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パンデミックの正体

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 そういう意味で、テナントが入れ代わり立ち代わりしているところは、しょせん、郊外型といっても、しょせんは、ブームが去れば、売り上げも激減するというもので、皆が皆、車で出かけるわけでもないし、当にブティックのような店では、惣菜を買うように、毎回買っていく人がいるわけでもないだろう。
 バブルの時期に、
「多角経営をして、事業を広げれば広げるほど儲かった」
 ということで、
「大型商業施設」
 しかり、全国でブームのようになった、
「博覧会」
 あるいは、
「テーマパーク」
 などがその象徴だといってもいいだろう。
 しかし、実際にバブルが弾けてしまうと、それらの事業は、
「無用の長物」
 ということになり、一気に経営が立ち行かなくなるというものだ。
 博覧会の期間が終われば、その跡地にマンションを建てたりして、そこを分譲するという計画だった。
 だから、マンションを建てるところまでは行っても、一向に買い手がつかないということは当たり前のことだった。
「バブルが弾けた瞬間に、青写真は、まったく当てにならなくなる」
 というものだった。
 あれだけできたテーマパークも、すぐに閑古鳥が鳴くようになり、最初一番賑やかで、
「ここが潰れるくらいだったら、他のところは、ひとたまりもないだろうな」
 と言われていたところが、一番最初に、潰れてしまうということになったりしたものだった。
 だからと言って、それほど皆驚いていない。
「バブルが弾けたんだから、何が起こっても、少々のことでは驚かない」
 というものであった。
 というのも、バブルが弾ける前までは、
「いろいろな神話」
 というものがあり、その中で一番言われていたのは、
「銀行不敗神話」
 というものであった、
 つまりは、
「銀行というものは、絶対に潰れない」
 という神話があったのだが、バブルが弾けて少しして、一つの銀行が破綻してしまうと、もう後は、堰を切ったかのように、銀行だけではなく、いろいろな店が一気に破綻していった。
 銀行不敗というのは、
「銀行が潰れると、経済が一気に立ち行かなくなるので、連鎖倒産などがひどくなる」
 ということから、政府も、
「銀行を潰さない」
 というような、作戦を練るようになるのだった。
 だが、バブル崩壊というのは、政府がちょっとした政策をうつくらいでは、抑えられるものでもない。
 一行だけの問題であれば、何とかなるのかも知れないが、銀行全部、いや、社会全体が、一気に不況となり、その屋台骨が銀行だったことで、どうしようもなくなったのだ。
 そもそも、銀行というところは、バブルの時代、どんどん融資をしていた。
 要するに、一般の販売業の会社の営業が、
「自分のところの商品を営業して、消費者に買わせる」
 というのと同じ感覚で、企業に対して、
「融資しますから、どんどん事業を拡げてください」
 とばかりに、口八丁手八丁の状態で、お金を融資するのだ。
 そんな状態の時、銀行は、
「過剰融資」
 という方法を取った。
 銀行における。
「儲け」
 というのは、
「利子を貰って、それを利益とする」
 というものであるから、相手が、
「800万円融資してほしい」
 といってくれば、
「じゃあ、1000万をご融資しましょう」
 ということで、余計に貸し付けた分の利息も儲けになるので、借りた方も、
「どうせ、すぐに設けて返せばいいんだ」
 とばかりに、
「融資は多ければ多いほどいい」
 と思い、気にもしないのだった。
 しかし、実際にバブルが弾けると、
「貸し付けたものが、返済されない」
 という事態に陥る。
 バブルの時代であれば、円滑に回っていたものが、油が切れたチェーンのようになり、それを無理して動かそうとすると、どうにもならなくなるのが、経済というものだった。
 それを考えると、その時代まで行っていたことが、
「自転車操業」
 であるということに、やっと気づく。
 つまりは、
「景気のいい時であれば、別に問題ないのだ。お金が、右から左に動いて、そこで生まれた利益をそのまま次に使えばいいわけだが、バブルが弾けると、肝心のお金が、動かなくなる。
 一か所でとまってしまうと、どんどん、いろいろなところで渋滞が起こってしまい、払わなければいけない時になってお金がないというところがどんどん増えてくる。
「不当たり手形が続出し、企業は破綻する」
 ということになる。
「バブル経済とはよく言ったものだ」
 と言われるが、まさにその通りである。
 バブル経済、つまりは泡である。
 実態のないものをお金を右から左に移すことで、利益としてきたのだから、
「見えない利益を追いかけていた」
 ということである。
 だから、どこかで止まってしまって、先に進まなくなると、そこに何もないことが分かるのだ。
「じゃあ、あの利益ってなんだったのだろう?」
 ということであるが、それが、自転車商業のようなもので、
「うまく回転している時はいいのだが、うまくいかなくなると、そこに何もないことが分かり、誰もが利益だと思っていたものが、泡のごとく、消えていくのだった」
 ということである。
 そんなバブルが弾けてからというもの、企業が考えることは、決まってくる。
 まず経営者が考えることとして、
「経営の抜本的な改革」
 である。
 結果行き詰ってしまうと、手は一つしかない。
「どこかの大手企業と合併すること」
 だったのだ。
 何とか銀行が崩壊せずに今も残っているというのは、
「大手同士で合併したり、大きなところが、小さなところを吸収合併することで、大きなところは、小さなところの地盤を引き継ぎ、吸収された側は、何とか、顧客に迷惑を掛けることなく、最小限の苦労で、何とか持ちこたえられるというものだ」
 ということだったのだ。
 だから、今の大手銀行は、元の大手銀行がどんどん合併するので、
「元は5つの都市銀と、地方銀行だった」
 などというのは、当たり前のことだったりするのだ。
 そして、今度は、企業側というよりも、従業員側の生き残りとして考えることは、
「売り上げが激減したのだから、後は、支出を減らすしかない」
 ということになる。
 要するに、経費節減という考え方である。
 必要経費の無駄を省いたり、残業をしないようにしたりするのは、小さなことではあるが、当たり前ということで社員全員が意識すべきことであった。
 バブルの頃には、残業など当たり前。
「企業戦士」
 などと言われ、毎日最終電車で帰るくらいのモーレツ社員が、
「いい社員だ」
 と言われた時代があった。
「二十四時間戦えますか?」
 などという宣伝文句で、スタミナドリンクが売れた時代だったのだ。
 ただ、一番の経費というのは、何と言っても、
「人件費」
 である。
 人件費削減のために、
「リストラ」
 などという、あまり聞きたくない言葉が流行った。
「肩たたき」
 といわれる、早期退職を募ったり、
「各部署で、最低2人のリストラ候補を絞る」
 などということが行われていた時代であった。

                 浦島神話

 その頃までの社会の基本は、
「終身雇用」
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次