんですよね」
 というのだった。
「それから?」
 と聞くので、
「日本人というのは、考え方が極端なところがあるので、人によって温度差が激しかったという。毒薬についても、どこまでがいいのか悪いのか、正直連盟にも、確固たる法律はなく、判例などを用いて、考えていくしかなかったのよね」
 というのであった。
 考えてみれば、明治という時代は、
「不平等条約の時代」
 だった。
 江戸末期、いわゆる幕末と言われる時代に、アメリカ海軍のペリーが来航したことで、江戸幕府は、開国を余儀なくされた。
 そのせいもあって、日本国内は、真っ二つに割れてしまった。
 幕府を弱腰として、特に当時の孝明天皇が、徹底的な攘夷論者であったことも、そのせいであろうが、ただ、考えてみれば、それも当たり前のことである。
 今まで、200年以上、鎖国をしてきて、外人を見るといえば、長崎の出島で、オランダ人を見るか、あるいは、清国や朝鮮からの貿易で、それも決まった場所で見るしかなく、普通の人から見れば、
「海のモノとも山のモノとも分からない」
 という存在だったのだ。
「人肉を食らう」
 というウワサでもあれば、すぐに広まったことだろう、
 そんな連中は、日本にやってきて何をするかと思うと恐ろしくなる。
 しかも、鎖国というのは、
「伝染病が入ってこない」
 という意味でも効果があっただろう。
 もっとも、江戸時代に、コレラが流行った事実はあるので、オランダ人が持ち込んだものかも知れないが、国を開いていれば、もっとひどいことになり、亡国の憂き目に遭っていたかも知れない。
 それを思うと、
「鎖国というのは、それなりの効果があった」
 といってもいいだろう。
 日本はそれまでも、ロシアや諸外国から、
「通商条約を結びたい」
 といってきた国に対し、
「我が国の窓口は長崎だから、長崎に行ってくれ」
 といって、追い払ってきたといってもいいだろう。
 しかし、ペリーの場合は、
「大統領の親書」
 を持ってきたというのだから。断るわけにはいかない。
 もし、断ってしまうと、戦争になるのは必至だっただろう。
 そう、鎌倉時代の元寇のようにである。
 あの時は、何とか、いわゆる、
「神風」
 というものが拭いて追っ払うことができた。
「台風が多い国で、よかった」
 といってもいいだろう。
 だが、今回は、情報として、
「清国から、イギリス、フランスの艦隊が日本を目指している」
 という話題が舞い込んできたのだ。
 それを聴いた幕府首脳は、ビックリして、アメリカの、
「条約を結べば、アメリアが責任をもって、日本を守る」
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次